LOGIN検査室で、カガリは生島中佐と再会した。
会議が終わっての立ち合いだ。 生島の場合は検査結果より、カガリの心配で参加している。 「もう慣れてるので、中佐が立ち会わなくても……」 「いや、ぜひ立ち会わせてくれ。私は普段お茶の水支部から出られないからな」 検査機器を持っている人間、紙の書類を持って行き来する人間、と検査室の中は人が多い。 簡易着替えルームで、カガリは重たい礼服を脱ぎ、バイオメタリック・エクソスーツに着替える。 集団に観察される羞恥は、とうに捨てた。 異血覚醒してからというもの、そんなものは無駄でしかない。 検査台の上に横になると、ケーブル類が装着され、カプセルが閉じられる。 「異髄共鳴解析試験、開始します――」 「被験者、不知火カガり兵長。異髄、注入します」 温度のない声が次々と読みあげていく。 カガリは、もう雑然とした無意識の中へと入っていった。 「被験者の中枢神経と外部干渉波を量子干渉計で測定開始」 「脳波・心拍・霊子波・フォトン粒子流の同期率を算出」 「共鳴係数『Ψ-Index』により異髄覚醒度を評価――120%」 生島が、腰を浮かす。 ベテランや、エリート格の隊長クラスでも、異髄覚醒力は90%を滅多に越えない。 いつもは伝聞されてきた数字が、いざ目の前にすると驚異的だった。 「異髄同調率《イズイシンクロレイト》20イズフラックス」 「……相変わらずの好成績ですね。並みの軍人なら50イズフラックススタートですが」 「不知火兵長も、計算上はバケモノですね。異髄の中でバイオメタリック・エクソスーツを着れば、VF細胞のオーバーバーストを起こしても不思議じゃないのに、この数値を安定して出せるとは」 研究職たちは、物慣れた風に会話しているが生島からすれば狂気の沙汰だ。 バイオメタリック・エクソスーツは、これまで倒した様々なヴォイドフォークのパーツを組み込んだパワードスーツである。 VF細胞という異物をいかに自分に慣らして使うか。しかし使いすぎては体に異常を起こすリスキーなものだ。 基本、軍の試験では異髄液に浸かり、覚醒度と覚醒した力で事務員と戦闘員に振り分けられる。 覚醒度は高ければ高いほど、優遇される。 しかし、同調率は高い数値になると使用時間のリミットが短くなるのだ。 肉体への負担数値とでもいえばいいのか。 戦闘職は、特にアドレナリンの上昇などでバイオメタリック・エクソスーツに含まれるヴォイドフォークのパワーが暴走してしまう。 「――不知火兵長は、VF戦闘シュミレーションでもこの数字だというが」 生島の問いに、研究員はこともなげに頷いた。 「ええ。生島中佐の支部に入隊したので、不知火兵長の20イズ・フラックス戦闘は見慣れるようになりますよ」 生島は唸る。 生島自身は、覚醒度80%同調率50イズ・フラックスでスタートして、戦闘に入ると一時間で60イズ・フラックスになる。 80イズ・フラックスに差し掛かったら、撤退するのが軍務だ。 オーバーバーストして、そもそもまともに戦えない。 生島は基地司令となってから前線から遠のいているが、同じ第一世代では戦っている者もいる。 その同期たちと比べても、育ててきた不知火中将を含む第二世代を含めて、カガリのデータは前例がない。 異血覚醒というのが、先ずカガリしか例がないのだ。 「検査終了!」 「命令コード、確認。終了します」 異髄液がなくなり、カプセルが開く。 若干不機嫌な顔を隠せないカガリが、ゆっくりと身を起こした。 研究員が、その体からケーブル類を外していく。 「今月はもうこれで終わりでしょうか?」 「不知火兵長は、実戦はまだですよね? 