Todos os capítulos de 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Capítulo 1191 - Capítulo 1200

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第1191話

「あなた、早くどうにかして鈴を留置所から出してあげてよ。あの子は今までこんな辛い思いをしたことなんてないんだから」加奈子は可愛い娘のことを思っていた。今高校生の息子もいるが、彼女はそこまで気にかけていない。しかし、彼女の息子は高校にある寮で暮らしていて、しかも三年生だから勉強に忙しい。息子は娘よりも聞き分けがいいのだが、唯一加奈子が気に入らないのはその息子が咲のことを庇おうとすることだった。息子が家にいると、加奈子も咲に対して少し優しくしていて、息子とこのことで喧嘩しないようにしているのだった。「鈴は十五日の勾留期間が終われば出てこられるだろう。今心配しないといけないのは、結城家の若奥様が起訴するかどうかだ」正一はため息をついた。「また謝罪に行かないとな」可愛い娘が引き起こした災いに、正一も焦りを覚えていた。彼が気にしないといけないことは妻よりも多いのだ。妻はただ娘を早く助け出すことしか考えていないのだから。「もう謝罪の品を持って、咲にあの内海って女の店に許してほしいと頼みに行かせたけど、何にもならなかったじゃないの。あの女、うちの鈴をどうしても留置所に閉じ込めておきたいらしいわね。今はただ十五日の勾留っていうだけでも死にそうなくらい心配なのに、あいつが起訴なんかして法的な判決が出たら……」加奈子はそう言いながら、目を赤くしていた。正一は少し黙っていて、口を開いた。「本当にそうなれば、私たちは鈴に良い弁護士を雇って罪を軽くしてもらうしかない。鈴がやったことは確かに良くなかった。まるでヤクザみたいなやり方だぞ……ここ暫くはお前は何もするな。昨日、アニマルパークで起きた子供の誘拐未遂事件、結城家の若奥様の甥子さんが危うく連れ去られそうになったらしい。この件、お前は関わっていないだろうな?」正一は妻の性格をわかっていて、妻に注意した。「軽率な行動を取るなよ、うちの娘がどうなったかしっかり覚えておくんだ。ここは星城であって、結城家、神崎家、九条家が幅を利かせている都市だ。それに東家もな。彼ら四大名家が手を組んで潰しに来たら、お前がまだここでのうのうとすることができるとは思うなよ」加奈子は涙を拭きながら言った。「今何かしようだなんて思えるわけないでしょ。ただ娘を出してあげたいだけよ」「お前が私に黙って何かしてしまわないのが一
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第1192話

咲はその車のほうへ顔を向けて、運転手は一体誰なのか目を凝らして見ようとしたが、やはり視界は真っ暗だった。少しの光は感じ取られるのだが、それでも目の前の光景をはっきりと映し出すことはできない。光は目の前にあるというのに、どうしても自分の目には届かない。「君は毎日歩いて店に行ってるんですか?」低い声が響いた。そして、咲はそれが結城家の二番目の坊ちゃんの声だとわかった。辰巳は義姉である唯花に一度してやられて、咲を花屋に送った時に、咲が彼にお礼をして名前を尋ねていた。辰巳は理仁のように自分の身分は隠さず、はっきりと咲に自分が結城家の若者世代の中で二番目に年上の結城辰巳であると教えたのだった。「結城さん」咲は相手が辰巳だとわかると、いつものあの営業スマイルを見せた。「柴尾家には専属のドライバーがいないんですか?」「います。私にはいないだけです」辰巳はそれを聞いて唇をぎゅっと結んだ。おばあさんが彼に選んだ花嫁候補は目が不自由なだけでなく、可哀想な境遇の娘だった。父親は亡くなり、母親からは煙たがられている。「乗ってください。店まで送りましょう」咲はその場に立ったまま、動こうとせず辰巳に尋ねた。「結城さん、どうしてここに?」辰巳は少し黙ってから口を開いた。「最近になって、この辺りに家を持っていたことを思い出して、数日住んでいたので」咲「……結城家の方ですから、いくつも持っていらっしゃるでしょうね」柴尾家があるこの辺りの高級住宅地は星城でもとても有名だ。お金持ちの多くがここに家を持っている。辰巳は言った。「まあたくさんあります。たくさん買いましたが、住んでいないところも多くて。そういえばここにも買っていたことを思い出して少しの間だけ住んでいるんです。思い出せない家はそのままにしておいて、不動産価格が上がったら売りに出せば儲けになりますしね。乗ってください。雨が降っているから、住宅街から出てもバスを待つには不便でしょう」辰巳は咲に車に乗るよう促した。「それに、あなたの店に行って花を買うつもりだったし」咲は少し迷ったが、彼の車に乗ることにした。咲と辰巳はまだ二、三回しか会ったことがない。いや、辰巳のほうは彼女に会ったと言えるだろうが、咲のほうは彼の素顔を見たことがないので相手がどんな容姿なのかもわからない
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第1193話

