彩は、それを見て思わず目を潤ませた。彼女は立ち上がり、鼻をすすると綾に言った。「こんなに長く一緒にいましたが、数日でこんなにも明るくなるとは思いませんでした。二宮さん、あなたと優希ちゃんは、本当に安人くんにとって運命の人なのかもしれません」「あなたが安人くんのことを大切に思ってあげているのがよく分かります」綾は彩に好印象を抱いていた。安人を見る彩の目に、愛情と優しさ溢れているのを感じていたからだ。克哉が安人のために選んだ義理の母はあまり良くないが、ベビーシッターは良い人を見つけたようだ。その時、ダイニングテーブルに座っていた克哉と誠也が突然立ち上がった。清彦は誠也を支えようと近寄ったが、誠也は大丈夫だと言った。そして、克哉と肩を組み、ふらつきながら玄関へ向かって歩いて行った。綾と彩は、その光景を見て唖然とした。さっきまであんなに険悪な雰囲気だったのに、どうして急に仲良くなったんだろう?清彦は二人が喧嘩を始めないか心配になり、急いで後を追った。しばらくして、清彦は戻ってきて、リビングへ入ってきた。綾は眉をひそめた。「二人はもう行ったの?」清彦はぎこちなく笑った。「いいえ」「どういう意味?」「碓氷先生と綾辻さんは、庭でお茶を飲みながら月見をするそうです」綾は言葉に詰まった。「申し訳ありません。酔ってはいますが、上司なので......」清彦は腰をかがめてお茶セットを手に取り、綾を見て申し訳なさそうに笑った。「上司の要求がどんなに理不尽でも、部下の私は従わなければなりません」綾は唖然とした。そして、清彦はお茶セットを抱えて出て行った。彩は苦笑した。「社長にこんな一面があったとは思いませんでした。でも、碓氷先生とは、かなり親しいみたいですね?」「以前は戦友でした」綾は唇を噛み締め、ため息をついた。「まあいいや。2階の客室の寝具セットを用意してきますので、子供たちのことはお願いします」「はい」......彩は働き者で気が利く人だった。綾が2階に寝具を用意しに行っている間に、彼女はダイニングテーブルを片付けた。綾が1階に戻ってくると、彩はすでにキッチンで食器を洗っていた。綾は洗わなくていいと言ったが、彩は最後まで洗うと譲らなかった。どうしても説得できなかったので、綾は時間も遅く
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