梨華も大樹も父さんも帰った病室で、母は眠っている。ここは救急病棟の特別室。広さは12畳ほどあり、ベットの他に応接セットが置かれていて、さらに奥には引き戸で仕切られた和室と、ミニキッチンやお風呂も備え付けられている。高い個室代をとるだけあって眺めも最高で、今は窓からは星空が見える。私は部屋の灯りを消すと、応接セットのソファーに横になった。「うわー、綺麗」思わず声に出た。子供の時に見た満天の星を思い出し、あの頃に戻れたらどんなに幸せだろうと思ってしまう。「樹里亜、起きてるの?」「えっ?」寝ていると思っていた母に声を掛けられ、驚いた。「母さん、寝られないの?」布団や枕が変わると寝られない人は多いから。「ちょっと来て」母はベッドに身体を起こして座っていて、ここに来てとベッドを叩いた。私は母の近くに行き、ベットに腰をおろす。「どうしたの?」「あなたと、少し話がしたいのよ」「話ならいつでも出来るから、今は休んだほうがいいわ」「何言ってるの。いつも忙しくて、家にも帰って来なくて、いつ話せるのよ」はああ、確かに。そう言われてしまうと返す言葉がない。「わかったわ。何?」私はおとなしく母の話を聞く事にした。「我が家は、樹里亜にとって居心地が悪いのよね?」「そんな事は・・・」改めて言われると答えにくくて、言葉を濁した。「なぜなの?」「それは・・・」一言で説明するのはとても難しい。「私は、樹里亜も梨華も大樹も同じように育ててきたつもりよ」それは、わかっている。父も母も平等に扱ってくれた。「親戚達がうるさいのは確かだけど、なぜあなたはいつも逃げるの?」私だって好きで逃げているんじゃない。私は父と愛人との間に生まれた子。母にとって憎むべき相手の子。愛されてはいけな子
Terakhir Diperbarui : 2025-05-21 Baca selengkapnya