辰巳は首を傾げて咲をちらりと見て言った。「君は見えないでしょう。バスが過ぎてしまったら、止めることはできないんじゃないですか」咲はそれに答えた。「バス停近くのある店に警備員さんがいるんですけど、とても親切な方たちで、毎日バスが見えたら私に教えてくれて、私が無事に乗るまで見ていてくれるんですよ」辰巳はその後何も言わなかった。この二人はお互いにまだよく知らない。辰巳は本来、こんなに早く行動を起こそうとは思っていなかったのだが、義姉にけしかけられるような形で理仁と唯花から笑い者にされないようにするためにも、咲に近づくことにしたのだ。しかし、彼は咲のことをあまりにも知らなさすぎる。おばあさんは彼にただ基本的な情報だけくれただけなので、それ以外のことは彼も全く知らない状態だ。相手を知らず、まだ出会って間もない時期なので、特に話す話題が見つからなかった。店までの道、男は運転に集中し、女は車に流れている音楽に集中していた。車が止まった時にはすでにブルームインスプリングに到着していた。辰巳は横を向いて咲に言った。「柴尾さん、花屋に着きましたよ」咲は「そうですか」とひとこと言って、シートベルトを外すと、座席の下に前のめりになり傘を手に取った。そして手探りでドアの取っ手を触って開けると慎重に車から降り、傘を開いた。しかし、彼女はこの日車に乗せてもらって店まで来たので、降りた瞬間自分がいる位置がいまいちよくわからなかった。それでその時、彼女は傘を持ったまま立ち呆けていて、どうしたらいいかわからないようだった。目の不自由な人は、自分がよく知っている場所であれば自在に動くことができるものだ。彼らの生活も普通は急激に変化することはない。しかし、一旦いつもと違う状況になると、方向感覚を失ってしまうのだった。咲は普段、バスに乗って来るので、店の付近のバス停で降りると、どの方向へ行くのか、どのくらい歩けば店に着くのか、すでに頭に刻み込まれていて、普通道を間違えることはないのだ。この日は辰巳が彼女を店に送ってくれたので、彼女は彼が車をどの辺りに止めたのかわからない。車を降りてから左に行けばいいのか、右に行けばいいのか、それともまっすぐ進めばいいのだろうか?咲は最初少し取り乱した様子だったが、すぐに冷静な状態に戻り、探るようにそのまままっすぐに
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第1194話

