All Chapters of (改訂版)夜勤族の妄想物語: Chapter 271 - Chapter 280

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4. 「異世界ほのぼの日記2」89

-89 餌やりと新たな招待客- ハーフ・ヴァンパイアの一言に焦りの表情を見せる母親、自分の娘の腹の底が未だに見えない光は一気に酔いが冷めてしまった様だ。 自棄になってしまったのだろうか、辺りを見回して酒のお代わりを求めていた。店のオーナーも同様に感じていたので席に戻って一緒に呑む事にした、ただ主役が欲しがっていた石焼ビビンパの事はすっかり忘れてしまっている。 しかし問題はなかった、ピューアが酒が進んで石焼ビビンパの事はすっかり忘れてしまっていたからだ。好美「助かりましたね、石鍋温めるの結構時間かかるんですよ。」光「ただね、さっき追加したご飯も下手したら・・・、じゃない?」好美「流石に20升はすぐに無くならないでしょう。」 心配する2人をよそにまだ飽き足らない女子高生達は釜の中の白飯をどんどん胃袋へと入れていく、今度はおかずが足らなくなって来た。 流石に美味しい物でもずっと食べていたら飽きて来るだろうと、流石に時間が解決してくれるだろうと待っていたのだが一向に2人の箸は止まらない。それどころかペースアップしている様に見える。 どうやら別席で焼肉をしながら2人の光景を見ていたナルリスが自分達の席に呼んで焼肉を食べさせていたらしい、飽きが来ないように予め味変を用意していたのだ。 焼肉のたれは甘口と辛口を用意しており、また塩だれに味噌だれまで。これは流石に飽きが来る訳が無い。 まさかの山葵まである、これはまた炊飯する必要があるのではなかろうか。光「ナル、まだ食べさせる気?この2人どんだけ食べたか分かってんの?」ナルリス「今日くらい良いじゃないか、祝いの席だぞ。」光「だからって・・・、田んぼ何反分なの・・・。」 全てガイの田んぼで育った物(の『複製』)なので地元産、不味い訳が無い。しかも全て炊き立ての最高の状態だからなおさらだ。 黙々と食べる女子高生達は焼き肉のスタイルが違っていた。ガルナスはご飯にタレを付けた肉をバウンドさせるタイプ、対するメラは肉でご飯を巻くタイプであった。ただ共通して言える事として2人は20升分の白飯を我が物の様に取り合っている、その光景を楽しそうに吸血鬼が眺めて肴にしていた。日本酒の熱燗が入った盃を片手に笑い続けている、一応目の前の漬物をつまみながらだが殆ど必要なさそうな様子だ。 もう調理場で料理を作る気も起きなかっ
last updateLast Updated : 2025-07-08
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4. 「異世界ほのぼの日記2」90

-90 洗い物の事実- 時刻は23:30、結愛との再会を果たした主役の人魚はしっぽりと呑みだした。流石に呑みすぎたかと感じた客たちはピューアに一言告げて帰って行った、ただ未だ女子高生達は白飯を食べ続けている。 そんな中、まさかの厨房呑みをしていた好美と光は大量の食器類と対峙していた。こうなる事は予想していたが流石に食洗器だけでは追いつかない。 しかし心配は無用だった、ここは日本ではなく異世界なので異世界らしい解決方法がある。白飯をずっと食べ続けていた人魚の妹が指を1本動かして大きな水泡の様な物を出した、よく見てみるとスライムだ。メラ「汚れならこの子が食べてくれますよ、放り込むだけでオッケーです。」 人魚特有の『メイクスライム』と言う魔法らしく、ダンラルタ王国に住む人魚族は大抵使えるらしい。ただ食洗器が気に入ったのか店での業務中にピューアが使わなかったので好美は初めて知った、かなり便利な物の様だ。 全ての洗い物を放り込まれたスライムは体内で汚れを消した(いや食べた)後、丁寧に乾燥まで終わらせて綺麗に皿を整理整頓して並べていた。 好美は正直このスライムを雇いたくなった、しかしその思いと裏腹にメラは魔法を解除してスライムを消してしまった。好美「あ・・・。」メラ「どうしました?」好美「いや、別に大丈夫。」 今思えば自分には『作成』がある、早速『メイクスライム』を『作成』して見様見真似で指を動かしてみた。 指先から出始めたスライムがどんどん大きくなっていく、そして最大のサイズになった瞬間に指先から離れて独りでに汚れた皿を探していた。 幸い、未だ白飯を食べていた女子高生達が茶碗やおかずの皿を重ねていたので迷わずそっちの方へいったのだが。メラ「このスライム、お姉ちゃんが出したの?」 話に夢中なのかメラの言葉はピューアの耳には届いていない、それどころか2人の会話の声量はどんどん大きくなっていく。結愛「だろ?そんでうちの光明がよ・・・。」ピューア「何それ馬鹿みたーい。」メラ「お姉ちゃんたら・・・。」ガルナス「良いじゃないの、誕生日位楽しませてあげようよ。」 好美は未だに首を傾げるメラの方へ近づいて行った、そろそろ自分がスライムを出した事を伝えるべきだと思ったからだ。好美「ごめん、紛らわしい事して。私がスライムを出したの。」メラ「あれ、好美
last updateLast Updated : 2025-07-08
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4. 「異世界ほのぼの日記2」91

