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5.アイリス

last update Last Updated: 2025-08-08 16:00:00
 タクシーが停る。

『光の里児童養護施設』の古めかしい表札。その門の前で降ろされた。

 門の先は遊具のあるグラウンドになっていて、左に施設と思われる建物と寮がある。

 そしてグラウンドを挟んで反対側に、隣接する住宅地やマンションに紛れるように小さなアパートが建っていた。

 最初からアパートの方に停めて欲しかったと思った二人だったが、アパートの前にあるフェンスは、間違いなく光の里の敷地の境目である。

「……お前、なんか知ってた ? 」

「ううん。だって今日会ったばっかりだし。年齢も聞いてないや。でもお酒絡みの話はしたから、二十歳は過ぎてるよ」

「ふーん。まぁ、今は十八歳までって規定が無くなってきてるらしいからな」

 恵也は門に付いたインターホンを押す。

『はい』

「あ、アパートの方の深浦 彩の友人です。家に招待されてるんですが、敷地に入ってもよろしいでしょうか ? 」

『あぁ !! ええ。どうぞどうぞ〜』

「あざっす !!

 よし、行くぜ」

「あんたちゃんと喋れんだね」

「何それ、酷っ ! ってか、成人して仕事してりゃこんなの普通の事だろ ?

 だいたい喋れねぇサイの方が心配だぜ、俺は」

「そういえば、アバター配信だと流暢に喋ってたね」

「な ! 俺もビビったわ。だってアイツのファン半分以上女じゃん」

「多分、慣れれば……いや、今日見てた感じだと、音楽絡みになると急に壁が無くなる気がする」

「プロ意識ってやつかァ ?

 えーと、201号室ここだな」

 部屋は二階だった。

 表札も何も無いが、部屋に明かりがついてるのは外廊下からでもうっすらガラス越しに見える。

 恵也がインターホンを押すが……

 カシュ ! カシュ !

「うわ、インターホンの音切ってやがんぜ」

「配信の雑音になるしね」

「おーい !! 来たぜー ! サーーーイ ! 」

 トトトト……と、軽い足音がした後、すぐにドアが開いた。

「どうぞ」

「おう。あがるぜ」

「お、お邪魔します」

 古い。第一印象はそれだけだ。

 恵也が玄関を上がり、廊下を歩いて行く。それだけでドッドッと床が鳴る。

「……」

 言葉が出ない。

 台所は別だが、一部屋しかないはずの造りに、ベッドとパソコンしか無い。

 液晶が二台、ハードが床に四台、背景用のスクリーンと簡易照明はデスクに立て
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