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8.コーラルピンク-1

last update Huling Na-update: 2025-09-17 11:00:00

 夕食が終わって、ようやく全員解放される。

 霧香の部屋にはシャドウがいるという事で、恵也は自由な時間になったが、どうにも落ち着かなかった。

 パフォーマンスに関しては、客観的にも恵也は意外にも賛成ではあった。

 だが、あくまで自分は霧香の護衛である第五契約者。

 ハランを気軽に住まわせたことは問題か。霧香が実際は誰が好きなのかを考えて行動しないといけないとも思えた。まして霧香の性格では無自覚に愛想を振りまく。魅了魔術と言うのも弊害がある。

    周りが状況を整理してやらないと、「そんなつもりは無かった」と後になってから霧香が悩み、音を上げてしまうような気がして……それが一番心配で仕方がないのだ。

 本当にこれでいいのか ? 

 ヴァンパイアとはいえ、ハランも人外である。

 ハランは本気で加入まで考えて来たのかも、分からない。

 ピンポーン。

 インターホンが鳴る。

 時刻は二十一時。そういえば、今日は最初から蓮が戻ってくる予定だったのだと思い出す。

「ふぇーい」

 玄関を開けると蓮が立っていた。

 護衛としての行動に一瞬、狼狽える。

 勝手に家に入れるのも……しかし蓮は霧香のお目付け役と言う立場だし、仲もいい。

 何よりハランはもう中にいるわけで。

 そんな恵也の様子を知ってか知らずか、蓮は恵也を見てすぐ「おめでとう」と口にする。

「契約したんだな。少し安全になる。ほっとするよ。あいつ、我儘だけどよろしくな」

「い、いやいや。あ〜別にそんな ! うん。頑張るぜ ? 」

 契約者ができる事と言うのは眷属が出来るという事。

 ヴァンパイアにとっては子孫繁栄の次に喜ばしい事なのである。

「ハラン来たんだって ? 強引だったろ 」

「あ〜うん。色々と……」

「あいつ、多分引かないよ ? 加入の事も、散々ゴネるかもな」

「マジで ? 」

 複雑な顔をする恵也に、蓮もどう返せばいいか分からない。

「ところで

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