Mag-log in「遅かったな。待ちくたびれたので村を焼いておいたぞ」 見るとだらしなく舌を垂らした大型の巨人がいる。「俺の名はゴルドラだ。天使製の鎧が見つからんのでおまえらを泳がせておいたところ、本当に見つけて来るとはな。手間が省けた礼にこれをやるぞ」 ゴルドラはいきなり襲いかかってきた。 ゴルドラはよだれを振りまいて叫んだ。身の毛もよだつような大声が辺りに響き渡る。 天空竜の兜が光の膜を作り出し、セーラを守る。 だがセーラ以外の3人は身体が麻痺して、動けなくなってしまった。 更にゴルドラの瞳が妖しく光り、セーラも深い眠りに落ちてしまう。 そしてパーティーの中に攻撃できるものがいなくなった。 魔物の攻撃はまだ続く。 ゴルドラは異界魔法を唱えた。 天空から流星が降り注ぎ、敵味方全員のHPが1になってしまった。 自分まで瀕死になってしまったゴルドラはヒールを唱えた。 セーラたちの命はもはや風前の灯火であった。「フハーハッハッハ、これでもう何もできまい。次の攻撃でおまえたちは全滅だ!」「もう……ここまでなの? どうしてこんな卑劣な魔物に勝てないの?」 悔し涙を浮かべ、マリアが叫ぶ。 その瞬間、レナが戦闘におどり出た。「わたし、自分がなぜこの呪文を使えるのかずっと不思議に思っていました。でもやっと今わかりました。みなさんをここで救うためだったのですね」 レナは呪文を唱え始めた。 その呪文にカイとマリアが反応する。「マリア! この呪文は!?」「レナ! やめて! やめてー!!」「ええ? ど、どうしたんだ!?」 マリアとカイはレナを止めようとしたが、体が麻痺して動けない。 しかもセーラはまだ眠っている。「誰か! 誰か早くレナを止めて!」「小娘、目障りだ。先に片付けてやる」だが、ゴルドラの体にいつの間にまとわりついた黒い影が、ゴルドラの動きを封じた。「な、何だこれは!? うぐっ」 ゴルドラは沈黙した。「みなさん、短い間でしたが仲よくしてくれてありがとうございました。本当に楽しい毎日でした。これからのみなさんの旅に神の御加護がありますように」 レナは祈るように、静かに呪文を完成させた。«テスタメント» ゴルドラは瞬時に凍りつき砕け散った! そしてレナは力尽きた…………。 全員の麻痺と眠りが解けた。 アレフがマリアに詰め寄る。
夜になるのを待ってセーラたちは廃屋へやって来たが、魔物はどこにも現れなかった。「おかしいですね。毎日誰かが見たという話をしていたと思うのですが……」「実際は毎日出るわけではないのかも知れない。しばらく通って様子を見ることにしよう」 一行は毎晩廃屋の様子を見に行った。 だが件の魔物は一向に現れなかった。 その間、四人はレナにいろいろ街を案内してもらった。 レナも同年代の友達ができ、嬉しそうであった。「そういえば村の隅に頑丈そうな蔵があるけど、あれって何がしまってあるんだい?」「あれは開かずの蔵なんです。なんでも普通はとても手に入らないようなものがあそこに保管されているという言い伝えがあるのですが、カギがないので中を調べられないのです」「蔵を壊してみたら?」「ええ、それも試したそうです。でもとても頑丈で穴さえ開けられなかったとのことです」 そんなある日、再び魔物が現れたという話が聞こえてきた。 その夜、四人はレナを連れて廃屋へ向かった。 家につき確認すると、確かに一匹の魔物が家の前にいる。「あの魔物に見覚えは?」「いえ……」 だが魔物はこちらに気づき向かってきた。「危ない!!」 しかし魔物は犬の姿になり、レナの顔を舐めまわした。「ペスタ!?」 レナは驚いたが、犬は嬉しそうにしっぽを振っている。 魔物は犬のペスタだった。「ペスタ……あなた魔物になって、この家を守ってくれてたのね」 ペスタはオォンと鳴くと家の中に入って行く。 それを一行は追って行った。 ペスタはある部屋で立ち止まり穴を掘り始めた。 なんとそこには隠し階段があった。 階段を降り部屋に入ると宝箱があり開けてみる。 中には魔力を帯びたカギが入っていた。 レナはそれを手にとってみる。 するとペスタはうれしそうに一声鳴くと消えて行った。「ペスタ! ペスター!」 しかしレナの声はもうペスタには届かなかった。「ぺスタはこれを君に渡すために、この家を守っていたんだろう。ところでよければ、なぜ君がペスタを知っていたのか教えてくれないか」 一同はレナの話を聞こうと身を乗り出すのであった。 レナは話を始めた。「この家に住んでいたゴンじいという人は、わたしのおじいさんなんです。わたしはこの家に生まれました。そしてわたしが少し大きくなったとき子犬のペスタがこ
