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19.リリーホワイト - 1

last update Huling Na-update: 2025-11-09 11:00:00

 霧香と恵也が出た頃、蓮もバイトへ向かう。車のキーがポケットにある事を確認し、玄関の姿見で襟をただす。

 その時、薄らと写り込む背後の人影にギョッとする。

「お前……」

 彩が立ってた。

「何 ? 今日は俺をドッキリさせる動画とか撮ってる ? 」

「え ? いや、違うけど ? 

 俺も出かけてくる」

「こんな朝から珍しいな」

「ミミにゃんから連絡来たから会ってくる」

「へ〜。ミミ……ミミにゃん !!? 」

 蓮が彩の肩を揺さぶる。

「正気か ? まだ何も聞いてないし……って言うか…… ! 」

「一人で女性と喋れるのか ? 」と言うところを慌てて飲み込む。霧香の話では、仕事と割り切った時は案外いけるようだと聞いていたからだ。言ってしまったら急に意識してしまうかもしれない。

「ま、まぁ。なんて言うか。頼むぜ。が……頑張れリーダー」

 蓮の渾身の励ましを聞き流し、どこか上の空の彩だ。

「……あのさぁ」

 彩は眉を寄せ、口をウィっと横に広げて蓮を見上げる。

「『ミミにゃん』って、『ミミにゃんさん』って呼べばいいの ? どうなの ? そう言う社会性、俺知らない」

「あ〜。最初は『ミミにゃんさん』でいいんじゃない ? で、相手が『ミミにゃんでいいですよ』とか『かしこまらなくてください』とか言われたら、後は雰囲気でさ」

「雰囲気……」

 かなり不安そうではあるが、蓮も仕事。ハランは先にシフトに入っている。恵也も霧香もいないのだから仕方がない。これが彩の仕事である。

「気になるけど気が重い」

 蓮は時刻を確認すると、ふらふらと出て行った彩を呼び止める。

「どこまで ? 」

「楓JAPAN芸能の隣のスタジオだってさ」

「 ? ああ、地下

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