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第3話 地球外生命体の襲撃予告

last update publish date: 2026-06-17 17:43:00

 生島がいくらでも奢るというので、カガリは異界防衛軍本部の食堂でたくさん注文をした。

 十八の育ち盛りだ。

 兵長という階級も、そう収入が多いわけではない。

 牛丼、生姜焼き、親子丼と制覇していくカガリを、生島が微笑ましく見届けた。

 お茶の水支部もまだ他の支部と比べれば都会のほうだが、一日で何種類もの肉は揃わない。

 唯一の陸路だけで経済を回すのには、まだ日本は時間がかかる。

「他にも、なにか食べたかったら注文しなさい」

「タネさんに……種田上級兵にあとで恨まれそうです」

 生島が穏やかに笑った。

 オフィリア05部隊の隊長は、御厨《みくりや》沙良大尉が務めるが、あとのメンバーは全員カガリの部下にあたる。

 もうすぐ四十になる種田篤は第二世代に当たる。上等兵だが、ベテランだ。

 そしてカガリと同期だが、二等兵である五百雀《いおさき》月子。

 計四人が、オフィリア部隊の一隊にあたる。

 
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  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第7話 クーシックカルト

     生島基地司令は、インスタントコーヒーを飲みながら腕を組んだ。  警察との長い電話を終えて、オフィリア05部隊の隊長である御厨《みくりや》大尉とカガリに向き直る。 新人とて、カガリは副隊長である。報告を待つ義務があった。 「とうとううちの管轄でも出たようだ、あの教団が」  御厨隊長は、とっさに首をかしげたが、カガリがすぐに反応した。 「ああ、アレですか。都内では初のケースでは?」 「そうだね……そもそも、空蝕教団の名前が出てきたのが五年ほど前からだろうか」  御厨に説明しながら、生島は説明に移る。 カガリの世代では防衛高で習っているが、ぎりぎり第二世代の御厨は会議で通達があったのみだ。 「地球外生命体《ヴォイドフォーク》による地球侵略を是とするカルトなんだ。教団のリーダーは不藤という人物だが、警察にもまだ顔が割れていないそうだ。信者たちは、異界防衛軍の存在を否定し、地球外生命体《ヴォイドフォーク》により訪れる終末を望んでいるそうだ」 「あ……思い出しました! あの、地球外生命体《ヴォイドフォーク》に壊された土地を巡礼する、謎の集団ですよね」  御厨大尉は、数年前に聞いた話を思い出す。 他で基地司令にそんな口を聞けば叱られるが、生島は堅苦しいのを嫌った。  生島は、御厨に頷いて見せる。 「そう、それが空蝕教団だ。教団の金の流れなども不透明だが、彼らが禁止されたパソコン機器などをどうやって手に入れて、それで地球外生命体《ヴォイドフォーク》を呼び出しているのかも、まだ明らかにされていない。そちらを追いかけるのは警察に一任してある。異界防衛軍関東支部としては、手錠などの拘束具を多めに持ち歩くことが決定された。オフィリア05部隊にはカガリくんの能力があるが、今後は持ち歩いてもらいたい」  カガリと御厨はすぐさま敬礼した。 あとで、御厨は隊長会議でも聞かせられるだろう。 「いろいろなアクシデントに見舞われたが、不知火兵長の柔軟な対応には感謝しているよ」 「は

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第6話 初陣の後悔

     探知機を持って移動しながら、五百雀《いおさき》月子は苦い気持ちでいっぱいだった。 降下訓練では、カガリといい勝負だった。  それが、実地ではこのざまだ。 遅れたところに駆け付けて、軽々と四体の地球外生命体《ヴォイドフォーク》を狩ったカガリ。  現地にいながら、一体も倒せなかった月子。 同じ新人《ルーキー》でも、実力は歴然としている。  同班になった時に、上司ツラ――実際上官なのだが――をするカガリに散々覚えておけと啖呵を切ってこの始末。 あとで、カガリに鬼の首をとったかのように言われるだろう。 「月ちゃん、反省は後にしろよ?」  探査機を動かしながら、種田上等兵が声をかけた。 月子は顔が赤くなった。  任務に集中していないことがバレバレだ。 「カガリちゃんと張り合ってくのはいい――あいつは同じ立場で競ってくれる相手は嬉しいだろうからな。でも、今は仕事中だ」  とっつきやすい種田は、妻子持ちでお茶の水基地内のマンション住みである。 時々独身寮に誘われて飲みにくるが、誘ってくる相手は上官が多い。  月子が見かけるのは、そういう飄飄としたところが多く、今のような引き締まった顔を見るのは出撃してからだ。 「はい、反省――はあとでします」 「月ちゃんは大人っぽいようで、頑固だからなぁ。カガリちゃんにはなんでそんなにつっかかちゃうのか、おっさんに話してもいいのよ?」 「そんなことは――」  月子は不知火知世中将に命を救われたことがある。 ヒーローだと思った。  軍が物販している人気隊員のぬいぐるみや、キーホルダーなどを両親にせがんで買って貰った。 今思えば広報活動であり、嵩む軍費の足しだったのだろう。  偵察ドローン《スカウトオービット》で勝ち戦だけをニュースで報じるのは、今では苦笑しかないが子供の頃は夢中だった。 それは娯楽が少ないせいもあった。  子供向けのアニメ

