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第229話

作者: 桜夏
蓮司は本当にクズだ、と聡は思った。理恵の話では、今回ちょっかいを出してきたのは蓮司の元カノで、彼が結婚中に堂々と仲睦まじい姿を見せつけていた愛人だという。

離婚したというのに、愛人が元妻の前に現れて騒ぎ立てるのを、蓮司は見て見ぬふりをするなんて、本当にろくでなしだ。

まもなく、取調室から警察官が再び出てきた。今回は他の者も一緒だった。

「柚木社長、理恵様、如月様」

相手は言った。

「防犯カメラの映像から、確かに容疑者が先に如月さんに手を出したこと、そして彼女を無理やり道端の車へ引きずり込もうとしたことが確認され、犯罪の動機が成立します」

「さらに、あの男三人は容疑者のボディーガードではなく、彼女に雇われていたことも判明しました。

容疑者から金を受け取り、如月さんを拉致するよう指示されたと供述しています」

理恵はそれを聞くと、直接言い放った。

「やっぱり!あの朝比奈、さっきまで言い逃れしてたなんて、本当に恥知らずね!」

透子は警察官を見つめ、それからちらりと聡に目をやったが、黙っていた。

もし理恵の兄が来ていなかったら、今日のこの件は、ただのいざこざとして、なあなあ
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  • 離婚まであと30日、なのに彼が情緒バグってきた   第435話

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  • 離婚まであと30日、なのに彼が情緒バグってきた   第406話

    「悠斗も贈り物を持ってきたんですよ。ほんの気持ちですから、どうかお納めください」綾子はまた、満面の笑みで言った。執事はその言葉を聞き、こう続ける。「わたくしにもですか?それは恐縮の至りでございます」三人は言葉を交わしながら歩みを進めた。それぞれが笑みを浮かべているが、その笑みが本物かどうかは、本人にしか分からなかった。廊下を抜け、一行は表座敷へとたどり着いた。新井のお爺さんが堂々と座っており、その顔には威厳が満ちていた。博明が挨拶した。「父さん、ご無沙汰しております。お体はお変わりなく?」新井のお爺さんは彼をちらりと見て、皮肉たっぷりに言った。「おかげさまで、まだ息があ

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