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Semua Bab 満天の星: Bab 21 - Bab 30

58 Bab

出生の秘密 ①

梨華も大樹も父さんも帰った病室で、母は眠っている。ここは救急病棟の特別室。広さは12畳ほどあり、ベットの他に応接セットが置かれていて、さらに奥には引き戸で仕切られた和室と、ミニキッチンやお風呂も備え付けられている。高い個室代をとるだけあって眺めも最高で、今は窓からは星空が見える。私は部屋の灯りを消すと、応接セットのソファーに横になった。「うわー、綺麗」思わず声に出た。子供の時に見た満天の星を思い出し、あの頃に戻れたらどんなに幸せだろうと思ってしまう。「樹里亜、起きてるの?」「えっ?」寝ていると思っていた母に声を掛けられ、驚いた。「母さん、寝られないの?」布団や枕が変わると寝られない人は多いから。「ちょっと来て」母はベッドに身体を起こして座っていて、ここに来てとベッドを叩いた。私は母の近くに行き、ベットに腰をおろす。「どうしたの?」「あなたと、少し話がしたいのよ」「話ならいつでも出来るから、今は休んだほうがいいわ」「何言ってるの。いつも忙しくて、家にも帰って来なくて、いつ話せるのよ」はああ、確かに。そう言われてしまうと返す言葉がない。「わかったわ。何?」私はおとなしく母の話を聞く事にした。「我が家は、樹里亜にとって居心地が悪いのよね?」「そんな事は・・・」改めて言われると答えにくくて、言葉を濁した。「なぜなの?」「それは・・・」一言で説明するのはとても難しい。「私は、樹里亜も梨華も大樹も同じように育ててきたつもりよ」それは、わかっている。父も母も平等に扱ってくれた。「親戚達がうるさいのは確かだけど、なぜあなたはいつも逃げるの?」私だって好きで逃げているんじゃない。私は父と愛人との間に生まれた子。母にとって憎むべき相手の子。愛されてはいけな子
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-21
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出生の秘密 ②

「樹里亜は、自分の名前の由来を知ってる?」「由来?」「そう。大樹はお父さんの名前『樹三郎』から一文字を、梨華は私の名前『華子』から一文字をもらったの」「知っているわ」私は父の樹の字をもらって樹里亜になった。それは、父だけの子だからでしょう。「樹里亜の名前は、お父さんと私が決めたの。亡くなった樹里亜のお母さんの名前『ジュリア』をそのままもらって、お父さんの樹の字をあてたのよ」ジュリア。それが、母親の名前?知らなかった。それよりも、母から生みの母親の話しを聞かされることが意外だった。「母さんは会ったことがあるの?」「ええ。樹里亜が生まれる一カ月ほど前から一緒に暮らしたのよ。出産にも立ち会って、ジュリアさんの最後も看取ったわ」そんな話、初めて聞いた。「本当は樹里亜が20歳になったら話すつもりだったの。でも、あなたは帰って来なくて。しかたないから、大学を卒業して社会に出る時にって思ったら勝手に1人暮らし始めて」「・・・ごめんなさい」その後、母はいい機会だからと話しだした。私の生みの母親ジュリアさんは中国出身の女性だった。幼い頃にアメリカに渡り、苦労して医師になった。その間に両親も亡くなり、父が出会った時には天涯孤独だったらしい。アメリカの病院で救命医として働くジュリアさんは当時40歳。父より10歳も年上で、上司にあたる人だった。「ねえジェイ。あなたは子供がいるんでしょう?」同じアジア人のよしみで、ジュリアさんは父に心を許していった。樹三郎の名前から、ジェイと呼ばれていた父も、ジュリアさんを医師として上司として尊敬していた。「自分の子供って、そんなにかわいいの?」不意にそんなことを訊かれた父は、「自分の命を投げ出しても良いと思えるほどにかわいいですよ」と答えた。それから2ヶ月後。「ジェイ。私も子供を持つことにしたわ」「え?」突然言われ、意味が
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-22
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出生の秘密 ③

