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20.躑躅色 - 2

last update Last Updated: 2025-10-04 11:00:00

 撮影も無事終了。

 流石の面子である。

 音源分と動画加工用に二回弾いて計十五曲。ストレートで撮り終わる。

 全員、着替えてメイク落としたら夕食まで休憩だった。

 そして遂に、箱を開ける時が来る。

 夕食後、全員パジャマでスタジオに集合。

 霧香に彩が作った白いガーゼワンピースは天使の様にふわりとした印象が可愛らしい。

 彩はガッツリ霧香を自分色に染めているが、根がズボラな霧香は上げ膳据え膳の生活である。

「いよいよかぁ」

「これで決まらなかったら動画もオフレコになるけど」

 キリとサイが顔を見合わせる。

「早かったね」

「確かに」

 出会ってからまだ一週間程しか経ってないのに。

 もう始動してる。

「音楽の編集は半分頼んでいい ? 」

「うん。出来るよ」

 霧香は彩からデータを受け取る。

 彩がカメラを回し、恵也に合図を送る。

「で ? 皆んなはなんて書いたのかな ? 」

「これ、筆跡でバレるよな ? 名乗って貰った方がいいな」

「誰がどんなイメージでこのバンド名考えたかって楽しみではある」

 箱を霧香が開封する。

 出てきた五枚のメモ用紙。

「じゃあ」

 全員頷く。

 霧香に連動して彩にも緊張が伝わる。つまみ上げた一枚をパッと開き、読み上げながらカメラに向ける。

「まず一枚目 !! 

『ゲテモノゲソ天むす』………アウト !! なにこれ !!? 」

 蓮が挙手。

「『ゲソ』は残した方がいいのかなと……」

「にしても ! にしてもだよ ! 結局、イロモノ感が抜けてない ! 」

「だってお前のベースがもうゲテモノマシンだし。このバンドの方向性がゴシックとか、今日聞いたしさ。ゴシックの世界観にあんなSFみたいな物体ある ? 」

「ぐぅ !! にしても、適当に書きすぎ

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