実戦のあとでもまた検査します」 研究員は、戦闘中も細かく検査出来たらいいのにとこぼす。 堂々と検査できるのも、ヴォイドフォークが自身を含む地球外のものに興味がないから可能なのだ。 そうでないと、パソコン類やスマホ、あらゆる研究資料、歴史書、文化財などと共に地下奥深くに収納隔離せねばならない。 ヴォイドフォークの関心は、人間の成長、感情、文化と幅広い。 しかし資源には興味がないので、今はまだ電気やガスが使えている。 「不知火兵長、終わったのなら食事にいかないかね? お茶の水支部よりはマシなものが食べられるだろう」 生島にねぎらわれ、カガリは軽く敬礼をして着替えに戻った。 異髄は、サラサラとしているので着替えに苦はない。 年頃もあり、おいしい食事を断る理由がなかった。 「久しぶりに缶詰じゃない肉が食えるかな……?」 地球外生命体《ヴォイドフォーク》が地球に襲来してから、空も海も貿易は絶えている。 せっかく積み込んでも、ヴォイドフォークが興味津々に襲うので、国々は地産地消、自国完全自給という苦肉の策に踏み切った。 貿易に依存していた日本は弱く、土地の多くを農場や牧場に切り替えたものの――。 異界防衛軍の支部や隔離されたデータ書庫などなどは、過疎地に多く存在している。 最近は、ようやく一般家庭にも新鮮な野菜などが届けられるようになったが軍への流通は遅れていた。 「いけるかね?」 「は!」 バイオメタリック・エクソスーツの上に、黒の軍服を着こんでカガリは検査室を後にした。 検査室はカガリ当人には構わず、データのことで盛り上がっている。「五百雀、旅客機型の上に乗れ! 戦闘は無理だ」 「し、しかし……」 「乗れ! 上官命令だ!!」 言い争う時間もない。 カガリは、旅客機型コープスイングを運転する隊員にも怒鳴る。 「いいか、迂回するな! 必ず倒すから信じて、支部基地へ突っ込め!」 左翼には、相変わらず意識が戻らない揚羽が固定されていた。 その揚羽の真横を、カガリが飛行していく。 降り注いできた、タカアシガニ型地球外生命体は小型ながら無数だ。 もはや戦えるのは御厨とカガリだけ。 偵察ドローンの映像の向こう側で、多数の人間が絶望する。 「こちら、大月支部オペレーション! オフィリア05部隊、ローゼン02部隊、迂回して――」 「だから、迂回はいらねーってんだろーが!」 旅客機型コープスイング全体が光った。 揚羽を包んでいた光の結界が、先ほどの規模とは比較できない大きさで発現したのだ。 旅客機に触れていたもの、真上にいたもの、近づこうとしていたもの。タカアシガニ型地球外生命体が、一気に消滅していく。 まばゆい光の中、地球外生命体の死体さえ残らない。 「突っ込めーーーーーーーーーー!!」 旅客機型コープスイングは背中に、戦闘不能になった揚羽、月子を乗せたまま富士山麓シェルターに突き進む。 大月支部から飛び出してきた本部の部隊が、カガリたちの前後を取り囲んだ。 今更とは思ったが、富士
揚羽の体が落下していく。 風切り音がして、カガリが揚羽を追って虚空に飛び込んだ。 「不知火(しらぬい)くん、追いかけて! こっちは皆でなんとかするから!」 御厨《みくりや》隊長の声がして、カガリは命令を先駆けた形になった。 御厨と五百雀《いおさき》月子の二人きりで、このカマキリ型の地球外生命体を倒さなくてはいけない。 月子の心臓が、不安にはねた。 「揚羽ーーーーーーーーーーーーー!」 カガリは大空を落下していく。 何度か、手が滑って空を掴んだが、揚羽が背負っていたコープスイングを捕まえる。 頑丈なバイオメタリック・エクソスーツから血を流す揚羽の体を、ようやく捕らえた。 強力な重力は、スーツのお陰で耐えられる。 