All Chapters of 植物人間の社長がパパになった: Chapter 921 - Chapter 923

923 Chapters

第921話

「分かった」雅彦は頷いて医者を見送った。莉子が深く眠っており、すぐに目を覚ましそうにないのを見て、雅彦は海に言った。「お前も一晩中付き添っていただろう。一旦帰って休め。ここは俺がいるから大丈夫だ」海も徹夜の疲れがピークに達していた。莉子のことが心配でなければ、とっくに倒れていただろう。雅彦の言葉に素直に従い、家に帰った。部屋には桃と雅彦だけが残された。ようやく雅彦は桃の足の火傷に目を向け、眉をひそめた。この女は、どうしてここまで意地を張るんだ……「彼女はもう大丈夫だ。お前の薬を塗ってやる」雅彦は自分の横のスペースを軽く叩き、桃を招き寄せた。桃は近づき、足を椅子の上に乗せようとした。すると雅彦は何の躊躇いもなく、彼女の足首をつかんで自分の膝の上に載せた。この姿勢で急に二人の距離が縮まり、桃の頬が赤くなった。「何するのよ!」「薬を塗るに決まってるだろ!」雅彦は特に深い意味はなく、ふと見上げると桃の耳まで赤くなっているのに気づいた。「どうやらお前、最近だいぶ変なことを考えるようになったな。そんなに足を離されちゃ、薬も塗れないのに、勝手に変な想像をして……」そう言われると、桃の顔は真っ赤になり、恥ずかしさのあまり怒りを覚えた。「じゃあ自分で塗るから、いいわ!」雅彦は桃が逃げようとするのを制し、お尻をパンと叩いた。「じっとしてろ。そんなに動いたら、誰かに見られて余計に誤解されるぞ」桃はこの行動にますます顔を赤らめたが、確かにこれ以上動けばさらに恥ずかしい状況になると思い、大人しくなった。ようやく桃が落ち着くと、雅彦は火傷の状態を確認した。よく見ると、桃の火傷には水ぶくれができ始めていた。このまま放っておけば、破れた時に激しい痛みを伴うだろう。雅彦は慎重に薬を絞り出し、桃の傷に塗った。薬はひんやりとしているが、塗られた瞬間はやはり痛く、桃は思わず「ひっ」と声を漏らした。雅彦は足首を握る手に力を込めた。「今さら痛いとか?さっき処置を受けに行けばよかったんだ」「だって彼女の状態が気になったんだもん」桃は雅彦を睨み、下唇を噛んだ。「彼女の足……きっと治るよね?もし本当に歩けなくなったら、どうするの……」雅彦は眉を上げた。桃の言葉には単なる心配以上の感情が込められているのがわかった。「お前、心配なのはそれだけじ
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第922話