一行はハムルという村にたどり着いた。 中に入ると子供たちが花畑で遊んでいる。 のんびりとした村のようである。 村の奥に行こうと歩き出したカイは、何かにつまずいて転んでしまった。「いてて……」 見ると何かが地面に刺さっている。 それは錆ついたカギであった。「何だこの古ぼけたカギは」 カイは錆びたカギを思い切り投げ捨てた。 情報集めに村人たちの話を聞いてみる。 ある女性が言うには、夜になると近くの廃屋の前に犬のような魔物が現れるそうである。人は襲わないものの気味が悪いので、早く退治して欲しいと言っていた。 また、ある老人からも詳しい話が聞けた。「昔ゴンじいと呼ばれる老人が、犬のペスタとこの村に住んでいたのじゃ。しかしゴンじいは人嫌いで、ほとんど外には出てこんでな。噂では何か宝物を持っていて、それを守っているのじゃろうと言われておった。あるときゴンじいは亡くなったのじゃが、それ以来ペスタが宝物を守るように、家の玄関の前に座っていたんじゃ。今ではそのペスタも死んでしまったがのう」 一行は礼を言って老人と別れた。 さらにゴンじいには孫がいて、今はどこかに引き取られたという情報も得られた。 カイが切り出す。「今までの話をどう思う?」「魔物ってやっぱりペスタじゃない? だとしたら退治するのはかわいそうね」「問題はゴンじいが何を守っていたかだ」「それじゃ、これからゴンじいの家を見に行ってみるか」 だがゴンじいの家は既に廃屋になっていた。 一行は中に入ってみる。「うわっ 蜘蛛の巣だらけだ」「床もごみがいっぱい」 一行は家の中を念入りに探したが、何も見つからなかった。「何もなかったな」「噂は噂ってことか」「きゃっ。体中蜘蛛の巣だらけ! セーラ、お風呂行きましょ!」「はーい!」「アレフ、オレたちも……あれ?」 アレフはどこかへ行ってしまっていた。「まあいいや。後から来るだろ」 三人は宿へ向かった。 そのころアレフは聞こえてくる悲しげな歌が気になり、花畑の方へ来ていた。 そこには花を摘んでいる、儚げな美少女がいた。 細絹のような金の髪を伸ばし、その肌は透けるように白い。 アレフに気づいた少女が話かけてきた。「こんにちは。わたしはレナ。あなたは?」「オレはアレフ。別の大陸のアルメリアという村から来た旅の者だ」「
リサがリンガの大きな瞳に向かっていったが、リンガの吹雪で吹き飛ばされてしまった。 リンガはマリアを握った手にさらに力を入れる。 カイがブーメランを投げつけたが、リンガは頭の角で払いのけた。「あきらめろ。おまえたちはここまでだ」「くそ、こうなったら閃光呪文であいつを!」「よせ、へたに攻撃するとマリアが貫かれる」「……ちきしょう!」 ふと気がつくと周りが明るくなっていく。「この光は?」 見ると大勢の街の人々がその手に松明を持ってやってくるところであった。 松明の明かりがリンガを照らす。 リンガはその光に、思わずマリアを落としてしまった。 すかさずカイがマリアを助けだす。 そしてどさくさに紛れてマリアの豊満な乳を揉んだ。 だが反応すらなくマリアの体は既に満身創痍であった。「セ、セーラは……助かったの……?」「マリア、こんなときまで人の心配をするのか……」「マリア! ヒールを使え!」「もう……長い呪文は……だめ……みたい……」「誰か! 誰かヒールを使える奴はいないのか!」 アレフが叫ぶが街の人々は黙っている。「我々にできることはこれだけだ。鏡を持て!」 街の人々は松明に加え、大小様々な鏡を持ってきて頭上に掲げる。 さらに強力な光が魔物たちに降り注ぎ、魔物たちの目が眩ませた。「カイ、アレフ……今のうちにあいつを倒して……」「マリア、すまん……俺にはできない!」「セーラ、お願いだ! マリアを、マリアを助けてくれ! もうセーラしかいないんだ!!」 だが無情にも、カイの願いは届かなかった。 碧い珠の光は戻らない。「おそらく、光だけじゃダメなんだ……」 アレフが呟く。「天使様の体が……なんだか薄くなってきたような気がします……」 リサの言葉通り、今まさにセーラの力が尽きようとしていた。 そのとき……突然街中が青い光に包まれた。 数人の街の若者が青い光を放つ大きな鏡を運んできたのだ。「おお、見つかったのか!」「ええ! でも本当にあったんですね。この聖法鏡」 松明や鏡の光を受け、聖法鏡は魔物たちに青い光を浴びせ続ける。「もう少しだ。もう少しで魔物たちを倒せるぞ!」「こ、このオレを眩しがらせおって。これでも喰らえ!」 リンガは持っていた小刀を聖法鏡に投げつけた。 鏡は割れ、街を包む青い光は消えてしまった。
