恋敵である駿が、会食の写真をSNSに投稿した。並んでいる料理は、どれも見覚えのあるものばかりだった。これを「考えすぎ」だと言うのなら、その投稿に付いたコメントはどう説明すればいいのだろう?特に、理恵のあのコメントは。それに、皿の下に見えるテーブルの木目も気になる。蓮司はすぐさまスマホのアルバムを開き、以前、透子が「私の自慢」とばかりに送ってきた写真と見比べた。一致する。完全に一致していた。蓮司はカッと目を見開き、嫉妬の炎で頭が沸騰しそうだった。料理は透子が作っただけでなく、あろうことか、彼女の家で食べているのだ!しかも駿だけでなく、聡までいる!理恵のコメントをよく見ると、彼女は今夜その場にいない様子だ。つまり、男二人が透子の家に上がり込んでいるということになる。男二人と女一人が一つ屋根の下。しかも夜更けに、一人暮らしの女性の家で。おまけにその男二人は、どちらも透子に下心を持っている。そこまで考えた瞬間、蓮司はスープの椀をテーブルに叩きつけた。椀が揺れ、汁がテーブルにこぼれ落ちる。同時に、蓮司は「ガタンッ」と音を立てて立ち上がった。その唐突な行動に、お爺さんと執事は驚いて体を震わせた。お爺さんが問う。「何事だ、騒々しい」さっきまでしょげ返って一言も発しなかったのに、どうして急に人が変わったようになっているんだ?「用事ができた」蓮司は歯を食いしばり、そう言うと踵を返して出て行こうとした。「用事があるなら片付けてこい。物に当たるな。近頃は性根が据わったかと思ったが、相変わらず癇癪持ちだな」お爺さんは呆れたように言った。蓮司は振り返らなかったが、お爺さんの言葉に一瞬、体が固まった。その一言が彼の理性を呼び戻したのだ。この数日間、透子を邪魔せず、彼女が平穏に暮らしているのを見ているだけで満足していたではないか。それなのに今、自分は何をしようとしているのか?乗り込むのか?そして?問い詰めるのか?いったい何様のつもりで、どの面下げて問い詰めるというのだ?もう離婚したのだ。透子にとって自分は、死ぬまで顔も見たくない元夫でしかない。後方では、お爺さんが、先ほどまで怒りに燃えて飛び出していこうとしていた孫が、戸口で立ち止まり、うなだれて肩を落とすのを見ていた。敷居も跨がずに、まだ何もして
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