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第6話
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運命を超えて、君と共に 第9話
「あなたはまだ、自分の私への気持ちに気づいていないのかもしれない。今あなたが私に優しくするのも、あの件で私に対して罪悪感を抱いているからかもしれない。あるいは、ご両親が私を好むから、私が嫁にふさわしいと思っているのかもしれない。けれど、私はその罪悪感など必要としていない。光貴、もう私を探しに来ないで」私は光貴の傘を押しのけ、振り返らずに雨の中に駆け出した。じゃなければ、次の瞬間、光貴の腕に飛び込み、泣き出してしまいそうだった。それ以来、光貴は私の前に姿を現すことはなかった。ただ、時折、私が昔好きだったものが家の前に置かれるようになった。光貴は、まるで私を取り戻そうとしているかのようだった。時には、屋敷でよく食べていたお菓子が届いたり、子どもの頃、彼に頼んで作ってもらったおもちゃが送られてきたりもした。まさか、光貴がそんなにもすべて覚えていたなんて……この日、私は私塾の生徒たちを首都へ試験に向かわせるため、城の外の港にいた。すると、周囲が突然騒がしくなり、水中から何人もの仮面をつけた黒衣の者たちが飛び出してきた。民衆は恐怖に駆られ、四方八方に散り散りになった。西の城では外敵の侵入が多いと以前から聞いていたが、緊迫した状況でも、私は意外にも慌てることはなかった。私は生徒たちの船を必死に押し進め、彼らの船がゆっくりと港を離れるのを確認してから、ようやく身を隠す場所を探した。そして、目の前に冷たい光を放つ刃が走るのを見た瞬間、私は思った――この一生、もう何も惜しむものはないのかもしれない、と。少なくとも、両親と同じように、この地で死ねるのならそれでいい。だが、その血で汚れた剣が私の胸を貫こうとした瞬間、突如として誰かがその剣を掴み取った。背の高い少年が、再び命を賭けて私を守った。それは光貴だった。彼の震える手は必死に剣を握りしめ、その手から血が飛び散った。血は彼の眉間にも滴り落ち、彼は白い布で私の目を覆った。しばらくして、私は彼に抱きかかえられ、馬に乗せられた。馬は疾走し、光貴は深い息を吐き、私の肩に頭を預けて、ようやく体の力を抜いた。「夢乃、また君を失いかけた……本当に、俺は……」彼は言葉を詰まらせ、声が震えていた。「本当に怖かった」高崖の上、極寒の地で、命がかかってい
運命を超えて、君と共に 第8話
花織は引きずられていった。しかし、彼女の笑い声はまるで刃のように鋭く、光貴の心に深く突き刺さり、息ができないほどの痛みを伴った。夢乃を傷つけたのは彼自身であり、夢乃の血を取ろうとしたのも彼だった。巨大な悲しみが襲いかかり、光貴はほとんど立っていられなかった。首都を離れた後、私は西の城には行かなかった。両親が一生を過ごした場所を見てみたくなり、私は数日の旅路を経て、遂に西の城に到着した。ここは都ほど豊かではないが、人々は素直で温かかった。船を漕ぐ漁師が笑いながら言った。「ここは外敵しばしば侵入する地。お嬢様の装いは明らかに高貴なお方とお見受けするが、なぜこのような所へ？」私は黙っていた。両親はこの地を一生守ってきた。だから私も、この場所を少しでも良くしたいと思った。ここで塾を開き、そこで得たお金で「安住堂」を建て、戦乱で家を失った子どもたちを引き取った。彼らはもう、昔の私のように誰かに虐げられることはないのだ。日々は穏やかに過ぎていった。ある日、大雨が降り、授業を終えた私は、塾を出て雨の中を帰ろうとしていた。すると突然、傘が私の頭上に差し出された。その香りは、久しぶりに嗅ぐもので、懐かしさが胸にじんわりと広がった。「まだ昔のように、雨の日に傘を忘れて、塾で俺を待っているのか？でも、君の体は弱いんだ。もっと自分を大事にすべきだ」と。私は顔を上げ、思わず目を見開いた。そこには光貴が立っていた。一瞬、夢の中にいるような気がして、信じられなかった。光貴の顔が変わっていた。以前のような明るい目ではなく、痩せこけていた。彼の声は喉に詰まっているようで、ほとんど声にならない。「夢乃、やっと…やっと見つけた」私は、この人生で光貴に再び会うことはないと思っていた。「私を探しに来たのか……ご両親が私を思って、迎えに来てくれたのか？」私は手をぎゅっと握りしめ、胸の高鳴りを必死に押さえた。光貴が私をじっと見つめる。その目には、私を失いたくないという必死さがにじみ出ており、瞳の奥には赤みが差していた。彼は子どもの頃のように、私の頭をそっと撫でながら言った。「俺だ、俺が会いたかった」私は目を見開き、頭の中が真っ白になった。「私を探しに来たのか、富樫さんは？」光貴の胸は激