-91 深夜突然の来客と相談- メラのお陰で想定の半分の時間で片づけを終わらせる事が出来た好美は真っ暗な夜の街を眺めていた、周囲で明かりがついている店は「暴徒の鱗」と「コノミーマート」しかない。ただこの世界でも夜更かしをしたり好美みたいに夜勤をする人々が増えたお陰で深夜の時間帯の売り上げは上々だった。 外の空気を深く吸い込んで改めて店舗に入ると、中では人魚が酔い潰れており『人化』も解けかけている。 光が好美にコーヒーを勧めたが好美は改めてゆっくりと呑みたくなっていた、冷蔵庫に入れていた日本酒を涼し気なガラス製の徳利に入れるとガラス製のぐい飲みと共に店舗部分へと運んで行った。この徳利とぐい飲みは両方とも好美のお気に入りで、切子による柄が入っていた。 今日は通常営業を止め、ずっと貸切にしているので朝になるまで誰も来ない・・・、はずだった。 店舗の出入口から眩しい光が差し込みだした、不自然だと思った光が屋外に出てみる。 数秒経過した後、体を震わせながら中に入って来た光は顔を蒼白させていた。光「好美ちゃん・・・、夜も遅いし呑みすぎたのかな。外に何か大きいのがいるんだけど。」好美「え?大きいのって何ですか?」 用意していた冷酒を冷蔵庫に入れなおして光と共に恐る恐る外に出た好美は空を見上げた、神々しく光りながら一体の龍(ドラゴン)が空から降下して来ていた。龍「おう、いたいた。好美ちゃん探してたんだよ。」光「好美ちゃん、この龍と知り合いなの?」好美「いや、私は記憶にないですね・・・。」 幻覚を見ている様に感じた好美達は、一旦落ち着こうと店内で改めて呑みなおそうとしたが龍が引き止めた。龍「おいおい、どこに行ってんだよ。ニコフさんに聞いたらここにいるって言ってたから来た・・・、ごめんよ。この姿だと分からないよな。」 龍が『人化』しながら地上に降り立つ、すると見覚えのある女性が目の前に。好美「あ、トゥーチ神様!!」トゥーチ「やっと気付いてくれたか、すまねぇが中に入って良いか?」 神に背くわけにいかないと貸切にしていた店内に古龍を迎え入れた、トゥーチは中に入るとゆっくりとテーブル席に腰かけた。 一気に酔いが冷めた光と好美は飲み物を勧めると、日本酒の冷酒を求めて来たので好美は冷蔵庫で冷やしていた自分用の冷酒を持って来た。好美はまだ口を付けてなくて良か
last updateLast Updated : 2025-07-13
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4. 「異世界ほのぼの日記2」92

