海外の黒澤家の屋敷。――バンッ!黒澤は勢いよく書斎の扉を押し開けた。あまりの音に黒澤おじいさんは髭を逆立て、目をむいた。「お前……俺を驚かせて殺す気か?!」真奈は隣の黒澤の脇腹をそっと肘で突いた。ちょうどその時、幸江は調子よく黒澤おじいさんのそばへ駆け寄り、甘えるように言った。「おじいさん、ずっと会いに来られなくて寂しかったでしょう?」「来るたびに厄介ごとを持ち込むくせに」黒澤おじいさんは、部屋に入ってきた四人をざっと見回して言った。「で、今日は何の用だ?」黒澤は手にしていた三つの宝石を机の上に並べた。「買収する気か?それとも鑑定でも頼みに来たのか?」黒澤おじいさんは最初こそ大して気に留めず、何とはなしに視線を落としただけだった。だが黒澤の張りつめた表情に気づき、老眼鏡を指で押し上げ、改めて机上の三つの宝石をしっかりと見据えた。見た途端、黒澤おじいさんの顔色がさっと変わった。机上の指輪を手に取り、細かいところまで確かめるように眺めてから問いかけた。「……で、これはどこで手に入れた?」「バラバラ。一つは遼介が競り落としたもの、もう一つは冬城おばあさんから半ば騙し取ったもので、残りの一つは佐藤家からの新婚祝いだったの」幸江が横で説明していると、黒澤おじいさんが不思議そうに顔を上げた。「冬城家から?冬城家に、これがあるはずがないだろう」真奈は首を振った。「詳しいことは分かりませんが、冬城おばあさんの秘蔵の宝石だったみたいです」黒澤おじいさんは、少し昔を思い出すように息をつきながら言った。「この指輪はな、昔は瀬川家、黒澤家、伊藤家、それから佐藤家がそれぞれ一つずつ持っていた。四家の結びつきの証だ。先の世紀には王室が身につけていたような宝石で、有名な職人が極上の原石から四つだけ切り出した。世界にこれらしか存在しない」真奈は眉を寄せた。「つまり……この指輪は四家だけが持っていたものですか?じゃあ冬城家の指輪は……どこから来たのでしょう?」黒澤おじいさんは言った。「俺も父から話を聞いただけで、四つすべてをこの目で見たわけじゃない。知っているのは、うちの家に代々伝わっていた指輪だけだ……だが、それももう見つかっておらん」「黒澤家の宝石は行方不明で、今きちんと残ってるのは佐藤家の分だけなんだよ」伊藤は言った。「ってこ
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