その後は、ジュリアさんの体調もよく妊娠5ヶ月を迎えた。すべてが順調だった。ジュリアさんの乳がんが見つかるまでは。たまたま検診で見つかった乳がんは、ステージⅢの進行癌だった。すぐに放射線治療をしても手術できるか分からない進行度に、ジュリアさんは治療をせずに子供を産むことを決めた。子供の将来を考えれば無責任な選択かも知れないけれど、おなかの子供も1つの命と考えたジュリアさんに迷いはなかった。「ジェイ、もう何も言わないで。私は決めたの。ただ、出来ることならば子供が幸せな家庭に引き取られるのを見届けてもらえないかしら」そう言って、父さんに手を合わせた。あまりに重い責任に、父も困惑した。迷った末に母に連絡をし、母はアメリカに飛んできた。その時、ジュリアさんは妊娠9ヶ月。癌のため寝たきりのような生活だった。「私もね、ジュリアさんに会うまではお父さんとの仲を疑っていたの」フフフと懐かしそうに母が笑った。「あなたが生まれるまで、私はずっとジュリアさんと過ごしたの。ジュリアさんは賢くて強い人だった。生まれてくるあなたへの影響を考えて、一切の治療や鎮痛剤を断わっていた」「そんな・・・」末期癌の痛みを我慢するなんて、出来るわけがない。「あなたのお母さんはそんな人だったのよ」「それで、ジュリアさんは苦しんで亡くなったんですか?」「いいえ。結局あなたは予定よりも早く生まれてしまって。ジュリアさんはたった1ヶ月だけだったけれど、あなたと過ごすことができたの」そう。よかった。「そして出産を一緒に過ごす中で、私達もあなたに情が移ってしまって手放すことが出来なくなった。だから、引き取ったのよ」母の話を聞きながら、私は涙が止まらなかった。でも、それならもっと早く話してくれれば、こんなに苦しむ事はなかったのに。「ジュリアさんは亡くなる前に私に言い残したの。『甘やかすことなく、強い子に育てて欲しい。世間の風なんかに負けない人間に。自分の足で歩いて行ける人間に』とね。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-23
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体調不良と痴話げんか ①

「樹里先生」病院の屋上で後ろから声をかけられた。それはちょっと低めのテノールで、私はこの声が好きだ。この声で名前を呼ばれると、なぜか動きが止まってしまう。「樹里亜?」周りに誰もいないことを確認して再び声がかけられ、私は泣きはらした顔で振り向いた。「ど、どうした?」慌てたように駆け寄る渚から、石けんと柔軟剤の混ざった匂いがした。これは、私の好きな匂い。そして、私からも同じ匂いがするはずだ。同じ家に暮らしているのだから当たり前だけど、そのことがなぜか嬉しい。「渚、好きだよ」「どうした?大丈夫か?」心配そうに私の顔を覗き込む渚に、なんて整った顔と長い睫毛なんだろうと場違いなことを思ってしまう。「ねえ、キスして」気がついたら口にしていた。「はあ?」渚が、呆れてる。でも、いい。どんなに呆れられても、今は渚を感じていたい。「何があったんだ?」「お願い、キスして」「お前なあ」ちょっと私のことを睨んだ渚は、ゆっくりと近づくとそっと私の唇を塞いだ。両手で頭をホールドし奪うような口づけに、いつしか口内が渚で満たされていく。うぅん、うんん。全身がしびれてしまうようなキスに、私も渚の背中に手を回していた。私は渚以外の男性を知らない。だから比べようもないけれど、私はいつも彼のキスにとろけてしまう。きっと、相性が良いのね。「リア・・・樹里亜?」「ごめん。息するのを忘れてた」渚に呼ばれ、私は自分が気を失いかけていたことに気付いた。「一体何があったんだ?」「実は・・・」私は、母から聞かされた話を渚にした。話しながら、また泣いてしまった。ちゃんと望まれて生まれてきたことが嬉しくて、母さんが私を愛していてくれることが嬉しくて、今まで、反抗ばかりしてきた自分が恥ずかし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-24
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体調不良と痴話げんか ②

