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⑲異母兄弟(side 蒼)

Author: 酔夫人
last update Last Updated: 2025-12-08 19:00:06

俺が十歳のとき、父が俺の異母兄あにを藤嶋家に連れてきた。

異母兄さんは俺の四歳上で、彼の母親は父の愛人の一人。

異母兄さんの母親が交通事故で亡くなり、彼女と父の関係を知っていた誰かが父に連絡し、他に引き取る者がいないから藤嶋家で育てると父は判断した。その父の判断を祖父母は受け入れ、俺も、突然の異母兄の登場に戸惑いはあったものの、反対はしなかった。

このとき父が母に何を言ったか知らないが、相当荒れたらしい。これまで母の矜持を支えてきた「父の唯一の子どもの母」というものがなくなったから当然と言える。

しかし当時家長だった祖父さんと次期家長の父が「藤嶋家で育てる」と決定したら、母が泣こうが喚こうが覆えることはない。実家に訴えたかもしれないが、異母兄が現れても藤嶋建設の後継者は俺のままだったから、母方の祖父母も「問題なし」と片付けたのだろうと思う。

父は母に興味がなかったから母のその後を気にかけることなく、用事はすんだとばかりにまた家を出ていった。

こんな出会いであったが、俺と異母兄さんは仲が良かった。

最初はぎこちなさはあったが、祖父母は俺たちを同じように孫として遇し、俺との間も上手に取り持ってくれた。互いに親には恵まれていないという共通点が俺たちを近づけたのかもしれない。異母兄さんは俺を弟として可愛がってくれて、俺はそんな異母兄さんを兄として慕った。

二年後、祖父が藤嶋建設の社長の座と藤嶋家の家長の座を父に譲り、祖母と共に白金の屋敷に居を移すことを決めた。

祖父母たちは俺たちも一緒にこないかと誘ってくれたが俺たちは断った。このとき祖母が怪我をして杖が必要な体になったばかりで、バリアフリーに改装した白金の屋敷で、祖母にはリハビリに集中してもらいたいと俺たちは思っていた。

祖父母が心配した母のことも、この頃は滅多に顔も会わすこともなかったから、このまま何もないと思っていたが――甘かった。

それまでの屋敷は祖母さんの管理下にあったが、母に変わったことで屋敷の雰囲気は一変した。

祖母さんが管理していたときは母と異母兄さんが会うことは滅多になかったし、会ったとしても母

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