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第1175話

Author: 小春日和
黒澤は白井など眼中になく、倒れている真奈のことだけを案じていた。すぐさま駆け寄って真奈の身体の傷を確かめ、外傷がないとわかると、ようやく安堵の息をついた。

黒澤は低く問うた。「毎回俺をこんなに心配させて、嬉しいのか?」

「今回は……わざとじゃないの」

白井は黒澤と真奈を見つめ、自分がまるで笑いもののように思えた。

「遼介、瀬川、あなたたちが私の口からあの背後の人間の正体を知ることは、永遠にないわ」

白井は悲しげに笑い、二歩後ずさると、廊下の手すりにもたれかかった。そしてそのまま身を仰け反らせ、五階の高さから落ちていった。

ドンッ!

その音を聞いた瞬間、真奈を探していた立花も思わず階下へ視線を向けた。

血の海の中に、白井が倒れていた。全身が血に染まっている。

その光景に、立花は楠木静香のことを思い出した。

楠木静香も、こんなふうに死んだのだ。

彼女たちはきっと、自殺すれば愛する男の心に少しでも後悔や哀れみを残せると信じていたのだろう。

だが現実は違う。男たちは冷たく蔑むだけだ。

自分の命さえ大切にできない、自らを卑しめるような人間を、どうして誰が哀れむことができようか。

「きゃっ!」

突然、女性の叫び声が響き渡った。立花が眉をひそめると、福本陽子が馬場の部下に腕をつかまれ、引きずられるようにして現れた。「ボス!この女、どうにも怪しいんですよ……」

「誰が怪しいって言ったのよ!私に手を出すなんて……私は福本家の令嬢よ!」

福本陽子は青ざめた顔で、腕をつかんでいた護衛を力いっぱい振り払った。護衛が馬場に目をやると、馬場はようやく軽く手を振って退がらせた。

その姿を見た立花は、すぐさま福本陽子の両肩をつかみ、険しい顔で問い詰めた。「瀬川は?どこにいる?」

「なにすんのよ!離してってば!」

福本陽子は立花を力任せに突き飛ばし、反射的にその頬を平手で打った。

バチンと音が響き、立花の頬が一瞬で赤く腫れ上がる。その光景に、馬場は思わず叫んだ。「ボス!」

立花は怒りを必死に抑えていたが、首筋の血管が浮き上がり、その激情を隠しきれなかった。彼は福本陽子の首をつかみ、歯を食いしばって吐き捨てるように言った。「もうお前には我慢の限界だ!俺を本気で怒らせるな!殺そうと思えば、蟻を踏み潰すくらい簡単なんだぞ!」

福本陽子は、こんな立花の姿を見るの
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