車に乗り込むと、とわこはスマホを取り出し、ある番号に電話をかけた。コール音のあと、相手がようやく出た。「三郎さん、こんにちは。とわこです」相手は彼女の声を聞いて、くすりと笑った。「俺の番号、どこで手に入れた?」「奏のLINEにログインして、そこから見つけました」彼女は率直に切り出した。「少しお願いがあるんです」「三千院さん、森の別荘でのことでもう借りは返したはずだ。だから、もうお前の頼みは聞かない」三郎はあっさりと断った。「確かに、あの時で帳消しです。でも今後も絶対に私に助けを求めないと、言い切れますか?」とわこは穏やかに言葉を続けた。「年齢を重ねると、脳の病気のリスクは上がります。その時に私のところへ来てくだされば、無償で治療します」その一言で、三郎の呼吸がわずかに変わった。「それで、俺に何をさせたい?」彼は薄く笑いながら言った。「まさか奏を奪い返すために呼び出せってわけじゃないだろうな?昨夜の剛の屋敷でのお前の醜態、もう噂になってるぞ」「彼に渡したいものがあるんです。だから、三郎さんの家に呼んでもらえませんか」「それだけか?」「それだけです」「いいだろう。今、呼び出してやる」交渉成立後、とわこのスマホに三郎から位置情報が届いた。彼女はそのままボディーガードに転送し、運転を頼んだ。「すごいコネ持ってるじゃないっすか!」ボディーガードが感嘆した。「六人の法則って知ってますか?世界はどんなに広くても、六人を介せば誰とでも繋がるっていう話です」「今なら信じるでしょ?」とわこは答えず、ぼんやりと窓の外を見つめた。「緊張してきた。奏が私を見た途端に帰っちゃったらどうしよう」ボディーガードは心配そうに言った。「恋愛ドラマ見たことあります?」「え?」「うちの嫁が大好きで、俺も付き合って見たんすけどね」ボディーガードは真顔で続けた。「もし奏が話も聞かずに帰ろうとしたら、キスっすよ。とにかくキス。逃げそうになってもキス。女が粘れば男も負けるんす。恥なんか捨てて本気でぶつかれば、絶対どうにかなる!」三十分後、車は三郎の別荘の前に停まった。とわこは無事に屋敷に入り、三郎と対面した。彼は席を勧め、自らお茶を注いだ。「奏は来てくれるんですか?」とわこは落ち着かない様子で尋ねた。「
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