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第6話

Penulis: 水無月ねこ
あの日を境に、真澄は二度と家に戻ることはなかった。

柚希も心羽も、まるで示し合わせたかのように、彼のことを口にすることはなかった。

誕生日が近づくにつれ、ふたりは招待状を用意し、学校へと持っていった。

「みんな、来てくれるって!」

心羽は満面の笑みを浮かべて、嬉しそうに言った。

誕生日の二日前。柚希は学校で、真澄と玲奈の姿を目にした。ふたりの間にいた大翔は、俯いて静かに泣いていた。

どうやら問題を起こし、保護者として呼び出されたらしい。真澄は大翔の背を優しく撫でながら、穏やかな声で話しかけていた。

その光景は、あまりにも滑稽だった。

心羽のことで、彼がここへ来たことは一度もなかったのに。

他人の子どもには、これほど「父親」としての役目を果たそうとする。

それが、「愛」というものの差なのだろうか。

視線を逸らすと、教室から出てきた心羽が目に入った。

彼女は真澄の前を通り過ぎたとき、ほんの一瞬だけ立ちとまり、小さな声で挨拶をした。

「叔父さん、叔母さん、こんにちは」

真澄がその声に気づいて視線を向けると、玲奈が先に口を開いた。

「篠原さん、お迎えですか?」

「ええ」柚希は短く頷いた。

「本当に羨ましいわ。お嬢さん、こんなにお利口さんで……うちは毎日大騒ぎなのよ」

苦笑しながら、玲奈は続けた。

「同じ母子家庭なのに、どうしてそんなに立派に育てられるのかしら?」

柚希が何も言わずにいると、心羽が静かに口を開いた。

「でも、大翔にはパパがいるでしょ?だったら、パパがちゃんと見てあげればいいと思う」

その一言に、真澄の目がわずかに揺れた。視線を合わせることができなかった。

「あら、心羽ちゃん、それ誤解よ。おばさんと彼は、ただのお友達なの」玲奈が慌てて取り繕ったが、心羽はそれ以上聞こうとはせず、涙を隠すようにうつむいた。

「叔父さん、叔母さん、さようなら」

小さな手が柚希の手をぎゅっと握る。その細い指先から、必死な思いが伝わってくる。

柚希は背後からの視線を感じた。振り返らずとも分かる。彼はまだ、こちらを見ている。

「真澄、あなたに残されたチャンスは、あと一回しかないよ」

柚希は心の奥でそう告げた。

そして、その夜。久しぶりに、玄関の扉が開く音が響いた。

心羽は元気がなく、柚希は絵を描く彼女のそばに寄り添っていた。

その音に気づき、ふたりは同時に顔を上げた。

「叔父さん……」

「……おかえりなさい」

かすかな声が重なった。

真澄は無言で頷き、手に持った小箱を心羽に差し出した。

「これ……わたしに?」目を丸くしながら受け取った。

真澄からの贈り物は、これが二度目だった。

「うん」

「ありがとう、叔父さん!」

心羽は抑えきれず、その場で包みを開ける。

中に入っていたのは、小さなレゴの車。

柚希の眉が僅かに動いた。それは、以前玲奈のSNSで見かけた、大翔が気に入らずに投げ出したプレゼントのひとつだった。

「ちゃんと子どもをしつけろ。余計なことを言わせるな」真澄の冷たい声が、柚希の胸に突き刺さった。

「それと、あいつの前に無駄に顔を出すな」

その一言は明らかに「警告」だった——彼女が何かを口にすることを恐れているのだ。

柚希はわずかに笑った。

「了解しました」

真澄がなかなか立ち去ろうとしないのを見て、柚希はさらに尋ねた。

「……ほかに、何か?」

「心羽の幼稚園、変えさせてくれ。どこでもいい。手配はこっちでやる」

彼女の胸の奥が、静かに冷えていく。

それが、完全なる「断絶」の始まりだった。

柚希は、心羽の方へ視線を向ける。

小さな手の中にあるレゴの車に、涙がぽたりと落ちた。

「……わかりました」

拒んだところで、意味などないと分かっていた。

真澄が背を向けたその瞬間——

「叔父さん!」

心羽が立ち上がり、走り寄った。

「明後日、わたしの誕生日なの。一緒にお祝いしてほしいの。

一度でいいから……今回だけでいいから……お願い」

その頬にはまだ涙の痕が残っていたけれど、その瞳はまっすぐで、揺らぎがなかった。

柚希は顔を背けた。これ以上、見ていられなかった。

真澄は、沈黙したまま微動だにしない。

心羽は、背筋を伸ばして、じっと彼を見上げていた。

まるでその一言が、世界のすべてかのように。

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