-92 来訪の理由- 深夜のビル前に降り立った「一柱の神」の一人で「三つ巴の三姉妹」の三女こと古龍(エンシェント・ドラゴン)のトゥーチ・ラルーは以前王宮で食べたカレーやハヤシライスの味に感銘を受けたらしく、自分でも作れない物かと天界で試行錯誤していたらしいのだがどうしてもあの時の味の秘訣を知りたいと降り立ったそうだ。 ハヤシライスを作ったニコフからは既に恩人である焼き肉屋の板長・御厨を紹介されていたのだが案内された焼き肉屋に行った折・・・。光「御厨さん、いなかったんですか?」トゥーチ「ああ、今はヤンチっていうライカンスロープが板長をやっているらしいんだが本人に居場所を聞いたら知らないって言うんだ。」好美「どうして店を出たとかは聞かなかったんですか?」トゥーチ「店の奴には「新しいタレを考案するヒントを探しに行く」とだけ言って店を去ったそうなんだ、だから全く見当がつかないそうでな。」 女将には会わなかったのかと聞いてみたのだが、奥でずっと電話していたらしいので全く顔を合わさなかったと言う。 一先ず昼頃に店に行ってみようと提案した光、それに対し好美はこの世界に焼き肉屋がある事を知らなかったので少しドキドキしていた。光「好美ちゃん、別に食べに行くんじゃないからね。」好美「な、何を言っているんですか?店の人にお話を聞きに行くんですよ・・・、ね?」 昼間から焼肉でビールも悪くないと思っていた事を光に見透かされた好美、焦りの表情を見せながらもなんとか誤魔化そうとしていた。トゥーチ「すまねぇが、俺はこの後用事があるんだ。また来ようと思うし、こっちから何かしらの方法で連絡するから一先ず頼んで良いか?」好美「分かりました、でもどうしてあの味に拘っているんですか?」 好美の質問を聞いた古龍は少し俯きながら口を開いた。トゥーチ「実はよ、俺天界では一応まだ学生なんだ。深夜働くクォーツの姉御やセリーの姉御からの仕送りの世話になってばかりでさ、せめて2人の為に料理でも作れないかなと思ったんだよ。好美ちゃんも食ってた時の2人の表情見ただろ、俺もあんな料理が作りたくてヒントを得ようと今回降りて来たんだよ。」 話を聞くにトゥーチの性格や口調はただの乱暴者が故ではなく義理と人情を大切にしているからという事が読み取れた、江戸っ子に似たようなところか。光「カレーの方はどう
last updateLast Updated : 2025-07-13
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4. 「異世界ほのぼの日記2」93

-93 姿を変えた人狼- 光からカレーの作り方の書かれたメモを受け取った「一柱の神」はじっくりと読み込んで、大切に胸元にしまった。トゥーチ「作ってから・・・、1晩・・・、置くのが・・・、ポイント・・・、なんですね?光さん。」光「そんなに興奮する事ですか?」トゥーチ「いや、家で作れると思うと嬉しくてうれしくて。本当にありがとうございます。」 用事へと向かう古龍を見送るべく光、渚、そして好美は屋外へと出た。『人化』を解除して古龍の姿に戻ったトゥーチは大きく翼を広げて飛び立った。トゥーチ「すまねぇが、宜しくお願いします!!」 飛び立った古龍は鼻息を荒くさせ天界へと帰って行った、一段落したなといった様子で店内に入って行く3人。 好美は神と交わした盃の思い出を胸にしまいつつ、トゥーチに貰ったぐい呑みを綺麗に洗って自宅(15階)の食器棚に『転送』した。光「そろそろ帰りますか。」渚「そう言えば今、何時かね。」好美「もうすぐ朝の8:00ですね。」 時間の経過をすっかり忘れていた3人、丁度いい時間帯なので焼き肉屋に話を聞きに行く前に朝風呂を楽しみに行く事にした。 入浴後、スッキリとした気持ちで瓶入りの牛乳を煽った3人は一旦解散した。 11:00頃になり、待ち合わせ場所になっている「暴徒の鱗 ビル下店」の前に『瞬間移動』した好美は少し興奮していた。やはり本来の目的を忘れてしまっている、本人は完全に焼肉の舌になっていた。 そこに光と渚が『瞬間移動』でやって来た。光「お待たせ、待った?」好美「いや、私も今来たんで大丈夫です。」渚「なら大丈夫だね。」好美「それにしても何で店の前なんですか?いつもだったら私の家なのに。」 理由はとてもシンプルだった、渚が店で使う用にストックしているキムチを肴用に持って帰ってしまっていたのだ。 渚からキムチを受け取った副店長のデルアは安堵の表情を見せた。デルア「無いと思った、困りますよ、女将・・・、渚さん。」渚「あんた今何て呼ぼうとしていたんだい?」デルア「聞き間違いですよ、それより用事があるのでは?」光「そうそう、皆行こうか。」 3人は光の『瞬間移動』で焼き肉屋へと向かった、相も変わらず高級感溢れる佇まい。光「ここは大穴当てなきゃ来れないのよね。」渚「あんた、私も食べてみたいんだが。」男性「いらっしゃ
last updateLast Updated : 2025-07-13
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4. 「異世界ほのぼの日記2」94