「柴尾さんは、行動する時は目が不自由な人には全く見えませんね」咲はその棒を元の場所に戻すと、淡々とした口調で言った。「慣れていますからね。この店ももう何年も経営しています。毎日同じことをするから、もうすっかり慣れっこなんです。身体が勝手に動いてくれる感じですかね」店を開けると、咲は白杖を置き、慣れた手つきで店の中に置いてある鉢植えたちを外の店の前に並べ始めた。「結城さんは、本日はどんな花をご所望ですか?」咲は花を運びながら辰巳に言った。「結城さん、ゆっくりご覧ください」辰巳は彼女がたくさんの鉢植えを運んだ後、やっと客として見ているのはやめて彼女のほうへ手伝いに行った。花屋の前に並べなければならないものを全て運んであげた。花の植木鉢には花の名前が書いてあった。しかしそれは紙に書かれているものではなく、木の小さな板に刻まれていた。板に刻まれてあれば、咲が指でそれに触れた時に、お客がどの花を気にいったのかすぐにわかるのだ。「君は目が見えないから、このような商売をするのは不便でしょう」「不便であっても生きるためには続けないといけないので」その咲の口ぶりはやはり淡々としており、一切の波も立たない穏やかなものだった。辰巳は咲を見ていた。彼女はとても美しい顔をしている。ただ顔が他の人よりも少し小さめで、その小さな顔に大きなサングラスをかけているものだから、余計に顔がちっちゃく見えた。彼女は名家出身のお嬢様であるというのに、このように普通の生活を送っている。彼女は店を開けて商売しないと生きていけないと言うのだ。柴尾家は彼女に生活費も渡していないのか?「柴尾夫人は君の血の繋がった母親ですか?」辰巳は我慢できず彼女にそう尋ねた。咲は少し黙ってから、その質問に答えた。「実の母親でなければよかったんですけどね。ですが、残念にも実の母親なんです」「母親が君にこんなに冷たく当たるんですか?」柴尾咲は家で可愛がられることがないだけでなく、使用人以下の扱いを受けていた。家の中ではまるで透明人間のようだと、あの高級住宅地で暮らす者で知らない者などいないのだった。この時辰巳がわざわざ尋ねるまでもなく、咲が親から愛されていないということは聞いたことがあった。咲はあるテーブルの前まで行くと、ケトルとティーポットをそこに置いた。
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第1195話

弟が咲に対していつも優しくしているのが気に食わないため、鈴は母親に弟を全寮制の学校に送らせて、家で鈴と弟の会う時間をできるだけ減らしたのだった。このようにしても、弟はやはり咲に対して優しく接していた。咲よりも九歳年下の弟は、いつも自分を責めていた。それは、咲が病気になったと知ったのに、両親に病院に連れて行かせるよう動かすことができず、彼女が最終的に失明してしまったからだ。この家庭において、咲は弟から族の温かさというものを受け取ることができた。辰巳は咲が無感情に平然とした口ぶりで話すのを聞いていて、心がズキッと痛んだ。いつの間にか彼女に対して自分のことのように心を痛めるようになっていた。恐らく、咲は初めからおばあさんが彼に花嫁候補として選んだ女性だったからだろう。辰巳は咲のことをすでに自分の妻だという目線で見ているのだ。「苦しみの後には、きっと幸せな時が待っていますよ」辰巳は優しく落ち着いた声でそう言った。咲は彼に笑顔を見せた。「結城さん、私のことを可哀想だとか思わなくていいんです。確かにひどい扱いは受けてきたけど、それでもここまで一応育ててはくれましたから」親がもう一歩のところで彼女の命を奪おうとしたことはあるが……「どの花にするか決められましたか?」咲は話題を変えた。咲と辰巳は仲が良い友人というわけでもないし、彼とはあまり自分のプライベートな話をしたくない。「仕事場まで送ってあげたので、そのお代として花束をください」咲「……」咲はまさか辰巳から花束でここまで送ったお返しをしてくれと言われるとは思っていなかった。彼女は今まで異性に花束を贈ったことはない。咲は少し悩んでから、すぐに辰巳にあげる花束の制作に取りかかった。「真っ赤な薔薇とカスミソウの花束をください」咲は少し黙ってから口を開いた。「結城さん、私が贈る花束に、薔薇はちょっと良くないのでは」「うちの義姉さんがここで薔薇の花束を買って、うちの従兄にプレゼントしていました。彼は俺の前でこれでもかと、のろけてきたんですよね」「それで、あなたは私から薔薇の花を受け取って、それをまたその方に見せつけに行きたいと?」辰巳は彼女に聞き返した。「駄目ですか?」咲は辰巳のお嫁さん候補であり、結婚する確率が高い。妻が夫に薔薇の花束を
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第1196話

