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運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす
運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす
Author: 相木ふゆ彦

プロローグ

last update publish date: 2026-06-15 19:45:38

 西暦2026年。春。

 霊園の中を、軍服で歩く二つの影があった。

 壮年の男が立ち止まると、まだ少年の面差しのある不知火《しらぬい》カガリも足を止める。

 二つあった花束のうち、一つはもう供えてきた。

「ここだね、不知火兵長。君の母上のお墓は……よく手入れされている」

「はっ! 母も喜ぶでしょう。好意で手を入れてくれる方が多いので」

「私が育て、みんなを救ったヒーロー……。今の幹部の多くは不知火名誉中将に救われた面々が多い」

 白髪の男――生島《いくしま》慎三郎《しんざぶろう》中佐は、ハンカチを顔にあてる。

 過去の思い出が一気に生島の胸に押し寄せてきた。

 不知火知世名誉中将は、地球外生命体が押し寄せてきた第一線で活躍していた。

”撤退する時は味方の死体を担いで逃げろ。絶対に置き去りにするな。テキの手に渡るくらいなら、必ず脳を打て”

 今や異界防衛軍の標語である言葉を残した、当人でもある。

 そして、その知世《ちせ》中将が瀕死の際に頭を撃ったのも、生島だった。

 忘れ形見のカガリを溺愛していたが、この春。

 防衛高を主席で卒業して、異界防衛軍に入学したカガリを連れて初めて墓参りにきたのだった。

「……カガリ君は六歳だったか。当時……」

「はい、思い出は少ないですが」

「ほとんど軍に尽くしてくれたからな、知世くんは……」

 ――赦してくれるだろうか。

 生島の絞り出した声は、カガリには聞かせたくなかった。或いは、聞こえていてほしかった。

「母は、満足していると思います。VFに脳の知識を奪われることを、最も忌避していましたから――もう、苦しまないでください。生島中佐の選択は、母の意思に沿ったものだと自分は信じております」

 その言葉に救われてはいけないと分かっていて、生島は涙を必死でハンカチに吸わせる。

 軍に入隊した時に覚悟したはずだった。

 人の命は儚いことも、同僚と共に死地に赴くことも。

 それでも、愛弟子を殺した弾丸は、自分が撃ったのだ。

 瀕死で、撤退もままならなかった。生島自身も死のすれすれだった。

 パフィオペディルム型の地球外生命体は、まさに知世の頭を呑む瞬間だった。

 だとしても、何かやれたのではないか――その思いは十二年、重い枷となって生島を苦しめてきた。

 息子のカガリに赦されたとしても、その枷を外して生きることは許されないのだ。

「東京二十三区以外に、久しぶりに出ました。千葉もまだ肌寒いですね」

 カガリの手が、生島の背中に触れる。

 その手は、温かかった。

 葉桜が、静かに風の音を運んでくる。

 生島のすすり泣きは、その風の中で静かに流れ出ていった。

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  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第38話 新型の出現⑵

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  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第37話 新型の出現

     カガリは司令室を出た。  カガリの懸念――護送任務を知る人間の中におそらく裏切り者がいること――を生島司令に伝えたのだ。 生島は、本部の夜坂司令とうまく連携すると請け合ってくれた。  そして、富士宮支部のほうでは早くも椎名上等兵たちが活躍していると教えてくれた。 久遠揚羽からは、遠回しに元気があるかとメールがきている。  カガリが男女共同ルームになかなか顔を出さないせいで、心配させたらしい。 揚羽も二人部屋を一人で使っているので、夜は寝る前に通話するようになった。  揚羽からの最近の反応は、どこか以前の姉っぽさは薄れているように思うが、まだ確信はない。 それでも、ささくれた心は随分癒された気がする。  霧山についての弱音も、揚羽は全部聞いてくれた。 「――不知火少尉、本部からの入電です。緊急事態につき、本部への援軍要請です!」  基地内で、緊急コールが流れると同時にアナウンスが被さる。 カガリは、疾走して着替えに走った。  今日は出撃のシフトではない。 急いでバイオメタリック・エクソスーツを着用しながら、イヤフォンを耳に着けた。 「不知火少尉、浅草にて新型の地球外生命体が出現。脅威度判定Sランクと判断されました。神原中佐より、援軍指名ですがいけますか?」 「行きます」  前回、親の仇であるSランク地球外生命体のパフィオペディルム型には間に合わなかった。 今度こそ、自力で仕留めてみせる。 少尉の位にあった実力があると。  ――しかし、指名……。  神原雪音と鬼山啓心すら、本部判断で現場に放り込まれているのだ。現場が指定したところで叶うとはあまり思えない。 あの神原がどんな判断でカガリを指名したのだろうか。  セイント・テスラを期待されているのなら、無名の新型にはそれは使えない。 新型には、遺骸もデータを取るために必要だ。  

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第5話 異髄力

     カガリは、着地するとすぐにコープスイングをしまう。 収納すると同時に、専用武器のシナプスダガーで縫い留めた空間からフジツボ型を狩った。  カガリの異髄力の一つ、エーテル・スティチャーだ。 本来は異髄力は一人一つしかないが、カガリは何故か二つの力を使い分ける。  一つは、癒しの力。そしてもう一つが、この空間に敵を縫い付ける能力だ。 敵の進軍を止め、戦いやすいように足止めをする。  これが、兵長として抜擢された要因の一つでもあった。 癒しの力も、類似する異髄力は未だ発見されていない。

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第4話 初陣

    「オフィリア05部隊、出撃します」 「通達、了解。作戦プロトコル起動」  異界防衛軍、お茶の水支部。オペレーションルームで矢継ぎ早に言葉が飛び交う。 「偵察ドローン《スカウトオービット》、現地到着。映像、共有します」 「生体反応感知、偵察ドローン《スカウトオービット》を寄せよ」  渋い男の声が、指揮を執る。 お茶の水基地副指令、剣崎《けんざき》政虎《まさとら》がオペレーションルームの長だ。  剣崎が地球外生命体《ヴォイドフォーク》の異髄から得た力は『ニューロ・

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第二話 防衛軍本部

     検査室で、カガリは生島中佐と再会した。  会議が終わっての立ち合いだ。 生島の場合は検査結果より、カガリの心配で参加している。 「もう慣れてるので、中佐が立ち会わなくても……」 「いや、ぜひ立ち会わせてくれ。私は普段お茶の水支部から出られないからな」  検査機器を持っている人間、紙の書類を持って行き来する人間、と検査室の中は人が多い。 簡易着替えルームで、カガリは重たい礼服を脱ぎ、バイオメタリック・エクソスーツに着替える。  集団に観察される羞恥は、とうに捨てた。 異血覚醒してからというもの、そんなものは無駄でしかない。  検査台の上に横になると、ケーブル類が

  • 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす   第一話 異界防衛軍

    「は~、だりぃな……」  不知火《しらぬい》カガリは、ため息をついた。 母親である知世中将の墓参りのあと、異界防衛軍本部に呼び出されたのだ。  亡くなった母の話題は、カガリには重い。 期待と好奇心を背負い続けて、十八になった。  不知火カガリ、階級は兵長。下から四番目の階級だが、今年防衛高を主席で卒業した身では、かなりの大抜擢だ。 異界防衛軍お茶の水支部、オフィリア05部隊にこの春配属されたばかり。  生島中佐は、お茶の水支部の基地司令でもある。 『ドウシタですか、カガリ。ソラとあうのヒサシブリです、うれしくないカ?』  地球外生命体《ヴォイドフォーク》の中で、

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