-94 狼男の真実- 板長は顔にかかった水と汗を拭きながらグラスに入った麦茶を飲み干し、新しく入れなおしながら自分がやらかしてしまった事に関して告白した。神に対して無礼を働いた事を悔いている。ヤンチ「いやね、あの人がいきなり店にやって来て「自分は神だ、御厨を出せ」なんか言い出すもんですからね、突然やって来たお初で乱暴な人をどう信用しておや・・・、いや御厨さんの場所を教えろというんですか?一応は個人情報でしょ、光さん位に信用出来ない人ぐらいでなきゃ教える事なんて出来ませんよ。」光「ふふ・・・、親父さんを大事にされているんですね。」 それもそうだ、元々巷で恐れられていたウェアタイガーを拾い、血は繋がってなくとも自分の子供の様に育ててくれた、いわば「育ての親」なのだ。どれ位感謝してもしきれない人を大事にしていない訳が無い。 しかし話の流れからどうやら御厨の居場所を知っている様だ。光「それで、今本人はここにいないんですか?」ヤンチ「はい、親父なら今弟の所にいますよ。」光「御兄弟がいらっしゃったんですか?」ヤンチ「はい、実は最近知ったのですが自分には弟が2人いるんです。ほら、この街中にウェアウルフが2人いるでしょ、念の為にバルファイ王国の魔学校病院でDNA鑑定をお願いしたんですよ。」光「パン屋の店長と肉屋のケデールさんですか?」好美「というかDNA鑑定って・・・、ここ本当に異世界なんですか?」 疑念を持つ好美をよそに会話を進める2人、ヤンチが言うには肉屋のケデールが次男でパン屋のラリーが三男だそうだ。 それにしてもラリーって名前が久々に出て来た気がする、作者的に光にはちゃんと働いていて欲しいものなのだが。ヤンチ「親父が肉の解体や成形について勉強したいって言うもんですから弟に頼んでみたんです、「兄ちゃんの育ての親は自分の育ての親も同然だから」って快く了解してくれました。宝田さんって人が育てている豚の肉にも興味があるらしいので一緒に育てながら店で使わせて貰える様に交渉するって言ってましたよ。」好美「ああ・・・、守の・・・。」 元彼の名前を聞いて少し汗を滲ませる好美、何か秘密があるのだろうか。 それはさておき、一先ず2人はケデールの店に行ってみる事にした・・・、のだがまさかの天から声が、どこからどう聞いてもトゥーチだ。トゥーチ「おうおうおう!!
last updateLast Updated : 2025-07-13
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4. 「異世界ほのぼの日記2」95

-95 恩人登場- 光の運転する軽バンでのんびりと肉屋へ移動する3人、ただ好美の中には疑問が生じていた。好美「気まずくならないですかね、今から元彼と元彼女が会うので。」光「今更何言ってんの、そんな事日本でもよくある話でしょ。それにこの前だって普通に話していたじゃない。」トゥーチ「何だ、好美ちゃん。元彼って誰だよ。」 光は後部座席の神に守と好美の事を伝えた、ただ話を聞いた古龍はぽかんとしている。トゥーチ「元彼の方はもう気にしていないんじゃね、大丈夫だよ。」好美「そうですかね、私気にし過ぎなのでしょうか。」トゥーチ「そうだよ、もう何年も前の話だろ。今となってはいい友達同士じゃないのか?」光「そうよ、神様がそう言っているんだからその通りよ。」トゥーチ「何かあったら俺が何とかしてやるから安心しろって、な?」 何となく嫌な予感がした好美達は自分達で解決できると神の気持ちだけ受け取った、そんな中好美にはまだ疑問が一点。好美「それにしても今日はカフェラッテじゃないんですね。」光「あの子には3人乗れないからね、何となくだけどこっちにして正解だったわ。」 そうこうしているうちに3人の乗った軽バンが肉屋の駐車場に到着した、相も変わらず唐揚げなどの惣菜の良い匂いが・・・、増えていた。光と好美の2人にとっては懐かしく、そして古龍にとっては新鮮な料理の良い香りがしていた。どうやら守の提案で豚の生姜焼きを中心とした料理を売り始めた様だ、肉屋の中では惣菜用にショーケースが追加されていた。ほかほかの特製弁当まで数種類売り始めていたのでもう肉屋なのか惣菜屋なのか、はたまた弁当屋なのか分からなくなってしまっている。 そんな中、奥から店主のケデールが出て来た。最近羽振りが良いらしいのか、以前とは衣服が変わっている気がした。ただ物腰の低さは昔と変わっていないらしい。ケデール「おや、光さんに好美さんじゃないですか。いらっしゃいませ、兄から話は聞いていますよ。そちらの方が神様ですか、お目に掛かれて光栄です。私、店主のケデールと申します。」トゥーチ「トゥーチだ、御厨さんはいるか?」ケデール「勿論、奥の豚舎にいますよ。呼んできましょうか?」トゥーチ「いや、見学がてら俺が見に行くよ。」ケデール「そうですか、ではこちらにどうぞ。」 店主は自ら店の奥へと3人を案内した、通路脇
last updateLast Updated : 2025-07-13
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4. 「異世界ほのぼの日記2」96

