「鈴木部長は下がっていい。トレンドさえ消せばいい」蓮司が口を開いた。広報部長は一瞬固まり、信じられないような表情をしたが、災難を逃れたように何度も頷いた。「今後は二度とこのようなことがないよう、必ず徹底いたします」彼は言った。「夜勤体制は不要だ。俺の私事は自分で処理する」蓮司は無表情で言った。それを聞き、広報部長は退室した。大輔も一緒に出ようとしたところ、蓮司に呼び止められた。「探してた物件、見つかったか?」蓮司が尋ねた。「すでに5件に絞り込みました。社長、いつご覧になりますか?」大輔は言った。「今すぐだ」蓮司はそう答えた。大輔は資料をメールで送った後、自ら印刷した資料を手にし、順に紹介しようとした。だが、最初の一件を紹介し終わる前に、蓮司は言った。「これでいい」大輔は少し驚いた。社長ならきっと慎重に選ぶか、或いは全部却下して再選を指示すると思っていたが、話も聞き終わらないうちに即決するとは思わなかった。まるであの女性を今すぐ出ていかせたいかのようだった。大輔は不動産業者に連絡し、契約の準備をするために部屋を出ようとした。そのとき、蓮司が電話している声が耳に入った。「物件を用意した。今日、時間があれば引っ越してくれ」大輔は思った。今日引っ越し?そんな急に?……まさか、奥様を出ていかせるつもりか?いや、まだ冷戦中だろうし、電話に出るわけないか。その頃、家ではちょうど目覚めた美月に、蓮司から電話がかかってきた。朝ご飯の心配でもしてくれるのかと思って喜んだが、彼の最初の言葉に彼女は固まった。「引っ越し?蓮司……あなた、引っ越さなくていいって言ってたじゃない?」美月は声を詰まらせ、唇を噛んで言った。「後から考え直した。透子がもうすぐ戻る。同じ屋根の下にいたらまた揉めるだろう。お前の安全のために、部屋を借りた」蓮司は、感情のない声で言った。美月は唇を噛みしめながら思った。透子なんて一生戻ってこない。離婚協議書にもサイン済みなのに、蓮司だけがまだ知らない。もちろん、彼女はこのタイミングで言うほどバカじゃない。そんなことしたら、透子はまだ駅を出る前に、蓮司に捕まれるかもしれない。「わかったわ。私のために考えてくれてありがとう、蓮司」美月は受け入れる姿勢を
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