渚と喧嘩別れのようになったものの、仕事ではいつも通り。私は平常心を意識しながら、その日の午後も病棟での勤務についていた。「樹里先生」後輩研修医の千帆先生に呼ばれて顔を上げると、あっちと病棟センター前を指さしている。そして、そこに梨華が立っていた。「何、どうしたの?」その場から声をかけた私に、クイッ クイッと手招きする梨華。ったく。昨日の晩はあんな悪態ついていたのに、今はニコニコと私を見ている。一体どうしたんだろうと思いながら病棟センターを出たところで、私は梨華に腕を掴まれた。「ちょっと、何なのよっ」引きずられるように腕を引かれ、つい声を荒げてしまった。「お姉ちゃん。お願い」廊下の隅まで連れてきた梨華が、両手を合わせて私を拝む。「はあー、また?」私は呆れた顔で、妹を見た。「ちょっと洋服を買い過ぎちゃって。3万でいいから貸して」言いながら、お願いポーズは続いている。社会人になり親からの仕送りがなくなってから、梨華は時々お金を借りに来るようになった。梨華だってお給料をもらっているのにと思いながらも、私はつい貸してしまう。「はい、3万」財布からお金を出し、渡してしまった。本来なら断わってしまえばいいんだと思うけれど、それができない。生物学的な意味での家族がいない私は、仮にも家族と呼べる存在が愛おしい。多少わがままでも、私にとっては大切な妹だからつい負けてしまうのだ。「ありがとうお姉ちゃん。大好き」ギュッと、私にハグしてから梨華は走って行った。あーあ、またやってしまったと、私は肩を落とした。その時、たまたま渚が目の前を通りかかった。「何でも言うことをきくのが優しさではないと思うけれどね」そんなこと、私にだってわかっている。でも、負けてしまうのだ。「関係ないでしょう。放っておいて」結局憎まれ口を叩き、私は仕事
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-25
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体調不良と痴話げんか ③

持病を持っている私は、定期的に診察を受けている。今日は、月に1度の受診の日。とは言っても自分の勤め先の病院だから、わざわざ休みを取って行くことはない。「最近どう?変わったことはない?」休憩時間に呼び出してもらった私は、血液内科の診察に来ていた。主治医の海野月子先生は15年以上診てもらっている私の主治医。体重の増減から生理の周期まで私のことなら何でも知っている人だ。「そう言えば、食事が美味しくないんです。薬のせいですかねえ?」気をつけないとすぐ血小板の数値が落ちてしまう私は色々な薬を飲んでいて、その性で副作用が出ることも少なくない。「味覚ねえ」言いながらパソコンでカルテを開き、今日の検査結果を確認する月子先生の手が、止まった。え?嘘、何かあった?私もつい検査結果を覗き込んでしまった。「ちょっと落ちてきてるわね。立ちくらみとか、内出血とかはない?」「立ちくらみは前からずっとですし・・・内出血は気にならないけれど・・・」今のところ体調不良を自覚するようなことはない。「ねえ、樹里亜」「はい」月子先生が真面目な顔をして私を見ている。「生理はきてる?」え?生理。そういえば・・・遅れてるかも。「検査、する?」「・・・」私は答えられなかった。心当たりがない訳ではない。もちろん渚も私も妊娠には気を付けていたし、今までだって大丈夫だった。でも・・・「まあ、いいわ。来週の予約をとるから、また来て。それまで、ドクヘリはダメよ」「えー、何でですか?」「人の命を預かっているのよ、責任を自覚しなさい。とりあえず、貧血が酷いからって理由で、1週間のドクヘリ禁止。部長に連絡しとくから」「えー」「ウダウダ言ってると、大樹先生呼んで、今ここでハッキリさせるわよ」まるで駄々っ子のように甘えてみたけれど月子先生には効くはずもなく、兄を呼ぶ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-26
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妊娠