-96 放置された酔っ払い- パートのエルフ達やケデール、そして守の賄いを作る小さな厨房で今夜の夕飯を兼ねたハヤシライスの準備を始めた御厨。その隣で元アーク・ジェネラルの一言ひとことを必死にメモするエプロン姿の古龍がいる。その光景を見た光は少しほっこりとした気分になっていた、「一柱の神」であるトゥーチも一人の少女なんだと何となく微笑ましくなっていた。 一方その頃、好美は何か忘れているように思えた。そう言えば1人いない様な・・・。そう思っていた好美と光の所に肉屋の店主が近づいて来た、右手には電話の子機が。光が未だに家電を使う人がいるんだと感心していたその時。ケデール「光さんすみません・・・、私の兄から電話なのですが。」光「私にですか?もしもし?」ヤンチ(電話)「もしもし、光さん良かった!!渚さんをうちの店に忘れていませんか?」 そう、3人は焼き肉屋に渚を置きっぱなしにして肉屋に来ていたのだ。ほったらかしにされた本人はやけくそになりランチタイムなのにも関わらず高級焼肉を肴に1人昼呑みしていた、ヤンチが言うにはかなり出来上がっているらしい。ヤンチ(電話)「私自身は儲かるので良いのですが、お代は光さんから受け取る様にとの一点張りでして。それに本人帰る方法あるんですかね、かなり赤くなってますよ。」 「暴徒の鱗」の屋台は今日は1号車のみの営業なので別に問題ないのだが、本人自身かなり酔っていて『瞬間移動』も使えない位にへろへろになっており下手すれば焼き肉屋に迷惑を掛けかねない。光「因みに今母の食事代っておいくらになっているんですか?」ヤンチ(電話)「少々お待ちくださいね。今ですね、えっと・・・。」 光は恐る恐る聞いてみた、電話の向こうでヤンチが途轍もなく長い伝票を見ているのが音だけで伺えた。ヤンチ(電話)「恐れ入ります、お1人で37万6200円ですね・・・。」光「え?嘘でしょ?」 ヤンチが言うには店で一番高額な「黒毛和牛ロースの焼きしゃぶ」を1頭分食べ、水の様に生ビールをがぶがぶと呑んだ結果だそうだ。光やガルナスが大食いなのは渚譲りだったのだろうか。 光が1人ドン引きしていると、電話の向こうで遠くからとても嫌な言葉が。渚(電話)「ヤンチさぁ~ん、焼きしゃぶ追加~。後ビールね。」光「げっ!!」 これは早く迎えに行かなければとんでもない大騒動にな
last updateLast Updated : 2025-07-14
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4. 「異世界ほのぼの日記2」97