揚羽のコープスイングは、揚羽の意識と共にオフになっていて、カガリの力だけで空中に抱きかかえた。 「揚羽! 揚羽、しっかりしろ!! 頼む!」 頭の怪我は、すぐにカガリの癒しの力で治したが脳震盪らしきダメージには効かない。 青白い顔でがっくりと項垂れている揚羽の体を抱えて、カガリは上昇した。 旅客機には、まだ数体のカマキリ型地球外生命体が取りついている。 カガリは旅客機の上に揚羽の体を固定して縫い付けると、揚羽の安全を確認しながら武器を振るった。 カガリの愛用するシナプスダガーは、他のゼノブレイドと比べてリーチは短い。 しかし、その分攻撃力は高いのだ。 「ありがとう、すぐ戻ってくれて」 小柄な御厨隊長が、威嚇するカマキリ型の胴体を切り裂く。 寝かせられている揚羽を見て、大丈夫なのかなどは聞かなかった。 無事でないのは、一目みれば分かる。 「おそらく、脳震盪です!」 カガリは、遠距離の地球外生命体を深追いせずに、揚羽の側で留まって叫ぶ。 代わりに、その敵は月子が仕留めてくれた。
「あれは――Bランクのソウゲンオオカミ型です!本部は動いているんですよね?」 宮田オペレーターが口を覆う。 生島と宮田中尉は、お茶の水基地の司令室で偵察ドローン《スカウトオービット》の映像を、密かに確認していた。 何も手助けができないが、結末を知らなくてはならない。 一方剣崎(けんざき)副司令は、いつものオペレーション任務で詰めている。 生体反応を探し出す剣崎の異髄力”ニューロ・パルス”は、事務方ではレアな異髄力の一つだ。なかなか替えは利かない。 「おそらく――だが、本部もいま市原支部の受け入れをしている最中だし、後詰の部隊は新横浜支部の協力に向かった。……人手が足りるといいのだが」 「こちらから応援をだせないのですか?」 「シェルターから有識者を連れ出したであろう時間、仕事でアリバイがある部隊だけを選出したんだ。出したら極秘ではなくなってしまう……」 生島の声がしぼむ。 出せることなら、だしてあげたいのは生島も同じだ。 映像の向こう側では、カガリがソウゲンオオカミ型の地球外生命体《ヴォイドフォーク》を縫い留めて、旅客機型コープスイングをどうにか先にいかせようと悪戦苦闘している。 旅客機型の中にいる有識者を一度に失ったら、地球外生命体《ヴォイドフォーク》の侵略はさらに過激になるだろう。 人間という生態や感情、歴史などが 地球外生命体のねらい目だ。 倒すことより、有識者たちの命を富士山麓の特別シェルターに運ぶことが、任務である。 「あれは――さらにDランクのスライム型でしょうか?」 ソウゲンオオカミ型を空間に固定して離脱しかけた集団に、また地球外生命体《ヴォイドフォーク》が降り注ぐ。 旅客機型コープスイングに、丸い球体が張り付いた。 「いや、変化していく!……なんだあれは?」 生島の険しい目線の先で、球体はキノコへと変化した。 「あれは――ツキヨタケ型地球外生命体《ヴォイドフォ
奥多摩支部基地は、ざわめいていた。 旅客機型のコープスイングが動くことといい、他支部の応援が来ることといい普通ではない。 この作戦に参加しないものは自室以外に立ち入り禁止になり、ひとけは減ったもののざわざわしている。 「さっ、そろそろ支度だよ。三度目だけど、シュミレーション確認と装備の確認しよーね」 御厨《みくりや》大尉が声をかけると、オフィリア05部隊の不知火カガリ、種田上等兵、五百雀《いおさき》月子たちが動き出した。 「御厨先輩、それ三度目ですよ?」 御厨をからかうように声をかけたのは、鷲塚晴一中尉。 ローゼン02部隊の隊長だ。 「うちの部隊の話だから、気にしないで」 付き合いの長い相手だが、御厨は苦手になってしまった。 