会議室の扉がその時押し開けられ、白井が屈強なボディガードたちに囲まれて姿を現した。白井は白いロングドレスをまとい、腰まで届くまっすぐな髪を垂らし、名家の令嬢らしい穏やかで上品な気配を余すことなく漂わせていた。真奈が白井の姿を見るのは久しぶりだった。最後に顔を合わせたのは、自分と黒澤の婚約披露宴の場だった。いま白井は人々に囲まれながら、黒澤の正面に腰を下ろした。辰巳が白井のそばに進み出て言った。「綾香こそ、我々が認めた後継者だ!」「そう、綾香は白井社長の娘であるだけでなく、金融と経済を専攻し、学業も常に優秀だった。黒澤様よりふさわしいのは明らかだ」「そもそもお前は部外者にすぎない。白井社長を死なせていなければ、こんな地位に長年居座れるはずがないだろう」人々は口々に言い募り、その声には黒澤への軽蔑が色濃く滲んでいた。以前なら、誰も黒澤に向かってこんな物言いはできなかった。しかし今は違う。福本家という大きな後ろ盾を得て、どんな無茶をしても尻拭いをしてくれる存在ができたのだ。人々の高圧的な態度に、真奈は思わず眉をひそめた。口を開こうとした瞬間、黒澤がその手首を押さえる。落ち着き払った様子からして、すでに手を打ってあるのは明らかだった。案の定、数人の弁護士が会議室へ入ってきた。弁護士の登場に、株主たちは不満げに声を上げる。「黒澤様、これは一体どういうことだ?」黒澤は静かに言った。「全部出してもらおう」「はい」弁護士たちはいくつもの封筒を机の上に並べ、代表の一人が口を開いた。「こちらは白井社長の遺言書、それから名義になっている全財産の分配に関する書類です。社長が臨終の際に署名したもので、この二人がその公証人になります」「遺言書だと?そんな話、聞いたこともないぞ!」周囲の者たちは凍りついた。白井家で長年勤め、いわば古参と呼べる立場にありながら、白井社長が亡くなった時は口頭で後継者を黒澤に指名したとばかり思っていたからだ。当時、黒澤は容赦ない手腕で素早く動き、白井家の傍流や反対する者を次々と処分した。だからこそ誰も表立って口を出せずにいたのだが、まさか白井社長が遺言書を残していたとは思いもしなかった。「これは俺に関わることだ。お前たちにいちいち説明する必要はない」黒澤はゆったりとした口調で続けた。「
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