-97 涙と共に- 焼肉屋の代金を立て替えた光は渚の肩を持って母の部屋に『瞬間移動』し、ベッドに渚を宣言通りに放り込み再び『瞬間移動』して肉屋に戻った。 賄い用の厨房では御厨によるハヤシライス作りが佳境に差し掛かっていた、甘く良い香りが漂ってくる。 傍らでは白飯を炊いているらしく、炊飯器からも良い香りがしていた。たっぷり用意しているみたいだが、もしも光が食べるとなると御厨の夕飯どころか肉屋で働く従業員達の賄い分も無くなってしまう。 そこを通過し、奥の豚舎へと戻ろうとする光を店主のケデールが引き止めた。光「な、何ですか?」ケデール「実は先程なんですがね、豚舎ですごく居づらい雰囲気になっちゃいましてね。どうやらあの元恋人同士、2人きりで話し合いたかったみたいですよ。」 お互いにまだ未練があるのだろうか、奥の豚舎で好美と守は良い雰囲気になっている模様だった。ゆっくりと語り合ってもらおうと気を利かせたケデールはこっそりその場を離れて光の帰りを待っていたらしい。 2人が足音がしない様にこっそりと豚舎に近付くと、好美と守は互いに涙を流しながら抱き合っていた。 店先で待っていようと思った光はケデールに小声で話しかけた。光「ケデールさん、今夜豚の生姜焼きと焼きビーフンにしようと思っているのですが頂いても宜しいですか?」ケデール「かしこまりました、おまけさせて頂きますね。では、こちらへどうぞ。」 店主の案内で店先に移動しようとする光、その時2人の耳に元恋人同士の会話が。好美「寂しかった・・・、こっちの世界に来た瞬間一生守に会えないかと思った。大学を卒業した時に別れた後からも頭から守の事が一切離れなくて・・・。」 大粒の涙を流す好美、その涙を持っていたハンカチで拭いながら守が返事をした。守「好美もだったんだな、寂しかったのが俺だけじゃなくて本当に良かった。」好美「ねぇ、守。私達、どうしたらいい?どうするべきだと思う?このまま寂しいままこの世界で生きるべきだと思う?」守「分かるかよ、でも答えは1つかも知れねぇな・・・。」 守は元彼女の腰に優しく手を回し唇を近づけた、好美も元彼に応える様に唇を重ねた。数十秒の間ずっと唇を重ねていた2人は互いにゆっくりと離れ結論を出した。守「俺から言わせて欲しい、やり直させて下さい。」 好美はまた大粒の涙を流し始め、
last updateLast Updated : 2025-07-14
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4. 「異世界ほのぼの日記2」98

-98 大きく宣言- この日元々遅番勤務だったが、店主である狼男(ライカンスロープ)が空気を読んで気を利かせた事により早上がりする事になった守を連れて自宅へと『瞬間移動』しようとした光は、寸前である重大な事を思い出した。 好美を含めた3人を見送り店に戻ろうとした店主を光が引き止めた。光「ケデールさん、すみません。」ケデール「な・・・、何か他にありましたか?」光「ヤンチさんに伝言をお願いしたいんです。」ケデール「兄に・・・、ですか・・・別に構いませんが。」 光の伝言とは先程ヤンチが板長を務める焼き肉屋で渚が高級焼肉を馬鹿食いし、高い酒を水の様にガバガバと吞み干して光が代金を立て替えた時の領収書の宛名を「上様」ではなくはっきりと濃く「赤江 渚 様」と記入しておいて欲しいと伝えて欲しいという物だった。ケデール「光さんも大変ですね。分かりました、お伝えいたしましょう。」光「すみません、お手を煩わせて。」ケデール「いえいえ、光さんにはいつも御贔屓にして頂いてますので。その代わり2人についての面白そうな話、お願いしますね。」光「もう、人が悪いんだから。」ケデール「お互い様でしょ、では道中お気をつけて。」 『瞬間移動』で飛んでいくので心配される程でもない、光は好美と守を連れて自宅へと向かった。冷蔵庫には既に肴や酒がパンパンに詰め込まれている、魔学校から帰宅したガルナスに「ご飯のお供」してそのまま出せば夕飯の準備も必要なさそうだ。 ただ、本人が不服を申し立て出したら困るので白飯は多めに炊いておくことにした。 白飯の準備を終えた光は冷蔵庫から缶ビールを取り出して2人に配ると、乾杯を促したのだが守はまだ勤務中だと断りだした。 一応の連絡用として光がケデールにこっそり『付与』しておいた『念話』で確認を取ると、有休扱いにしたから気にしない様にと笑っていた。 正直言うと、元々魔法使い以外使えないはずの『念話』をあらゆる種族が使える様になったような気がしてならない、この世界でかなり強力な魔力を持つ光達転生者の影響はかなり大きいらしい。 一先ず慣れない様子でケデールに改めて今日のシフトを確認する為に守が『念話』を飛ばした、どんだけ真面目なんだ。守(念話)「店長・・・、俺今日遅番ですよね。今シフト表見ながら言ってますもん。」ケデール(念話)「え?お前今日有
last updateLast Updated : 2025-07-14
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