司会者は明らかに天野に興味を示し、さらに踏み込んだ。「恋人を探してみたいとは思われますか?」天野は眉を僅かに寄せた。人々の注目を集める話題の中心になることを避けたかった。彼の視線は観客席を飛び越え、まっすぐに夕月へと向けられた。夕月が柔らかな笑みを浮かべているのが見えた。まるで、万人の注目を集める彼を誇らしく思うかのような温かな微笑み。「はい」天野は事務的な報告をするような真面目な表情で、素っ気なく答えた。客席の女性たちの間で、既に思考が活発に動き始めていた。独身の知人を次々と思い浮かべ、天野への紹介を考えている様子が手に取るように分かる。夕月の瞳に驚きの色が走った。お兄さんが恋人を探そうとしているなんて?それは本当に意外な展開だった。次の瞬間、鹿谷が夕月の腕をきつく抱き寄せ、天野に対して警戒心に満ちた眼差しを向けた。「どうしたの?」夕月が不思議そうに尋ねる。「僕の夕月を守らなきゃ!」夕月は微笑んだ。周囲の保護者たちが、この優秀な青年に対して既に熱い視線を向けているのを感じ取った鹿谷の反応だと思ったのだ。天野が初めて結婚願望を口にしたことで、妹として今日は簡単にはホールを出られそうにないと夕月は察した。鹿谷と同じように警戒の色を見せていたのが冬真だった。その整った顔立ちが一瞬にして曇り、細い瞳が暗闇に沈んでいく。天野のこの発言は、自分への当てつけなのか?夕月との離婚後、まさか人生の伴侶を探し始めるとは――冬真は奥歯を噛みしめ、薄い唇の端に冷たい笑みを浮かべた。「お義兄さんって、どんな女性がタイプなのかな?」涼の声が夕月の傍らで響いた。「私にも分からないわ」涼は狐のような目を細め、唇を引き締めながら、その瞳の中で笑みを深めた。「後で聞いてみようかな~」椅子に深く寄りかかりながら、さも何気ない様子で腕を夕月の椅子の背もたれに添えた。舞台上に佇む天野を見つめる涼の笑みには、何か面白いものを見つけた時のような輝きがあった。*舞台上、先生がマイクを瑛優に渡し、受賞の感想を述べるよう促した。「ママに感謝します。鹿谷さんが一人でも出られるって励ましてくれたの。それから練習を手伝ってくれたおじちゃん、それから涼おじさんも……」冬真は思わず息を詰め、期待に満ちた眼差しで娘を
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