陽が落ち夕闇が迫る中、マリアたちが待ち受けるルナパークに、再び魔物たちがやってきた。 なんとセーラは巨木に磔にされている。「おまえたち、天空竜の兜は持ってきたか」「残念だな。兜はないぞ」「なんだと? オレの言うことを聞かなかったな。街を全滅させてやる!」 魔物たちは街を壊し始めた。「早くやめさせないと!」「こういうときは親玉を倒すにかぎるぜ!」 しかし攻撃しようにも、リンガの近くにセーラがいるため手が出せない。 碧い珠をセーラの首にかけようとしても、容易に近づくことはできなかった。「何か助けが必要ですか?」 いきなり声が聞こえたので、三人はあたりを見渡すが誰もいない。「ここです。もう少し上ですよ」 なんと声の主は、以前一行が助けた妖精のリサであった。「リサ! どうしてここへ!?」「魔物の群れがこちらに向かっていたので様子を見に来たのです。それよりも天使様は一体どうされたのですか?」「説明は後。リサ、お願い。この碧い珠をセーラの首にかけてきて」「なにか事情がありそうですね。わかりました。やってみます」 マリアたちが囮となってリンガの注意を引き付ける。 リサはその間に珠を持ってセーラの近くに飛んでいった。 だがリンガに気づかれ叩き落とされそうになる。 リサはの顔の近くを飛びまわった。「ええい、うるさいハエめ」 リンガはリサを叩き落そうとしたがかわされ、自分の顔を殴ってしまった。 リンガがひっくり返る。 この隙にリサはセーラの首に碧い珠をかけた。「やった!」 しかしセーラは目を覚まさない。 よく見ると碧い珠は輝きを失っている。「一体どうしたんだ……」「多分エネルギーが足りないんだ」「じゃあどうやってエネルギーをあの珠に入れるの!?」 しかしその答は誰にもわからなかった。「あのー」 またいきなり声がしたので再び三人は驚いた。 振り返るとどこから出てきたのか、大勢の街の人々がいる。「あなたたちは天使様のお仲間ですか?」「え、はい、そうですけど……」「我々のために戦ってくれている皆さんのお手伝いをしたいのですが、何かできることはありませんか?」 マリアはふと、魔物たちが夜が明ける前に帰っていったことを思い出した。 おそらく光が苦手なのであろう。 倒すまではいかなくても、力を弱めることはできるか
すぐさまミラに飛んだ三人は、以前セーラから聞いていたオルドの家の場所を探してた。 だがそこには林しかない。 マリアたちは林の中に入っていった。 しかしどの道を通ってもいつの間にか林の外に出てしまう。 ジリジリと時間だけが過ぎていく。「一体どうなってるんだ、この林は」「早くオルドさんに会わなきゃならないのに」「わしをお探しかの」 突然後ろから声がしたので、三人は驚いた。「あの、オルドさんですか?」「いかにも。わしゃオルドじゃ」「あの、実は……」「まてまて、ここで立ち話もなんじゃろう。話はわしの家で聞こう」 そう言うと林の中を入って行く。 三人もあわててオルドについて行くと、不思議なことに今度は家が現れた。 オルドの家で三人は碧い珠が砕かれたことを話し、拾い集めたかけらを見せた。「うむ……碧い珠をここまで砕くとは恐るべき奴じゃ。これを元通りにするにはかなりの時間が必要じゃろう。今から始めても夕方に終わるかどうか」「夕方……ぎりぎりだな」「おそらくこのかけらだけでは足らんので、かけらの補充をせねばならん。また、この珠は聖なる力がその源じゃが、その力を全て失っておる。そこで再びその力を珠に込めることが必要なのじゃ」「それで碧い珠を失ったセーラの体は大丈夫なんですか?」「丸一日以上経つとどうなるか、わしにもわからぬ。できるだけ早く珠を身に着けさせないと危険じゃ」「それじゃ一刻も早くお願いします!」「うむ、それでは僧侶のお嬢さん、お主も手伝ってくれんか」「はい!」 オルドたちは祠にやってきた。中は真っ暗である。 だが歩き出すと行き先を示すように炎が灯っていく。 やがて祭壇に着くと、オルドは碧い珠のかけらを祭壇に置き、周りに明かりを灯した。「さてお嬢さん。これからお主にやってもらいたいことは、この空間を聖なる力で満たすことじゃ。なに、難しいことはない。要は儀式が終わるまで、碧い珠が元に戻るよう祈っていて欲しいのじゃ。だが一つ気をつけることがある。邪念じゃ。人間余計なことを考えまいとするほど考えてしまう。無の境地になることが大事じゃ。もっと詳しく教えてやりたいが時間がない。頼んだぞよ」 そう言うとオルドは祭壇の方を向き、何かを唱え始めた。すると祭壇の回りに円形の模様が現れる。(あれは聖法陣? 初めて見た……) そ