入隊して、出世して隊長などにならない限り部隊は固定化される。 今年、お茶の水基地で新人が二人も入った部隊はオフィリア05部隊だけだ。 去年、夏と秋に隊員を一人ずつ亡くした。 それから春の新人入隊まで、他部隊の補助要員として動いていた。 そのせいで、意見を言うのが怖い。 鷲塚中尉はその辺、副隊長が隊長に昇進しての新人導入であったし、御厨とは立場が違う。 「人の部隊のことは、余計なお世話じゃないですか?」 カガリが、鷲塚隊長の目を見て平然と口を出す。 「すみません、隊長。こいつほんとに生意気で!」 揚羽がカガリを小突きながら謝らせようとするが、体格が及ばない。 鷲塚も、鼻で笑い返した。 「そっちこそ、よその部隊の隊長に余計なお世話じゃないのか?」 「まあまあ、作戦前にもめるのはよしませんか。自分が抜けたあとも、もめごとは厳禁ですよ」 飄飄とした種田が間に入り、緊迫した空気が緩和される。 このあと頼りになるベテランは、移送される箱の中に入ってしまう。 御厨も、止めるべき立場だったがおろおろして終わっ
久遠揚羽は、イライラとして自室に戻った。 自室といっても二人部屋だ。 同じ階級で部屋は決まるので、兵長である揚羽より下は四人部屋となる。 「あーもー、なんでこんな腹たつんだろ……」 月子は初陣を失敗したことを悔やんでいたが、カガリは気にしていなかった。 それはいいことなのだろうが……何故か揚羽の胸の中はすっきりしない。 「なんか、どんどん背が伸びてるし……」 揚羽がよく知るカガリは六歳から十五までのカガリだ。 その頃は揚羽のほうが背が高かったし、カガリが自分の後ろをついてくるのが可愛かった。 反発することも少なかったし、怪我人がでるたびに本部に呼ばれては連れていかれるのが可哀そうに思っていた。 小さい頃のカガリは、二人も治すとバテて寝込んでいたからだ。 体の成長と共に異髄力も増したのだろうが、口数は少なくなっていって目つきは鋭くなる。 しかし、揚羽を見る目は変わらず優しかった。 防衛高には家から通えたのに、カガリは寮に入ることを選んだ。 遠慮していたのだろうか、当時二年生の揚羽は悩んだものだ。 入学したカガリは防衛高で高い成績を出しながら本部に通う。 そんなカガリを見ながら一年、揚羽は卒業して入隊した。 一年目は、追いつくのに必死だった。 自分も実家に帰る余裕はなく、カガリが入隊したら通常業務に追加で人を癒すのかと、想像しただけで疲労したぐらいだ。 そんな揚羽を、カガリはさんざん甘えさせてくれた。 規則正しい生活のカガリに、長電話したり外で食事をしたり。 だから揚羽の中で一時はカガリは、全般的に優しい人間だと思っていたくらいだ。 それが、入隊してきたカガリの周囲の態度が一変していてびっくりしたのだ。 「いつから、ああだったんだろう……」 クッションを抱きしめて、揚羽はベッドに寝転がる。 もしかしたら、カガリの今までの揚羽への態度は「特別」だったのではない
防音の会議室に、オフィリア05部隊とローゼン02部隊が集まった。 指揮をとるのは、基地司令の生島だ。 副司令の剣崎は、その異髄力でそうそうオペレーションルームから離れられない。 ローゼン02部隊にも事情を話すところから始まり、カガリたちは机の上の駒を眺めていた。 「我々の担当は、奥多摩の有識者の移動だ。旅客機型のコープスイングでおよそ三十分と少しといったところか。他の支部はそれぞれの県で応援を受けるとのことだ。本部は一部は護送、残りは先に富士山麓で、受け入れ態勢をとる」 生島は、飛行機のおもちゃを地図に乗せる。 「地球外生命体《ヴォイドフォーク》の素材で隠蔽した箱には、一つずつ隊員一人を付き添うことになる。