二頭の黒馬は大陸を大きく北上していく。 世界は四つの大陸と八つの小大陸が海に浮かび、全ての最南地に魔王がいるという小大陸がある。 二人の王族を乗せた黒馬はスカイの町を抜け、すぐ領主である男爵の屋敷に差し掛かった。 馬が嘶き、足を止める。「ここだ」 レイとエル、二人で屋敷を見上げる。 町場から離れた場所だ。人気がない。普通は使用人を雇い住まわせるが、それにしては屋敷は城下町の良い宿程度のサイズ感だ。通いの使用人を雇えば、屋敷は町のすぐ側に建てるのだが、どうにも辺境である。「変わってんな。それとも人嫌いか ? 」「調べた隊の報告だと、年老いた男爵ひとり暮らしらしい。気のいい男だと報告受けてる」 レイは馬から降りると、ドアを叩く。「泊めてくれると有難いな」「どうかな」 リコとセロが行くはずだった男爵の屋敷である。 ヘザー隊長の調べでは、この男爵の屋敷へ向かう途中で消息を絶っているのだ。アリアでの二人の話を聞こうと立ち寄った。「はい。どちら様でしょうか ? 」「 ? 」 中から聞こえたのは若い……少女の声。エルとレイは顔を見合せ、一先ずレイが声色を変えた。「失礼します。グリージオから来ました、わたしたちは……」 エルンスト王がいる。そう名乗るのをエルが手をレイに合図し制止した。「……旅の剣士です。実は、道に迷いまして……」「まぁ」 小さく驚くと、声の主は扉をすぐ開け放った。「大丈夫ですか ? お怪我はありません ? 」 三つ編みの少女。 紛れもなく、プラムのヴァンパイア、アナスタシアだった。「ええ。大丈夫です。実は知人を探しながら旅をしていたんですが、お見かけしていないかとスカイを目指してたんです。それで……ははは。探してるうちに俺達も道に迷いまして&
Last Updated : 2025-08-08 Read more