今はまだ辰巳と咲の物語は始まってさえもいない。いや、彼は始めようとしているのだが、咲のほうがそれを全く知らないのである。彼女が彼に薔薇の花を贈ろうとしないのは、まあそれは理解できないことではなく、仕方のないことだ。「この花束も綺麗ですね。ありがたく柴尾さんから贈られた花を受け取ります、ありがとうございます」辰巳は花束を受け取って、その美しさを堪能してから咲にお礼を言った。花束を抱きかかえて咲に「柴尾さん、俺はこれから仕事に行ってきます」と言った。花屋を出て、自分の車の前まで行き、助手席のドアを開けてその花束を座席に置いた。それから店へ振り返ってちらりと咲を見てから、車に乗って去っていった。咲は静かに店の前の様子を耳で聞き取り、車が動いて去って行ってからホッと一息ついた。なんだか結城家の坊ちゃんは彼女にやたら構ってくるような、そうじゃないような。つまり、彼女に興味があるような感じだ。きっと目の不自由な人間に初めて出会ったからだろう。咲は辰巳が彼女のことを気に入ったとは全く考えなかった。それは彼女が目の見えない女性だからだ。辰巳は咲にもらったあの花束を持って結城グループに出勤した。車を降りると、花束を抱えてそれを目立つように持ちながら、オフィスビルへと入っていった。誰かに会うたびに、彼は自分から挨拶をしていた。社員たちは、副社長は今日何かに憑りつかれでもしたのか?と思っていた。花束を抱えている彼は花よりもキラキラと輝いた笑顔を見せていた。そして辰巳はわざわざ理仁のオフィスまで行った。理仁は頭を上げると、辰巳が花束を抱えて入ってきたのを見て、その黒い瞳に少しだけ笑みを含ませていた。辰巳が入って来てすぐ座ってから、理仁はからかうように言った。「動き始めたのか?絶対に言うことを聞かないんじゃなかったのか?奏汰と結婚から逃げるためにアフリカまで逃げようと計画していたのでは?」奏汰の拒否反応が一番強い。彼はおばあさんは贔屓していると思っているのだった。彼には男装女子を選んだ。玲は奏汰よりももっと男前なのだ。奏汰は金を積んで悟に白山玲について細かく調査してもらった後、苦しそうに理仁におばあさんは不公平だと愚痴を吐きに来たのだった。辰巳と一緒に結婚を避けるためにアフリカまで逃げて、おばあさんを後悔させてやるとグチグチ言っていた。
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第1197話

辰巳は理仁の話に興味津々で尋ねた。「名医だって?目の治療もできる?」「できると思うぞ。じゃないと名医って呼ばれないだろう」辰巳はまた尋ねた。「その人は今どこにいるかわかる?人を寄越して来てもらえるかお願いしてみよう」「以前、A市の音濱に現れたことがあるらしい。だけど最近はあそこにはまたいないらしい。聞いた話だけど、その名医の元で教わっていた医者が桐生家の新君とは近い間柄らしいが、弘毅君のほうとはあまり仲はよろしくないらしいぞ。善君に聞いてみたらいい。その名医に教わったと言う医者の名前は確か酒見(さけみ)さんと言って、かなり凄腕の女医らしいぞ。彼女と望鷹市の篠崎家当主の奥さんは以前、望鷹に赴いて篠崎家の一番のライバルを解決したらしい。どちらにせよ腕は確かだ。酒見さんの医術も武術もすごいとか。あ、そうだそれから危険な薬品の取り扱いも上手いらしいぞ」もちろんその酒見という女性は医者であるから、人を救うことを主にしている。彼女が危険な薬品の取り扱いに長けているとはいえ、それで人を傷つけることなどしないのだ。「そんなにすごい人物なら、お願いするのは難しそうだな」理仁は言った。「誠意をもって接すればいいだろう。一度お願いしてみて無理なら、二度目、三度目と何度だって頼んでみればいいさ。だけど、あの有名な名医は今は表に出てこないみたいだな。全て彼のよくできる教え子である酒見さんが人の病気を治しているらしい。辰巳、柴尾さんの目の治療をする名医を探したいなら、まずは彼女が病気で失明したのか、それとも何か毒でも盛られてああなったのかはっきりと調べるんだ。今彼女の生活環境は安全なのか?」辰巳は言った。「義姉さんが、彼女は病気で失明したって言ってたけど」理仁は辰巳をじっと見つめて、辰巳は咲に対してまだ本気で気にかけてはいないと思った。今は単純に好奇心から来た新鮮な感じを味わっているというところだろう。もし本気で彼女のことを気にかけているのであれば、もっと深くまで理解しようと、咲が心の奥底に隠している秘密も深堀りしようと思うはずだ。これは辰巳の結婚に関することだから、理仁は結局自分のその考えは言わずにいた。辰巳自身にゆっくりと拒絶されたり挫折したりを味わわせて、その都度気づいていかねばならないのだ。理仁もまた痛い目や挫折を散々味わって、やっと今唯
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第1198話