その後も、日が経つにつれて私の体調は悪化していった。立ちくらみもむかつきも続き、食事が喉を通らなくなった。マズイなあと、私の中での危機感が増していく。そして明日は、月子先生の診察日。きっと検査を勧められるのだろう。そうすれば、すべてが分かってしまう。どうしよう・・・「どうしたんですか?顔色悪いですよ」病棟師長が顔を覗き込む。「あぁ、大丈夫です」とは答えたものの、バレるのは時間の問題だ。はあぁー。深い深い溜息をつくと、私は医局にある自分のデスクに向かった。その夜、私は遅くまで残って仕事をした。そのおかげで、受け持っている患者のカルテは記載し終わった。作りかけの診断書も紹介状もすべて作った。保健所への届出書類も用意した。後は・・・デスクの整理と、ロッカーの片付け。部長宛の休職願を机の奥に忍ばせて、私は救急病棟を後にした。***「おはようございます」翌日、私は有休を取って月子先生の診察に来た。「珍しいわね」私服姿の私に、月子先生も不思議そうな顔をしている。「体調は?」「変わりません」「そう。血液検査の結果は・・・」カチカチとマウスをクリックしながら、月子先生がカルテを確認する。「そうね。良くも悪くもないわね。先週と変わらず」「そうですか」「問題は、もう一つの方よね」そう言うと、いつもはしない尿検査の結果をカチカチ。「はあー」大きな息を吐くと、月子先生は黙り込んだ。「先生?」長い沈黙にたまりかねて、私が声をかけた。「妊娠反応があるわね。内診するから、隣の部屋に行って」「え?今からですか?」「嫌なら、婦人科に行って診てもらう?」思わず言った言葉に、冷たく返された。月子先生は今、怒っている。小さい頃から
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-27
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家出

月子先生の診察を終えると、私は真っ直ぐに自宅マンションに帰った。診察結果はおおよそ予想がついていた。医者だからと言うことではなく、母親の本能というか、普段と違う何かが起きているのは感じていた。さて、問題はこれからどうするか。今日渚は日勤の予定で遅くても夜には帰ってくるし、大樹も部長も今日が私の受診日なのは知っているから、カルテを見ればすぐにばれてしまう。もし大樹に知れたら、きっと大騒ぎになることだろう。もちろん、いつまでも隠しておくことでもないし、隠し通すつもりはないが、今は少しでも時間が欲しい。渚のことも、家族のことも、医師としての世間体も、すべて置いておいて母親としておなかの赤ちゃんに何ができるのかを考えたい。一生後悔しない選択をしなくてはならないんだ。ソファーに座っては立ち。ウロウロと部屋の中を歩き回り。必要も無いのにお水を飲んだりして、私はうろたえた。責任の重さと、自分が招いてしまった結果の重大さに負けそうになった。しかし、いつまでもここで悩んでいることはできない。渚が帰る前にここを出ていこう。まずは一人になって、自分の気持ちを固めないといけないから。私は、長期出張用のトランクを出して必用なものをまとめた。重たいトランクを引きずりながらエレベーターを降りると、マンションの管理人さんに声をかけられた。「おや、お出かけですか?」60代の管理人さん。実はマンションのオーナーで、管理人をしながら悠々自適の生活を送っているらしい。「急に長期出張になったので、しばらく留守をします」「そうですか。ご主人お寂しいですね」「ええ、まあ」咄嗟に嘘をついてしまった。ご主人とは渚のことだが、あえて否定しない。不思議なことに、こんな時に医者という肩書きが役に立つ。少々羽目を外した行動をしても、医者と言うだけで信用されてしまうらしい。「気をつけて行ってらっしゃい」「行ってきます」笑顔
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-28
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SIDE 渚

