会議室に入って初めて、そこに呼ばれたのが私一人ではないことに気づいた。見渡すと、うちの診療科の青葉主任、豊鬼先生、看護師長のほか、神経外科や人事部、病院の幹部までもが揃っている。かなり物々しい雰囲気。その中で、葵と薔薇子は私の斜め向かいに座っていた。葵はうなだれ、今にも泣き出しそうにおどおどしている。人数は多いが、実質関係しているのは神経外科と麻酔科。そして出席者は多少例の匿名告発と関わりがあるから、その件を収束させるための場であるのは明らかだった。――匿名で投稿し、ネットで騒ぎを引き起こした張本人は、間違いなくこの中にいる。一体誰なのか?そう思案していたところで、会議室の扉がざわめきと共に開き、視線が一斉に向かった。そこに現れたのは、八雲と浩賢を先頭にした数人。みな険しい表情を浮かべていた。だが、我々をさらに驚愕させたのは、その後ろに警察官が二人並んで入ってきたことだった。院の幹部の声が耳に届いた。「これはどういうことだ?警察まで呼んだのか?」「紀戸先生からは何も聞いてないぞ。……とにかく様子を見よう」警察官と、冷淡な八雲の横顔を見比べるうちに、私の胸はざわつき始めた。全員が着席すると、人事部の責任者が口を開いた。「最近、匿名の告発文が届いています。その件については皆さんご存じでしょう。本日お集まりいただいたのは、この件に関して一つの結論を出すためです」一呼吸置いてから、彼は鋭い目で一同を見渡し、重々しく言った。「匿名投稿者の正体はすでに判明しています。自ら名乗り出ますか?それとも私が指名しましょうか?」その言葉に、室内は一斉にざわめいた。互いに顔を見合わせ、驚愕の表情を浮かべるが、誰一人として名乗り出る者はいなかった。短い沈黙のあと、責任者ははっきりと言った。「東雲先生は、どう思いますか?」瞬間、先ほどまでざわめいていた空気が凍りついた。全員の視線が南真に注がれた。好奇、疑問、驚き――そのすべてが入り混じって。もちろん、私も。本当に意外だった。同期のインターンである彼は、地味で目立たない存在だった。思えば彼と挨拶を交わしたのは、数えるほどしかなかった。病棟で顔を合わせればきちんと挨拶をし、仕事も真面目にこなした。言葉は少ないが態度は誠実で、匿名で私を中傷する犯人とはとても
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