「俺がいつ彼女とそんな関係になった?」雅彦は眉を深くひそめ、桃を見つめて言った。「さっきじゃないの?」桃は言いたくなかった。嫉妬深い女だと思われたくなかったから。でも我慢できなかった。「あんな風に抱きしめて、指切りまでして……」「お前も見ただろう?ベッドから転げ落ちたんだ。傷が開くのを放っておけるか?彼女を落ち着かせるためだった。それ以上の意味はない」雅彦は必死に説明した。桃もそれが真実だとわかっていた。でもあの光景を思い出すと、やはり胸がざわつく。一度きりならまだしも、これから毎日こんなことが続いたら耐えられない。自分の夫が他の女とあんなに親密にするのを見て、平気でいられる女がいるだろうか。「とにかく、これからは気をつけてよね。簡単にそんな重大な約束しないで。じゃないと、あなたの人生を共にする相手は私じゃなくて彼女なのかと思っちゃう」桃はぶつぶつ言いながら、頬を膨らませた。その様子が面白くて、雅彦は彼女の頬をつついた。「ん?この辺り、変な匂いがしないか?」桃は混乱し、同時に腹が立った。真剣に話しているのに、雅彦は変な匂いだなんて言い出す。話をそらそうとしているのだろうか?それとも、莉子と距離を置くことを約束するのが、そんなに難しいのだろうか?桃は突然むっとし、雅彦の膝から足を下ろして立ち上がろうとした。しかし雅彦は彼女の手首をつかみ、ぐいと引っ張った。桃はバランスを崩し、雅彦の太ももの上に座る羽目になった。「離して!」桃は怒って身をよじったが、雅彦が本気で抑えれば力では敵わない。ただ無駄に体をくねらせるだけだった。「桃、この病室、焼きもちの匂いでいっぱいじゃないか? もう焼け焦げそうだよ」雅彦は桃の嫉妬深い様子を面白がっていた。からかわれていると気づいた桃はさらに激怒した。真剣に話し合おうとしているのに、雅彦はまったく取り合わない。今にも爆発しそうな桃を見て、雅彦はからかうのをやめ、後ろから彼女の腰を抱いた。「言っただろう?あれはその場限りのことだ。彼女の治療のためだ。確かに世話はするが、俺にも分別はある。ましてや俺は医者でもリハビリの専門家でもない。24時間つきっきりになったところで、彼女の回復に何の役に立つ?」ようやく真面目に答えてくれた雅彦に、桃も少しずつ落ち着いていった。彼女の怒り
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第923話

「うん、そうだね」桃は頷き、ひとまずその話題を終わらせた。ベッドに横たわる莉子を見ながら、雅彦は考えた。とりあえず介護人を雇うことにしよう。自分と海も面倒を見られるが、男二人で女性の世話をするのは不便だ。それに仕事もあるので、十分な時間が取れない。雅彦がそう言うと、桃は以前母の世話をしてくれた介護士を思い出した。あの方は信頼できる人だ。莉子の世話なら、自分たちがよく知ってる人にお願いするのが安心だ。桃はすぐにそのことを雅彦に伝えた。雅彦も適任者に悩んでいたところだった。この地域に来て日が浅く、莉子の状態も不安定なため、信頼できる人物を見つけるのが難しかった。「長く知っている人なら安心だ。ぜひ来てもらおう」桃は早速その介護士に電話した。以前香蘭の世話をしてくれた時、家族全員と良い関係を築いていた。雅彦が相場の倍の報酬を提示したこともあり、その介護士はすぐに承諾した。しばらくして介護士が到着すると、プロの介護士として手際よく準備を始めた。簡単なマッサージもできると言った。雅彦は彼女の迅速な対応を見て、ようやく安心した。時計を見ると、そろそろ会社に戻る時間だった。「じゃあここはお願いします。私たちは一度会社に戻ります」「お任せください。きちんとお世話しますから」そう言い残し、雅彦と桃は会社へ向かった。車中、二人とも疲れていた。直接的な労働はしていないが、病人の世話は心身ともに消耗する。雅彦は腕を伸ばし、桃を自分の胸に引き寄せた。彼女の目の下にできたクマに指を滑らせながら、「昨夜はよく眠れなかったのか?」と尋ねた。さっきまで莉子のことで頭がいっぱいで、こんな細かいことに気づかなかった。「うん」桃はあくびをした。一晩中悪夢にうなされていた。雅彦が莉子と逃げていく夢ばかりで、まともに眠れるはずがない。「あの日のことが怖かったのか?」雅彦は、銃撃事件の生々しい光景がトラウマになったのかと思った。「違うわ」桃はふんっと鼻を鳴らした。「あなたが莉子を抱いて逃げていく夢を見たの。いくら呼んでも振り向いてくれなくて」雅彦は思わず笑った。どうりで今日の桃は妙にピリピリしていると思った。原因はそこだったのか。「夢は逆だって聞いたことがないか?そんな夢を見るなんて、現実では俺がお前にべた惚れで、どんなに追い払おうと
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