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第17話「遺言①」

Author: 4時間移動
last update Last Updated: 2025-11-12 01:29:11

 一行はハムルという村にたどり着いた。

 中に入ると子供たちが花畑で遊んでいる。

 のんびりとした村のようである。

 村の奥に行こうと歩き出したカイは、何かにつまずいて転んでしまった。

「いてて……」

 見ると何かが地面に刺さっている。

 それは錆ついたカギであった。

「何だこの古ぼけたカギは」

 カイは錆びたカギを思い切り投げ捨てた。

 情報集めに村人たちの話を聞いてみる。

 ある女性が言うには、夜になると近くの廃屋の前に犬のような魔物が現れるそうである。人は襲わないものの気味が悪いので、早く退治して欲しいと言っていた。

 また、ある老人からも詳しい話が聞けた。

「昔ゴンじいと呼ばれる老人が、犬のペスタとこの村に住んでいたのじゃ。しかしゴンじいは人嫌いで、ほとんど外には出てこんでな。噂では何か宝物を持っていて、それを守っているのじゃろうと言われておった。あるときゴンじいは亡くなったのじゃが、それ以来ペスタが宝物を守るように、家の玄関の前に座っていたんじゃ。今ではそのペスタも死んでしまったがのう」

 一行は礼を言って老人と別れた。

 さらにゴンじいには孫がいて、今はどこかに引き取られたという情報も得られた。

 カイが切り出す。

「今までの話をどう思う?」

「魔物ってやっぱりペスタじゃない? だとしたら退治するのはかわいそうね」

「問題はゴンじいが何を守っていたかだ」

「それじゃ、これからゴンじいの家を見に行ってみるか」

 だがゴンじいの家は既に廃屋になっていた。

 一行は中に入ってみる。

「うわっ 蜘蛛の巣だらけだ」

「床もごみがいっぱい」

 一行は家の中を念入りに探したが、何も見つからなかった。

「何もなかったな」

「噂は噂ってことか」

「きゃっ。体中蜘蛛の巣だらけ! セーラ、お風呂行きましょ!」

「はーい!」

「アレフ、オレたちも……あれ?」

 アレフはどこかへ行ってしまっていた。

「まあいいや。後から来るだろ」

 三人は宿へ向かった。

 そのころアレフは聞こえてくる悲しげな歌が気になり、花畑の方へ来ていた。

 そこには花を摘んでいる、儚げな美少女がいた。

 細絹のような金の髪を伸ばし、その肌は透けるように白い。

 アレフに気づいた少女が話かけてきた。

「こんにちは。わたしはレナ。あなたは?」

「オレはアレフ。別の大陸のアルメリアという村から来た旅の者だ」

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