透子ははっきりと言った。「理恵が行ってきて。私は本当に行かないから」理恵は彼女をじっと見つめ、先ほど透子が疲れていると言い、仕事まで持ち帰ってきたことを思い出した。そして、彼女のために憤慨して言った。「もしかして、会社で誰かにいじめられてるの?また面倒な仕事を押し付けられたとか?」透子は首を横に振った。「今はチームリーダー代理みたいなものだし、誰もいじめたりしないわよ」理恵は心配そうに続けた。「でも、チームのメンバーが言うことを聞かなくて、あなたが後始末をしてるんでしょ。仕事まで持ち帰ってきてるじゃない。リーダー代理がそんなに忙しいなんておかしいわ。しかも、あんな小さな会社で。だめだ、駿先輩に言わなきゃ。社長としてどうなのって」透子はそれを聞いて慌てて彼女を止めた。「これは私が好きでやってることだから。会社や上司は関係ないの」実のところ、彼女は持ち帰るほどの仕事など全くない。理恵と聡と一緒に食事をしないための、ただの口実に過ぎないのだ。理恵は真剣な表情で言った。「どうしてそんなに無理するの?体を壊したらどうするのよ」透子は穏やかに答えた。「大丈夫よ。正社員への昇進がかかってるから、担当プロジェクトには力を入れたいだけ。本当に行かないから、あなたたちで行ってきて。私のせいで気まずくさせたくないし」理恵は彼女を見つめ、数秒後に諦めたように言った。「でも、この食事会、もともとあなたのために開いたのに……」透子は微笑みながら言った。「私の分までしっかり食べてきて」理恵はどうしても彼女を説得しきれず、最終的に折れるしかなかった。しかも、透子は「絶対に無理やり連れて行かない」と固く約束させないと、車にも乗らずバスで帰ると言い張ったため、理恵は頷くほかなかったのだ。三十分後、レストランの個室。聡は会議を終えて駆けつけたが、中に入ると妹が一人でいるだけだった。「透子は化粧室か?」「ううん、最初から来てない」理恵はジュースを飲みながら肩をすくめて言った。聡は少し間を置き、尋ねた。「なぜ来なかった?」理恵が事情を説明すると、聡はボックス席に座り、その理由を聞いてから唇を結んで二秒ほど黙った。そして彼が言った。「たかがチームリーダーの仕事で寝食を忘れるとはな。その根性があれば、何をやっても成功する
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