運命を超えて、君と共に 第7話
雄伸は一瞬言葉を止め、瞳の色が曇った。沈黙を保っていた優奈が苦笑しながら言った。「光貴、君は夢乃を愛していないと言えるのか？もし愛していないのなら、どうして命を懸けて、何度も彼女を救うことができたのか？」光貴は言葉を呑み込み、口を開こうとしたが、何も言えなかった。彼は夢乃を愛していた。命をかけてでも愛し続けていた。ただ、彼らがあまりにも強引に押し付けてきたので、それに逆らいたかっただけだった。自分の人生は自分で決めたいと思っていただけだ。だからこそ、彼は自分が夢乃をどれほど愛しているのかに気づかなかった。優奈は雄伸の言葉を引き継いで続けた。「夢乃は昨日、私たちに別れを告げに来たんです。この優しくてかわいそうな子は、出発前に唯一の願い事をしました。それはただ、君が長生きし、毎年楽しく平穏に過ごすこと」光貴は突然、昨日夢乃が言った別れの言葉を思い出し、その顔色が固まった。しばらく呆然とした後、やっと声を発した。「でも、もし彼女が本当に別れを告げに来たのなら、どうして私との勅令を求めたのか？」優奈は深くため息をつき、言葉を惜しんだ。「その勅令に何が書かれているか、ちゃんと見てごらんなさい」光貴は頭が真っ白になりながら、胸の中から勅令を取り出した。次の瞬間、その内容を見た光貴は雷に打たれたかのように全身が震え、立っていた体が揺れた。そこには夢乃の字が書かれていたが、彼女の名前は書かれておらず、代わりに「富樫花織」と記されていた。光貴は突然、昨日夢乃が苦しげに笑った顔を思い出した。彼女はこう言っていた。「あなたと花織を成就させるために、私は身を引く」優奈は彼の肩を軽く叩いた。「光貴、あんた本当に富樫さんが自分で毒を飲んだって思う？彼女は朝廷の役人と関係を持ってて、その奥さんに見つかったの。それで、あんたと知り合って、助けてもらおうとしたんだよ。奥さんは、あんたが夢乃と結婚すると思って、富樫さんのことは気にしなくなった。けど怒りに任せて、富樫さんに毒を盛ったの。これは夢乃とは関係ないんだよ」言葉にできない苦い痛みが、光貴の胸の中で渦巻いた。その朝廷の役人の妻と花織はすぐに連れて来られた。役人の妻は光貴の厳しい視線を受け、昨日の出来事を思い出しながら膝をつき、涙ながらに口を開いた。
運命を超えて、君と共に 第6話
光貴は一瞬驚き、すぐに冷静を取り戻した。彼は眉をひそめた。「同じ名前の別人だろう。結婚の勅令はすでに下されているし、俺たちは五日後に西城へ行く予定だ。どうして彼女が今、出て行くことができるんだ？」その時、医者が部屋に入ってきて報告をした。「光貴様、夢乃様からお伝えするように言われた言葉があります。彼女はすでに西の城に向かっており、そこで幸福に暮らす予定です。どうか、彼女のことを心配しないでください」医者の声が光貴の耳に響き渡り、それはまるで雷鳴のように彼の心に響いた。今まで冷静を保っていた光貴は、この瞬間、足元がふらつき、立っているのがやっとだった。夢乃が言っていた「順調で、長生きしますように」という言葉。それは、彼への最後の別れだった。目に涙が溢れ、光貴の唇は震えて押し殺していた。「ありえない！」あれほど命をかけて救った夢乃が、どうしてこんなにも簡単に死んでしまうなんて？侍衛は痛ましそうに語った。「報告に来た者によると、夢乃様の馬車がこの方向に向かっているのを見たと言います。そして、女性の遺体を発見したのですが、その体格は夢乃様に似ており、彼女の背中にはこの名前が書かれた許可証もありました……これは偶然にしてはあまりにも一致しすぎています」光貴は顔色を失い、静かに口を開いたが、その震える体が彼の心を全て物語っていた。「すぐに速い馬を用意しろ」怪我をした手のため、それ以来彼は一度も馬に乗っていなかった。「馬に乗りたくない」とだけ言っていた。実際、彼はかつてのように自由に馬を操ることができないのを恐れていた。手に力を入れたら、もう馬をうまく操れる自信がなかった。しかし、今、彼は馬に乗る決意を固め、ただ一つ、早く、もっと早く、夢乃を探し出さなければならないという一心で駆け出した。光貴は馬を走らせ、崖の端に到達し、遺体が安置されている場所を見つけた。遺体は白い布に覆われ、周りには村人たちが集まり、哀しみの声を上げていた。山賊の無慈悲さを憎む声が響く中、光貴は自分を奮い立たせるように必死に馬にしがみついた。彼は夢乃を日々目の前に見ていた。それなのに、なぜ彼女が離れることに気づかなかったのだろう？光貴は馬を降り、一歩一歩、遺体に向かって歩き出した。その一歩一歩が、まるで深い地獄