恭弥が連れ去られた件は、いい教訓となった。英子は当時、騒ぎが起こると、そちらのほうに気を取られてしまい、息子から目を離してしまって、恭弥が連れ去られることになってしまったのだ。それに気づいた時には、恭弥はすでに遠くまで連れて行かれた後だった。佐々木父と母の二人、それから英子一家の三人、佐々木俊介も一緒に来ていた。ただ莉奈は英子と仲が悪く、また恭弥という親戚の子供を嫌っていて、自分の心に背いてまで彼らと一緒に来ることはしなかった。実際は、莉奈は後ろめたい気持ちがあったからだ。彼女は唯月たち姉妹に対面するのが怖かった。内海姉妹が彼女のその後ろめたい気持ちを見透かし、あの事件は莉奈のせいじゃないかと疑ってこられるのが心配だったのだ。「陽ちゃん、おいで、抱っこしてあげるわ」姫華が先に陽に手招きした。陽はずっと綺麗な姫華のことが大好きだったので、すぐにまだ組み立てていないレゴブロックを片付けて、姫華の前にやって来た。そして両手を広げて姫華に抱っこしてもらったのだった。「まだ完成してない?」姫華は優しい声で尋ねた。陽は顔を左右に振って言った。「あずまおじたんがじかんがないから、おじたんに教えてもらわないと、できないよ」母親も陽と一緒にレゴを手伝うことはできなかった。それを聞いて姫華は笑って言った。「私は小さい時にたっくさん遊んだことがあるのよ。教えてあげようか」「うん、いいよ」陽は幼い可愛らしい声でそう返事した。姫華が陽にレゴの組み立てを教えてあげている時に、佐々木家の面々が結城家のボディガードに連れられて店に入ってきた。唯花の本屋は今ボディガードまで配置されている。佐々木家はこの時、本当に唯花の身分も地位もまったく変わってしまったと実感させられたのだった。昔、彼らは唯花のことを嫌っていたが、今は彼らには到底追いつくことのできない雲の上の存在となってしまった。「唯花さん」この時英子が率先してやって来た。今回は彼女が唯花に息子を救ってくれたことへのお礼をしに来たのだから当然のことである。「唯花さん、私たち、あなたのお邪魔にならないかしら」英子はニコニコと笑みを作っていた。彼女のこのように輝く善意に満ちた笑顔を唯花はここ十年は見たことはない。唯花が初めて姉と一緒に佐々木家に挨拶に行った時、英子は
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第1199話

