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第8話

Author: 春日ノボル
だけど、まさか美月が私を後押ししてくれるとは思いもしなかった。

美月は、私と雅人の婚約前にどうしても子供を産みたくて、こっそり陣痛促進剤を飲んだらしい。

そのせいで子供は早産になった上に、体も弱くなっちゃった。

季節の変わり目ってのもあって、子供はちょっとしたことで入院騒ぎになる。

雅人はほぼ毎日病院通いで、見てるこっちが心配になるくらい疲れ切ってた。

当然、会社のことなんて構ってられない。

もともと真嗣は最近の雅人の態度に不満タラタラだったのに、今じゃ三日と空けずに姿を消す始末。

ついには、部下から雅人の担当プロジェクトでとんでもないミスがあったって報告が入った。

真嗣は完全に激怒した。

「雅人!お前、このままじゃ会社を他人の手に渡すことになるぞ!

こんなことさえまともに処理できないで、一体何ができるんだ!」

真嗣は役員会議でいきなりテーブルを叩きつけ、雅人の鼻っ面を指して怒鳴り散らした。

「今の自分の立場をわかっているのか!」

雅人は会議室の真ん中に突っ立って、顔を真っ青にして、拳をグッと握りしめてた。

自分が最近ヘマばっかりやらかしてるのは分かってる。
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