運命を超えて、君と共に 第5話
私は頷いた。「それは良かった」私の顔色が青白いのを見て、彼は眉をひそめたまま言った。「昨日、言い過ぎた。気にしないでくれ。ただ、花織は無実だ。私たちのことに、彼女を巻き込むべきではなかった。これからは、もう告げ口はしないでくれ」彼の言葉を聞いて、胸に少し痛みが走った。でも、前世のときのように、もう言い訳をすることはなかった。ただ、唇をわずかに上げて、静かに微笑んだ。「うん、もう二度とないから」光貴は私の布団を引き直してくれた。「昨夜、流星を一緒に見ることができなかったから、結婚した後に君の家に帰ってご両親のお墓参りをしようと思っている。西の城の景色が好きだろう？後で一緒に行こう」私は驚き、でも浅い笑みを浮かべながら言った。「いいのよ。昨夜のことは気にする必要はないよ。彼女を救うのは私自身の考えだから」光貴は少し驚いた様子で、その目に複雑な感情が浮かんだ。「俺はすでに、五日後の馬車を手配した。君が体調を回復したら、すぐに出発しよう」私は静かに光貴を見つめ、言葉を続けなかった。彼は白玉団子を持ってきて、手が震えているのが見えた。彼の手はかつてひどく傷つき、雨の日になると痛みがひどくなる。そして今、ただ食事を運ぶだけでも、こんなにも苦労している。私は胸が痛むような思いで、彼に尋ねた。「私を救うために、こんな風になってしまったことを、後悔しているか？」光貴の顔は穏やかで、まるで何も変わらないように見えた。「後悔はしていない。もし他の誰かでも、俺は救う」私はその目を見て、ますます気持ちが沈んだ。声がどんどん小さくなっていく。「私が病気にかかった時、あの高い崖に登って薬草を取ってきた時、他の誰かでも、同じようにするの？」「うん」やはり、特別な感情はないのか。涙がこみ上げてきたが、私は無理に微笑んで言った。「何度も私を助けてくれてありがとう。私は幼いころから両親を亡くし、家族が欲しかった。だから、無理にでもあなたに結婚を強いてしまった。私のわがままが、あなたを苦しめ、悩ませていることは、よく分かっている」でも、今日からはもう、そんなことはしない。これからは、好きな人を諦めて、私と結婚する必要はない。私との結婚で十年も苦しむことはなく、三十歳で命を落とすこともない。今回は
運命を超えて、君と共に 第4話
前世、私は光貴と結婚したため、花織は耐えられず、一ヶ月後に毒を飲んで自殺してしまった。彼女が飲んだ毒は、特定の人の血でないと解毒できなかった。前世、光貴はその血を見つけることができず、ただ彼女が息を引き取るのを見ているしかなかった。そのことで、光貴は私を恨むようになり、彼が死ぬその瞬間まで、私を憎み続けていた。でも今回は、私は光貴とは結婚していない。なのに、どうして花織がまだ自殺することになるんだ？私はもともと、彼の最後の心残りをどうやってかなえようかと考えていた。今、そのチャンスが訪れた。私は光貴を見つめ、「あなたは私の血を取りに来たんですか？解毒するために？」と尋ねた。光貴は一瞬驚いたような顔をして、私の言葉に予想外だったのか、冷たく答えた。「君が何を言おうと、花織を苦しめ、毒を飲ませたのは君だ。その罪を償うべきだ」彼は私を引っ張り、花織の屋敷へと向かった。花織はすでに息も絶え絶えで、床に横たわっていた。医者が短剣を取り出し、私の腕に一刀を入れた。痛みが細かく走り、私は思わず呻いた。医者は喜びの声をあげた。「毒が反応している。確かにこの方の血は合っています。しかし、花織様の命を救うには半盃の血が必要です。お体が耐えられるかどうか分かりませんが」「駄目だ！」光貴は顔色を変え、眉をひそめた。「その量の血は多すぎる。彼女は耐えられない。他に方法はないのか？」医者は困った様子で言った。「他の血では効果が薄いです。もし光貴様が納得しないのであれば、心の準備をしておいてください。半盃の血を取っても死には至りませんが、毒に侵された花織様は確実に命を落とします」光貴は唇をかみしめ、花織を見つめていた。私はその目に込められた痛みに気づき、医者に言った。「彼女を救いたい、どうぞ血を取ってください」医者は光貴を見て言った。「しかし、これは確実にお体に負担をかけることになります」私は笑いながら言った。「大丈夫です。少し休めばいいだけです。命を救うことが最優先です」光貴は私をじっと見つめ、最後に眉をひそめて、白い袍の一部を引き裂いて私の目を覆った。「これで君に借りを作った。必ず報いをする」彼が去った後、医者は私から血を取るために作業を始めた。鋭い痛みが皮膚を切り裂くたびに、私は過去の光貴との思い出
