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第7話

Auteur: 知念夕顔
隆浩はこんな折原社長を見たことがなかった。きちんとした身だしなみをしているのにスリッパを履いているため、普段の几帳面な姿と比べると、強烈な違和感があった。

承平は昏睡状態の郁梨を腕に抱き抱え、髪の毛一本すら見せまいとしているかのように、郁梨を毛布で全身をしっかりと包み込んだ。

承平が郁梨に離婚協議書にサインさせたことを知らなければ、隆浩は承平と郁梨があたかも仲の良い夫婦だと思い込むところだった。

——

「郁梨、郁梨、目を覚ませ、郁梨……」

病院に向かう途中、承平は郁梨を何度も起こそうとしたが、郁梨はまだ意識を取り戻す気配がなかった。

郁梨の顔は不自然に火照っていて、唇は血の気を感じないほど真っ白で、ひび割れて皮もめくれていた。隆浩はそれを見て思わず驚いた。

「折原社長、奥様は突然このような重症になられたのでしょうか?」

承平はこわばった表情で何も答えなかった。

自分が人間らしからぬことをして郁梨をこうさせてしまったとでも言えっていうのか?

病院に着く直前、承平は何かを思い出したかのように急に指示した。「女性の医師に診てもらえ、できれば婦人科の先生がいい」

これで承平が説明しなくても、隆浩は何が起こったか理解した。

うちの折原社長はなんてとんでもない人だ!

隆浩が事前に病院に連絡していたため、郁梨はすぐに入院棟に運ばれ、それぞれ内科、外科、婦人科の女性の医師が揃ってやってきた。

外科の先生を呼んだ理由は、万が一に備えてのことだ。だってうちの折原社長は獣以下だもの!

三つの科で診察を受けると検査項目も当然多くなり、承平は看護師が郁梨の腕から採血した血液が入った十数本もの採血管を見て、顔色を変えて聞いた。

「こんなにたくさん血を取るのか?郁梨の血を全部抜く気か?」

看護師はびっくりし、先生の一人が慌てて説明した。「患者様は現在昏睡状態にあるため、多くの検査が必要不可欠なんです」

別の先生は空気を読まずに言った。「今さら心配してるの?今まで何してたの?」

自分が郁梨を心配する?

承平は、自嘲にも似た笑みを浮かべた。自分と郁梨の結婚など、結局は打算の上に成り立った一つの契約にすぎない。心配という感情など芽生えるはずもなかった。自分が郁梨を気にかけているのは、ただ人としての最低限の道義からに過ぎない。今こうしてベッドに横たわっている郁梨に対し、責任を負うべき立場であるからこそ、自分は動いているのだ。

胸が痛む?

そんなバカな!

まもなく午前3時になる頃、承平の携帯が急に鳴り出した。

清香からの着信だった。

承平は病室の外に出て電話に出た。

隆浩は病室の入口付近にもたれかかっていたので、承平が出てくるやいなや、慌てて背筋を伸ばした。

「清香、何か用?」

電話の向こうからは焦りの声が聞こえるが、その声は清香ではなく清香のマネージャーである須藤俊明(すどう としあき)のものだった。

「折原社長、清香さんが酔っ払ってしまって様子がおかしいんです。すぐにお迎えに来て頂けますでしょうか」

承平は眉をひそめた。「酔った?どういうことだ?」

「実は、かつて一緒に仕事をしたことのある監督が、清香さんの帰国を知って連絡をしてきまして、新作の出演オファーを持ちかけてきたのです。その日の夜、プロデューサーたちも交えて会食をしましたが、終始しつこくお酒を勧められたため、清香さん自身も戸惑っていましたが、気がつけば何杯も何杯も飲んでしまっていました」

「新作の出演オファー?仕事に関しては俺がちゃんと面倒を見ると言ったのに、なんでこんなくだらない会食に応じたんだ!」

「それは……清香さんは何もかも折原社長に頼りたくないと言っておりました。折原社長、早く来てください。本当に心配です」

「場所を送れ。すぐに向かう」

隆浩は折原社長が外出することを聞き、思わず郁梨のいる病室に視線を走らせた。

「折原社長、清香さんのお迎えに行かれるんですか?奥様はどうなさいますか?」

承平は一瞬ためらったが、それでも承平は決断した。「先生と看護師が面倒を見てくれるから、大丈夫だ。行こう」

隆浩は心の中でため息をつき、仕方なく承平と一緒に清香を迎えに行った。

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