真奈の言葉を聞いて、会議室の空気は一瞬にして重くなった。誰もが顔を見合わせ、沈黙が広がる。これが他の人間ならまだしも。あいにく立花だった。以前、立花グループが海城で開いたあの晩餐会のことが頭をよぎる。この中には参加していた株主も少なくなく、あの時の出来事は、ある意味、立花に弱みを握られているも同然だった。もしこの場で立花を怒らせ、当時の映像でもネットに流されたら――信用を失うどころの話ではない。社会的に終わるかもしれない。その時、冬城おばあさんが鼻で笑った。「真奈、頭がおかしくなったんじゃない?彼は洛城の人間よ。どこまで手が届くっていうの?それに、我々冬城グループはすでに石渕美桜を新しい社長に決定しているの。今さら乗り込んできて何のつもり?」「でも、決定しただけでしょ?皆さんが同意すれば、解任も可能ですよね?」そう言いながら真奈が視線を向けると、周囲の株主たちは押し黙ったまま、目を逸らしたり、曖昧に頷いたりするだけだった。その様子を見て、冬城おばあさんはかえって笑い出した。「真奈、本当に狂ったの?我々がすでに美桜を社長に決めたのに、なんで解任されるのよ?たとえ立花が司の45%の株を持っていたとしても、それがどうしたの?過半数を超えていなければ、冬城グループの社長を解任する権限なんてないのよ!」「大奥様、そんなに早く否定なさらなくてもいいのでは?確かに立花社長は45%の株をお持ちですが、私たちは他の株主のご意見も伺っております。他の方々が賛成してくだされば、石渕さんの解任も自然な流れになると思いませんか?」「馬鹿なことを言わないで!我が冬城グループの人間が、あなたの言うことなど聞くものか!」冬城おばあさんは、冬城グループの激動の歴史をくぐり抜け、これらの株主たちと長年築いてきた強固な信頼関係を誇っていた。どの株主も、真奈ごときに翻意させられるはずがない――彼女はそう信じて疑わなかった。だが、その予想はあっさり裏切られる。真奈はゆっくりと、ある株主の背後に歩み寄ると、静かに口を開いた。「柴田(しばた)理事、立花社長がお尋ねです。石渕社長の解任について、あなたは賛成されますか?それとも、反対ですか?」柴田は一瞬で顔色を変え、ごくりと唾を飲み込んだ。真奈の放つ圧力に押されるように、ついに口を開いた。「……賛、賛成……賛成で
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