「そうよ、唯花さん、昨日は本当にありがとう。あなたがいなければ、恭弥と陽ちゃんは今頃……この二人に何かあったら、私も生きていけないわ」佐々木母も英子と同じく唯花にとても感謝していた。唯花は「おばさん、英子さんも昨日もうお礼をしてくれましたよね。陽ちゃんは私の甥だから、守るのは当然のことですから」恭弥もクソガキとはいえまだ子供だから、彼女も見て見ぬふりをすることなどできなかった。あのような状況で、自分に何かできることがあるなら、誰だって無視するようなことはしないだろう。「昨日のお礼だけじゃ足りないわ。唯花さん、お時間はあるの?私たちあなたを誘って食事したいと思ってるのよ」英子は笑顔で尋ねた。「あなたのお姉さんも呼んでさ、あなた達二人にご馳走したいわ。そうだ、それからお宅のボディガード二人って外にいるあのお二人かしら?彼らにも直接お礼をしなくちゃ」「英子さん、食事は結構です。ボディガードは確かに外にいる二人ですよ。田村さん、中野さん、入ってきてちょうだい」ボディーガードに頼んで恭弥の救出に向かわせたのは唯花だ。しかし、実際に恭弥を救い出してくれたのはあの二人のボディーガードだから、佐々木家は直接彼らに礼をするべきなのだ。ボディーガード二人は唯花に呼ばれると、外から店の中に入ってきた。「若奥様、お呼びでしょうか」二人は礼儀正しく唯花の呼びかけに答えた。唯花は言った。「こちらの一家があなた達二人にお礼を言いたいんですって。昨日はあなた達のおかげで恭弥君が助かったんだからね。ここにある物はあなた達に対する感謝の気持ちだそうよ。受け取ってあげてちょうだい」佐々木家が持って来たお礼の品を唯花は受け取りたくないのだ。しかし、佐々木家に金を使わせたこの機会を逃したくはないので、恭弥を助けた張本人であるこの二人のボディーガードにあげてしまおうと考えたのだった。「あなた達は命の恩人です。昨日は本当にありがとうございました」佐々木家は二人のボディーガードに自らきちんとお礼の言葉を述べると、持って来た物を半分ボディーガードたちに渡し、残り半分を唯花に残しておいた。そして英子はのし袋を取り出し、唯花とボディーガードたちに渡そうとしたが唯花はそれを拒否した。しかし、彼女は英子からの感謝の気持ちをボディーガードたちに受け取らせた。少し
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第1200話

唯花の田舎の村で、内海じいさんたちは隆史が自分たちの実の息子ではないというでたらめを広め、それは十分みんなに広まっただろうと思い、今日待ちきれずに唯花の元へとやって来たのだ。「あんたら、何の用なのよ?」佐々木母は内海じいさんのことをまるで仇のように見ていた。以前内海じいさんが彼女のお金を受け取ったくせに、何もしなかったからそれを返せと言いに行ったことがある。彼はそんなのは受け取っていないと死んでも認めようとしなかったので彼女は相当に頭にきていたのだ。それで内海じいさんが息子や孫たちを連れてやって来たのを見ると、佐々木母は冷ややかな顔をして怒りに燃える目を彼に向けていた。「この死にぞこないのクソじじい。また唯花さんの評判を落としに来たのかい」内海家がわざと騒いできたことを、佐々木母も聞いて知っていた。彼女は裏で、夫と内海家は本当に恥知らずの厚かましい人間だと話していた。十数年前に唯花たちの両親が事故死した際に支払われた賠償金のほとんどを持っていったうえに、唯月姉妹を家から追い出したのだ。姉妹は家があるというのに帰ることができず、この二人を一日も世話したことがないくせに、彼女たちの両親の家を占領している。そして今、唯花があの結城家の御曹司と結婚したことで、唯花から彼らの老後用の巨額な資金をいただこうとまで考えているのだった。本当に人として恥の極みである。「あんたらこそ何しに来たんだ?お宅の息子と唯月は離婚したってのに、毎日のように唯花のところにいびり立ってるんか?唯花から美味い汁でも吸いたいんだろう?」内海じいさん側も佐々木家には好感を持っていない。俊介と唯月が離婚してから、佐々木家はいつも唯月の邪魔をしに来ていたことを内海じいさんたちも知っていた。佐々木家が唯月姉妹には金持ちの伯母がいると判明して、唯花が玉の輿に乗ったので、それで後悔し始めたのだろう。もう一度唯月との関係を修復して結城家のサポートを得たいと思っているのだ。彼ら内海家と唯花姉妹は血の繋がりがあるのに、今までずっとその恩恵にあずかっていない。それなのに彼らを差し置いて、佐々木家が良い思いができるとでも?「一体どこの誰があんなに厚かましく、恥知らずなんだろうねぇ。息子や孫たちを引き連れちゃって、恥ずかしいったらありゃしないよ。機嫌を取って自分らの利益しか考えて
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