八雲からの批判にはもう慣れているはずだったのに、この一言で冷水を浴びせられたような虚しさが胸を刺した。彼は確かに見ていた。私の発言が協和病院の顔に泥を塗るようなものではなかったことも、ちゃんと分かっていたはずだ。たとえ認めてくれなくても、青葉主任や松島葵の前で、わざわざ私を貶める必要なんてなかったのに。もしかして、午前中に私はあんなにはっきりと責任を押し付けられるのが嫌だと表明したから?納得できない気持ちが渦巻いたが、私は感情を押し殺し、淡々と事務的な口調で返した。「ご忠告ありがとうございます、紀戸先生。肝に銘じます」青葉主任が間に入って場を和ませた。「まあまあ紀戸先生、水辺先生は今回が初めての交流会参加だよ。先輩なんだから、もう少し優しくしてやってよ」八雲は私を一瞥しただけで、何も言わなかった。青葉主任はあくびをかみ殺しながら続けた。「じゃあ、あとは若い人たちに任せるよ。俺は部屋で少し仮眠をとるから、晩餐会でまた会おう」そう言うと、あっという間に姿を消した。その時、葵が私に近づき、腕を絡めてきた。「水辺先輩、ねぇ、ちょっと付き合ってくれない?急いで出発したから、ちゃんとしたドレス持ってきてなくて......私たちと一緒に選びに行こうよ?」「私たち」――その一言が耳に引っかかった。私の視線は自然と八雲に向かい、彼が淡々と口を開いた。「車はもう下で待ってる。時間がない」彼が松島葵と一緒にドレスを選びに行くのに、私がついて行って何になるの?二人のイチャイチャを見せつけられるだけじゃない?そう思った私はすぐ口実を作った。「まだ資料が残ってるから、私は......」「先輩、誰も今すぐ出せって言ってないじゃん」葵は甘えた声で、さらにこう言った。「それに、綺麗な格好するのも協和病院の顔を立てることになるよ?先輩も麻酔科の顔なんだから、ちゃんと華やかに出席しなきゃ」......確かに彼女の言うことにも一理ある。私は当初、今夜の宴会はただの親睦ディナーくらいに思っていたけど、昼の交流会の規模を考えれば、晩餐も立派なビジネス社交の場になるに違いない。けれど、持ってきた服はどれもカジュアル寄り。私はしぶしぶ頷いた。せめて送ってもらえるだけでもありがたいか――そう思っていた自分が甘かった。
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