ここしばらく、体調不良が続いている樹里亜。無理して明るく振る舞っている姿を見ながら、いつか倒れるんじゃないかと内心ハラハラしていた。今日は朝から診察の予定。いつもなら勤務を抜けて受診に行くのに、わざわざ休みをとって行った。貧血の悪化を理由に1週間のドクヘリ禁止も出ているし、樹里亜自身も気が気じゃないはずだ。大丈夫なんだろうか?時間的にも午前の診察は終わっているはずだから、結果は出ているはずなんだがと考えていたら、突然声をかけられた。「すみません。部長いらっしゃいますか?」あ、脳外の竹浦先生。樹里亜の兄さんだ。「部長は出張で、1日不在ですが」「そうですか・・・困ったなあ」「どうかしました?」ずいぶん切羽詰まった様子に、つい訪ねてしまった。「樹里亜と連絡が取れないんですよ」「え?」何で部長?樹里亜と連絡が取れないからって、部長を探す理由が分からない。「君、樹里亜と親しいんだよね?」「まあ。同期ですから」「悪いが、樹里亜の携帯にかけてみてくれないか?」「え?」自分でかければいいだろう。それに、仕事中だぞ。「そんなに、急ぎですか?」「ああ。急ぐ」いささか無愛想に聞いたのに、相手は俺以上に不機嫌そうで、しかたなく樹里亜の携帯にかけた。しかし、樹里亜は出なかった。「すみません。繋がらないみたいです」「ありがとう。すまなかったね。他の手を考えるから」竹浦先生はそう言って立ち去った。「どうしたんだろう?大樹先生随分慌てていたわね」竹浦先生が立ち去ると、看護師達が噂しだした。そこに、別の看護師が駆け込んで来た。「ねえねえ、分かったわよ。樹里先生のカルテにセキュリティーロックがかかっていて、見れなくなっているんだって」「はあ?何で?」「血液内科の海野先生がパスコードをかけたらしくて、今は海野先生しか見られなく
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-29
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SIDE 大樹①

樹里亜がドクヘリを降ろされて1週間。 今日が受診予定日だと聞いている。 元々丈夫な方ではない樹里亜は、今までだって良いときも悪いときもあった。だから、今回も大丈夫だろうと思っていた。 昼前になって、俺は検査結果を確認しようと樹里亜のカルテを開こうとした。「あれ?」 ・・・開けない。どうなってるんだ? とりあえず、システムに確認するか。 最近の病院はどこも電子カルテを導入している。 すぐに情報が共有出来るのが利点だが、システムダウンでもすればすべてが止まってしまう。 その為ある程度の規模の病院ではシステム担当者が24時間交代で常駐する。「もしもし、脳外の竹浦です。カルテが開けないんだけど。えっと・・・」俺は樹里亜の名前とIDを伝えた。『その患者さんのカルテはロックがかかっているので、パスコードを入力しないと開けませんね』 「はあ?」俺だって、自分のカルテはセキュリティーをかけて誰が開いたのか分かるようにしている。 でも、ロックはかけないぞ。 そんな事したら、必用なときに見られなくて不便で仕方ない。「誰がロックかけたの?」 『血液内科の海野月子先生です』月子先生が? しばらく呆然とした後、俺はまずは樹里亜の携帯に電話した。しかし、出ない。 何度かけても留守電に繋がってしまう。 仕方なく、俺は月子先生の元へ向かった。コンコン。「どうぞ」まるで俺が来ることが分かっていたように、月子先生は迎えてくれた。「樹里亜のカルテにロックをかけました?」 「ええ」 「なぜですか?」 「本人の希望でね。今日一日時間が欲しいって言うから」 「そんなに悪いって、事ですか?」恐る恐る言った言葉に、「本人に訊きなさい」と、月子先生は取り合ってくれない。「お願いです、教えてください」 俺は頭を下げた。「ダメよ」 「樹里亜と連絡がつかないんです」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-30
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