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第5話 異髄力

     カガリは、着地するとすぐにコープスイングをしまう。 収納すると同時に、専用武器のシナプスダガーで縫い留めた空間からフジツボ型を狩った。  カガリの異髄力の一つ、エーテル・スティチャーだ。 本来は異髄力は一人一つしかないが、カガリは何故か二つの力を使い分ける。  一つは、癒しの力。そしてもう一つが、この空間に敵を縫い付ける能力だ。 敵の進軍を止め、戦いやすいように足止めをする。  これが、兵長として抜擢された要因の一つでもあった。 癒しの力も、類似する異髄力は未だ発見されていない。  防衛高の時代から、カガリの異髄力を頼りにけが人が運ばれたり、カガリが呼ばれたりと学生時代から忙しかった。 「よそ見するな、五百雀《いおさき》! 初陣で死ぬ気か!」  どことなく呆然とした月子に怒鳴り、カガリはシナプスダガーを次の標的に向ける。 一番区画から遠い場所は、御厨大尉と種田上等兵が駆除にかかっていた。 「凄い……これが、20IzF戦闘……」  お茶の水基地のオペレーションルームで、宮田オペレーターが呟く。 カガリが到着してから、画面の上にいた脅威は、次々と駆逐されていった。  全部で八体いたフジツボ型は、三体は御厨大尉が仕留めて、一体は種田上等兵が倒している。 残る四体が、見る見るうちにカガリによって打ち倒されている現実。  異髄力を使っているのに、同調率は依然として20%を保っている。 「ふうむ……これが不知火カガリか」  剣崎副指令も、気が付けば画面にくぎ付けになっていた。 到着の早さも、隊長格と遜色はない。  新人は、脅威度Eランクならば二人で一体倒せれば御の字だ。 「安全を確保しました。地球外生命体《ヴォイドフォーク》の生体反応、消失」 「データリンク確認、研究車を派遣します」   異髄は新鮮なものほど良い。 地球外生命体《ヴォイドフォーク

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第4話 初陣

    「オフィリア05部隊、出撃します」 「通達、了解。作戦プロトコル起動」  異界防衛軍、お茶の水支部。オペレーションルームで矢継ぎ早に言葉が飛び交う。 「偵察ドローン《スカウトオービット》、現地到着。映像、共有します」 「生体反応感知、偵察ドローン《スカウトオービット》を寄せよ」  渋い男の声が、指揮を執る。 お茶の水基地副指令、剣崎《けんざき》政虎《まさとら》がオペレーションルームの長だ。  剣崎が地球外生命体《ヴォイドフォーク》の異髄から得た力は『ニューロ・パルス』という。 地球外生命体《ヴォイドフォーク》から人間までの、指定区域の生体反応を感知できる。  戦闘には戦闘向きの異髄力があるように、現場ナビゲートを含めた支援向きの異髄力があった。 「副指令、不知火兵長は――?」 「当然、間に合わない」  異髄力を使いながら、剣崎はそっけなく言葉を返す。 基地司令である生島の秘蔵っ子である不知火カガリは、本部に出向していた。  連絡は入れさせているが、検査次第ではまだ身動きが出来ないかもしれない。 数に数えられないものを、剣崎は当てにしない。  それにいくら不知火知世中将の忘れ形見といえ、贔屓する気はなかった。 「五百雀《いおさき》二等兵、同調率60IzFに到達!」 「まだ、戦闘前だぞ」  剣崎は苦り切った。 新人たちの初陣であることは理解しているが、今月は頭が痛い。  同調率が高ければ、すぐにオーバーバーストして戦闘不能になる。 せいぜいあと半年は、これに悩まされるのだ。毎年、剣崎の悩みの種である。 「地球外生命体《ヴォイドフォーク》、現着!! フジツボ型の地球外生命体《ヴォイドフォーク》と断定、大きさおよそ一メートル。想定脅威度Eランク!」  オペレーターの宮田が鋭い声をあげた。 宮田の声は、現場にいる隊員にもイヤフ

