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13.桜鼠 - 3

last update Last Updated: 2025-09-22 11:00:00

 大まかの引越しが済んだ。

 あの個人宅配のお爺さんの息子は運送会社を引き継いでいて、引越し業はしていなくても好意で引越し手伝いをしてくれた。本業が心配になるレベルで何時でも対応してくれる。

「親父から面白い楽器運んだって聞いてさ〜」

「あぁ。わたしのマシンです。これですよ」

 霧香がポストの側でスマホに写ったベースモドキ……命名マシンを見せる。

「はえ ? これ楽器ですか ? 」

「取り付けてある機材はベースなんですよ」

「あー自作楽器ね。ピックアップとコントローラーと弦があれば……音鳴るもんね」

 言えない。この人の良さそうなおじさんの、更に人が良さそうなお父様に、このくっそ重い鉄製のマシンを一往復運ばせたなど。

「ま、頑張りぃや。

 ところで、ここに荷物置きっぱなしでいいの ? ここから上まで距離あるんじゃないの ? 」

 郵便ポストの横、林道に積み上がった四人分の荷物。

「え、ええ。なんか筋トレしたい奴がいて」

「そう。

 ところで楽器やっとるっちゅーたら、ライブとかすんの ? お嬢さん美人だもんなぁ」

「あ、ありがとうございます。

 インスタグラムでKIRIって検索したら出てくると思うんで見てみてくださいね。写真凄く載せてるんで」

「ほぉー写真かァ〜」

 そこへ恵也がやってくる。

「おいちゃん、ありがとうございました。

 こちら、四人分の本日の支払いの方印鑑押しましたんで。週末には振込させていただきます」

「構わんよぉ〜。それもこんな林の入口でいいんかいな ? 

 ま、ほぼ何でも屋みたいな運送屋だからね。何時でも声かけてよ。

 これ、名刺ね。深夜でも早朝でも重量と大きさ伝えてくれればなんでも運ぶよ。

 あ〜、俺何処から来たんだっけ ? 来る時は分かってたのに ! そのうち知ってる道に出るかぁ」

 運送屋はそういうと、帰って行った。

「さてと。ケイ、人が見てないか確認しててね」

「おっけ」

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