空はどんよりと曇り、浅井は出雲の家でテレビのニュースを見て、落ち着かない様子を見せ始めた。なぜなら、彼女は冬城だけでなく、冬城おばあさんそばにいる小林も見たからだ!このニュースが流れると、各メディアは一斉に騒ぎ立て、小林が真奈に代わって、次の冬城夫人になるのではないかと推測し始めた。浅井は目を伏せ、ふくらみ始めた自分の下腹を見つめた。あのくそババア、きっと自分の代わりに小林を冬城家に入れようとしてるに違いない!いや、彼女はそれを許さない!目の前にいる出雲は、狂気そのものだ。こんな男のそばにいては、自分の命がいつどうなるかも分からない。もし将来命を保ちたいなら、やはり冬城に頼るしかない。浅井は悔しそうに唇を噛みしめた。その時、浴室の扉が開き、出雲が姿を現した。浅井はその姿を目にした瞬間、思わず身体を引いてしまいそうになった。だが、今は自分で道を切り開かなくてはならない。浅井は気持ちを抑え、恐る恐る探るように声をかけた。「蒼星……もう何日も家に帰っていないの。お父さんに会いたくて……少しだけ、帰ってもいいかしら……」出雲は冷ややかに笑った。「また何か企んでるんじゃないのか?」「そんな、私が何か企むなんて……そんなことできるわけないじゃない。ただ、家に帰りたいだけなの…」「もし田沼会長の前で、俺がひどいことをしているなんて吹き込もうとしているなら、やめておいた方がいい」出雲は冷たく目を細め、声を潜めながら言い放った。「お前の秘密は、すべてこの手の中にある。たった一言でも漏らしたら――その時、お前の運命はひとつしかない」浅井は恐怖を必死に押し殺しながら、静かに言った。「蒼星、本当に考えすぎよ。私があなたを裏切るなんて、そんなことできるはずがない。私の秘密は全部、あなたの手の中にあるんだから。もしそれを漏らしたら……命が危ないのは私の方よ」「分かっていればいい」出雲は表情ひとつ変えず、ゆっくりと服を着替え始めた。彼の目に映る浅井みなみは、ただの道具に過ぎなかった。使える間は利用し、もしも言うことを聞かなくなれば――壊して捨てる。そしてまた新しいものに取り替えればいい。ただそれだけのことだった。浅井は唇を噛みしめながら、恐る恐る尋ねた。「蒼星……それじゃ、私……帰ってもいいかしら?」「行きたければ行けばいい
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