緒莉は、飛行機の中で穴があったら入りたいほどの恥ずかしさに襲われていた。坂井の言葉を耳にした瞬間、目の前が真っ暗になる。なぜ人間は、すでに気まずい時に限って、さらに気まずい出来事に遭遇してしまうのだろう。明らかに、彼女は誰にも気付かれたくなかったのに、この警官はどうしてこんなに空気が読めないのか。「い、いえ、大丈夫です。ただ、少し眠くて......休もうと思っただけなんです」心の中で必死に祈りながら、どうかもうこれ以上は質問しないでほしいと願う。周りの人たちが次々とこちらを見ていることに、どうして気付かないのだろうか。それに、帰国後に警察署へ行くなんて、本当に誇らしいことだとでも思っているのか。坂井がさらに言葉を続けようとした時、緒莉は素早く彼の口を手で塞いだ。「私は大丈夫です、坂井さん。ここまでずっとお疲れでしょうし、少し休んでくださいよ。あとで署に着いたら、まだ仕事が待っているんですから」その言葉に坂井はなるほどと思ったように頷き、納得した。それを見て、緒莉はようやく胸をなで下ろす。もしこの茶番が続いていたら、どう収めればいいのか本当に分からなかった。とにかく、恥ずかしすぎる。しかも、このまま辰琉の様子を放っておけば、帰国後は間違いなく安東グループの株価に影響が出るだろう。緒莉は心の中で計算を巡らせ、安東家を切り捨てても構わないと判断する。それに、あの口座の入出金の件についても、何か良い方法を考えなければならない。警察署に長居するなど、時間の無駄であり、自分の印象にとっても良くない。警告を受けた辰琉は、大人しくなった。道中、もう緒莉に罵声を浴びせることもなく、耳も心もようやく静けさを取り戻す。確かに、狂った人間の言葉など誰も本気では信じない。だが、それでも延々と繰り返されれば無視しきれない。人がどんなに狂っても、心の奥底に埋め込まれ、最後まで口にすることは、その人にとって最も重要なことなのだ。緒莉は思いもしなかった。辰琉の自分に対する憎しみが、ここまで深いとは。考えれば当然かもしれない......けれど、それでも心の中は納得できない。かつての辰琉は、彼女を大切に守り続けてくれていた。だが今は、自分の声すら奪った。どうしてそんなものを受け入れられるだ
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