その時、立花家の中。「兄さん!今日どれだけ怖かったか、兄さんには絶対に想像できないでしょ!あいつら、本気で私たちの命を狙ってきたのよ!何人も行方不明になってるし……早くパパに言って、全員捕まえてもらってよ!」福本陽子は福本英明の腕を掴んで泣きついた。福本英明はというと、福本陽子に引っぱられてすっかり頭がぼんやりしていた。深夜、眠りの最中からたたき起こされた時点でかなりまいっていたが、それ以上にこたえたのは、福本陽子が耳元でまくしたてる内容があまりに支離滅裂で、何が起こったのかまるで把握できなかったことだった。「兄さん!お願い!お願いってば!」福本陽子が彼の腕を揺さぶると、福本英明はたまらず声を上げた。「ストップ!ちょっと待て!」完全に目が覚めた福本英明は、ため息まじりに言った。「なあ、お姫様。せめてそのあいつらが誰なのか教えてくれないか?」さっきからずっとあいつら・あの人たちばかりで、もう三十分も聞いてるのに、いったい誰の話なのかさっぱりだ。福本陽子は言った。「首謀者は綾香よ!」「彼女はどうなったんだ?」「……死んだわ」「じゃあ他の連中は?」「分からない」福本英明はソファにばたりと倒れ込んだ。「兄さん!」「俺は神様じゃないんだっての!黒澤や立花でも見つけられないような連中を、俺が見つけられるわけがないだろ!」妹の期待が高すぎるにもほどがある。たとえ福本信広が生きていたとしても、あの連中の正体まではわからなかったに違いない。二階では、立花が寝室から姿を現した。彼は冷えた表情で言い放つ。「話したいなら部屋でやれ。俺の睡眠を邪魔するな」「戻ってきたばかりじゃない?もう眠いの?」今夜の出来事があまりに衝撃的だったせいで、福本陽子はまったく眠れる気がしなかった。そういえば、以前は立花が夜に眠っているところなんて一度も見たことがなかった気がする。「余計なお世話だ」立花は言った。「これ以上うるさくするなら、お前の口、縫い付けるぞ」そう言い捨てると、立花は踵を返して部屋へと戻っていった。福本英明は今、心の底から立花に感謝していた。一刻も早く寝たい気持ちでいっぱいの彼は、福本陽子の手の甲をとんとんと叩きながら、諭すように言った。「陽子、今日は怖い思いをしたんだろ。話は明日にしよう。明日
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