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     生島がいくらでも奢るというので、カガリは異界防衛軍本部の食堂でたくさん注文をした。 十八の育ち盛りだ。  兵長という階級も、そう収入が多いわけではない。 牛丼、生姜焼き、親子丼と制覇していくカガリを、生島が微笑ましく見届けた。  お茶の水支部もまだ他の支部と比べれば都会のほうだが、一日で何種類もの肉は揃わない。 唯一の陸路だけで経済を回すのには、まだ日本は時間がかかる。 「他にも、なにか食べたかったら注文しなさい」 「タネさんに……種田上級兵にあとで恨まれそうです」  生島が穏やかに笑った。 オフィリア05部隊の隊長は、御厨《みくりや》沙良大尉が務めるが、あとのメンバーは全員カガリの部下にあたる。  もうすぐ四十になる種田篤は第二世代に当たる。上等兵だが、ベテランだ。 そしてカガリと同期だが、二等兵である五百雀《いおさき》月子。  計四人が、オフィリア部隊の一隊にあたる。 「市内で、お土産に何か買ってかえるかね?」 「いえ、生島基地司令が払っては贔屓にとられますし……」  自分が払うにも、カガリはまだ初任給を貰えていない。 数日前まで学生だった身にはできない相談だ。 「では、基地全体に卵でも大量に買っていこうかね」 「はい! 喜ばれます。皆タンパク質には飢えてますので」  ちらりと同期同班部下の、五百雀《いおさき》月子の顔が浮かぶ。 ――基地司令の好意に甘えっぱなしでいいんですか。  兵長であり副隊長でもあるカガリに、敬語は使うが毒舌の彼女は平然と言いそうだ。 「あ、やっぱり――」  やめておきましょう、という言葉より先に、生島の携帯が鳴る。 通話しながら生島の顔が険しくなった。 「オフィリア05部隊に召集がかかりそうだ。地球外生命体《ヴォイドフォーク》の接近が確認された。オフィリア部隊は01部隊も04部隊も既に出立済みだ。あとは非番と夜勤明け―

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第二話 防衛軍本部

     検査室で、カガリは生島中佐と再会した。  会議が終わっての立ち合いだ。 生島の場合は検査結果より、カガリの心配で参加している。 「もう慣れてるので、中佐が立ち会わなくても……」 「いや、ぜひ立ち会わせてくれ。私は普段お茶の水支部から出られないからな」  検査機器を持っている人間、紙の書類を持って行き来する人間、と検査室の中は人が多い。 簡易着替えルームで、カガリは重たい礼服を脱ぎ、バイオメタリック・エクソスーツに着替える。  集団に観察される羞恥は、とうに捨てた。 異血覚醒してからというもの、そんなものは無駄でしかない。  検査台の上に横になると、ケーブル類が装着され、カプセルが閉じられる。 「異髄共鳴解析試験、開始します――」 「被験者、不知火カガり兵長。異髄、注入します」  温度のない声が次々と読みあげていく。 カガリは、もう雑然とした無意識の中へと入っていった。 「被験者の中枢神経と外部干渉波を量子干渉計で測定開始」 「脳波・心拍・霊子波・フォトン粒子流の同期率を算出」 「共鳴係数『Ψ-Index』により異髄覚醒度を評価――120%」  生島が、腰を浮かす。 ベテランや、エリート格の隊長クラスでも、異髄覚醒力は90%を滅多に越えない。  いつもは伝聞されてきた数字が、いざ目の前にすると驚異的だった。 「異髄同調率《イズイシンクロレイト》20イズフラックス」 「……相変わらずの好成績ですね。並みの軍人なら50イズフラックススタートですが」 「不知火兵長も、計算上はバケモノですね。異髄の中でバイオメタリック・エクソスーツを着れば、VF細胞のオーバーバーストを起こしても不思議じゃないのに、この数値を安定して出せるとは」  研究職たちは、物慣れた風に会話しているが生島からすれば狂気の沙汰だ。 バイオメタリック・エクソスーツは、これまで倒した様々なヴォイドフォークのパーツを組み込んだパワードスーツである。  VF細胞という異物をいかに自分に慣らして使うか。しかし使いすぎては体に異常を起こすリスキーなものだ。 基本、軍の試験では異髄液に浸かり、覚醒度と覚醒した力で事務員と戦闘員に振り分けられる。  覚醒度は高ければ高いほど、優遇される。 しかし、同調率は高い数値になると使用

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第一話 異界防衛軍

    「は~、だりぃな……」  不知火《しらぬい》カガリは、ため息をついた。 母親である知世中将の墓参りのあと、異界防衛軍本部に呼び出されたのだ。  亡くなった母の話題は、カガリには重い。 期待と好奇心を背負い続けて、十八になった。  不知火カガリ、階級は兵長。下から四番目の階級だが、今年防衛高を主席で卒業した身では、かなりの大抜擢だ。 異界防衛軍お茶の水支部、オフィリア05部隊にこの春配属されたばかり。  生島中佐は、お茶の水支部の基地司令でもある。 『ドウシタですか、カガリ。ソラとあうのヒサシブリです、うれしくないカ?』  地球外生命体《ヴォイドフォーク》の中で、

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   プロローグ

     西暦2026年。春。  霊園の中を、軍服で歩く二つの影があった。 壮年の男が立ち止まると、まだ少年の面差しのある不知火《しらぬい》カガリも足を止める。  二つあった花束のうち、一つはもう供えてきた。 「ここだね、不知火兵長。君の母上のお墓は……よく手入れされている」 「はっ! 母も喜ぶでしょう。好意で手を入れてくれる方が多いので」 「私が育て、みんなを救ったヒーロー……。今の幹部の多くは不知火名誉中将に救われた面々が多い」  白髪の男――生島《いくしま》慎三郎《しんざぶろう》中佐は、ハンカチを顔にあてる。 過去の思い出が一気に生島の胸に押し寄せてきた。  不

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