他の隊員は、常に旅客機型のコープスイングから一定の距離で護送してほしい。旅客機型のコープスイングの操縦は、奥多摩支部から人が出る」 人型のおもちゃを、生島が飛行機の側に配置した。 つまり、部隊から一人ずつ有識者たちの付き添いにだし残り三名ずつが、万が一の襲撃に備える役だ。 はい、と種田上等兵が手をあげる。 「有識者の付き添いは、自分がやります。ここは若手よりベテランのほうが、不安にも対応しやすいでしょう」 「では、うちの部隊でも最年長を出します」 ローゼン02部隊の鷲塚中尉が、年かさの隊員に頷いた。 いくら頑張って声をかけても、見た目の力は強い。 ここは貫禄があるほうが、適任だろう。 「部隊で前方と後方にわけたほうがよさそうですね。うちはどちらでもいいですよ。新人さんを二人抱えている、オフィリア05部隊のほうで好きなほうを取ってください」 鷲塚が、結んだ長い髪を背中に流す。 御厨《みくりや》大尉がカガリを見たので、カガリは口の形でぜ・ん・ぽ・う、と伝えた。 どちらでも良かったのだが、前方のほうが危険な気がしたのだ。 「では、前方で」 「承知しました。では、我々は後方で」
カガリは、着地するとすぐにコープスイングをしまう。 収納すると同時に、専用武器のシナプスダガーで縫い留めた空間からフジツボ型を狩った。 カガリの異髄力の一つ、エーテル・スティチャーだ。 本来は異髄力は一人一つしかないが、カガリは何故か二つの力を使い分ける。 一つは、癒しの力。そしてもう一つが、この空間に敵を縫い付ける能力だ。 敵の進軍を止め、戦いやすいように足止めをする。 これが、兵長として抜擢された要因の一つでもあった。 癒しの力も、類似する異髄力は未だ発見されていない。
「オフィリア05部隊、出撃します」 「通達、了解。作戦プロトコル起動」 異界防衛軍、お茶の水支部。オペレーションルームで矢継ぎ早に言葉が飛び交う。 「偵察ドローン《スカウトオービット》、現地到着。映像、共有します」 「生体反応感知、偵察ドローン《スカウトオービット》を寄せよ」 渋い男の声が、指揮を執る。 お茶の水基地副指令、剣崎《けんざき》政虎《まさとら》がオペレーションルームの長だ。 剣崎が地球外生命体《ヴォイドフォーク》の異髄から得た力は『ニューロ・
「は~、だりぃな……」 不知火《しらぬい》カガリは、ため息をついた。 母親である知世中将の墓参りのあと、異界防衛軍本部に呼び出されたのだ。 亡くなった母の話題は、カガリには重い。 期待と好奇心を背負い続けて、十八になった。 不知火カガリ、階級は兵長。下から四番目の階級だが、今年防衛高を主席で卒業した身では、かなりの大抜擢だ。 異界防衛軍お茶の水支部、オフィリア05部隊にこの春配属されたばかり。 生島中佐は、お茶の水支部の基地司令でもある。 『ドウシタですか、カガリ。ソラとあうのヒサシブリです、うれしくないカ?』 地球外生命体《ヴォイドフォーク》の中で、
西暦2026年。春。 霊園の中を、軍服で歩く二つの影があった。 壮年の男が立ち止まると、まだ少年の面差しのある不知火《しらぬい》カガリも足を止める。 二つあった花束のうち、一つはもう供えてきた。 「ここだね、不知火兵長。君の母上のお墓は……よく手入れされている」 「はっ! 母も喜ぶでしょう。好意で手を入れてくれる方が多いので」 「私が育て、みんなを救ったヒーロー……。今の幹部の多くは不知火名誉中将に救われた面々が多い」 白髪の男――生島《いくしま》慎三郎《しんざぶろう》中佐は、ハンカチを顔にあてる。 過去の思い出が一気に生島の胸に押し寄せてきた。 不







