All Chapters of 死にゆく世界で、熾天使は舞う: Chapter 71 - Chapter 80

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第三章 第70話 バフォメット

自警団組合アルカディア本部に併設されている酒場に黒衣の吟遊詩人が姿を現したのは、絶え間なく雷鳴が轟き渡る夜のことであった。 外は激しい雨だというのに、男の衣服は全くと言って良いほど濡れておらず、薄らと笑みを浮かべているのも相まって何処か不気味だった。 彼はカウンターに腰を下ろすと、注文も程々に、その日たまたま酒場の接客業を任されていた受付嬢のルビィに声を掛ける。 余談であるが、人口が百万を超す大都市である帝都アルカディア。そこで働く自警団員は凡そ二千人ほど。商隊護衛などで不在の者もいるので、実際はもっと少ない人数でアルカディア周辺の治安維持を担っていることになる。 近郊の巡回、魔物の討伐、都市内の夜警……猫の手も借りたいほどに、人手が足りていない。 上記の通り深刻な人材不足のため、ルビィのように現場に赴かない者は決まって、書類仕事と酒場の接客業とを兼任していた。 殉職率の高いことで知られる自警団。給料は非常に良いが命は鳥の羽根の如く軽い。そのため、なり手が中々居ないのが実情であった。 「──君。そこの君だよ、可愛らしいお嬢さん」 「えっ……わ、私ですか……?」 人見知りなのだろうか。或いは、まだ酒場での接客業に慣れていないのだろうか。突然甘い顔立ちの優男に声を掛けられ、ルビィは困惑しながらトレイで顔を隠し、頬を赤らめる。 初心な様子の彼女を見つめると、吟遊詩人は何処か微笑ましそうに目を細めながら、
last updateLast Updated : 2025-06-30
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第三章 第71話 邂逅……"黒鉄の幽鬼"ラルヴァ

"冒涜者"バフォメットが帝都アルカディアの自警団組合を壊滅させ、シェイドと面識のある受付嬢のルビィを惨たらしく殺害してから一夜が明けた。 小休憩を挟みつつ、夜通し馬を駆り続けたセラフィナたちは、ハルモニア北方──帝都アルカディアとエリュシオンとの中間地点まで来ていた。 エリュシオンは、帝都アルカディアに次ぐ人口を抱える大都市である。都市の名の意味は"死後の楽園"であり、その名の示す通り国内最大規模の墓地があることで知られている。 死後はエリュシオンに骨を埋めたい。そう希望するハルモニア国民は数多く、今も尚エリュシオンはじわじわと都市の拡大を続けている。 何故、セラフィナたちはエリュシオンのある北方へと進んだのか。それは、"黒鉄の幽鬼"ラルヴァの目撃情報と被害が最も多いのが、アルカディアとエリュシオンとを結ぶ交通路だったことが主な理由である。 果たして、帝都アルカディアとエリュシオンとを結ぶ交通路から少し外れた草原にて、セラフィナたちは異様なる光景を目の当たりにすることとなった。 「──止まって」 ふと、違和感を覚えたセラフィナが馬を止めつつそう言うと、同じ馬の背に跨っていたシェイドとキリエは互いに顔を見合わせる。馬に乗り慣れていないキリエのために、シェイドは彼女を自分の前に乗せた状態で手綱を握っていた。 「……何かあったのか、セラフィナ?」 シェイドが尋ねると、セラフィナは無表情のまま、 「──マルコシアスが、過剰に反応してる。彼女は耳や鼻が利くから、何かを感じとったのかも」 言われてみれば、マルコシアスは背中の毛を逆立てつつ唸り声を発しており、かなり苛立っているようにも見える。
last updateLast Updated : 2025-07-02
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第三章 第72話 その剣鬼、古今無双の古強者にして

セラフィナとラルヴァ──両者はゆっくりと間合いを微調整し、何時でも剣を振るうことの出来る体勢を維持しながら、互いに睨み合いを続けていた。 その長さ──時間にして、凡そ二時間。 互いに剣の道に通じたる者……初太刀を外した際のリスクを考えれば、妥当な判断と言えよう。その道を極めた者ならば尚更。手数ではなく、一撃が勝敗を分けるのが剣の世界だからだ。 「…………」 セラフィナの背筋を、冷や汗が伝う。ラルヴァの佇まいは異様だった。怒りや憎しみといった負の感情が、微塵も感じられない。ただ氷を思わせる冷たい敵意と害意のみが覗き穴越しに、セラフィナへと向けられている。それが、兎に角恐ろしかった。 「────」 ラルヴァの注意はただ、セラフィナのみに向けられている。或いは、セラフィナ意外は眼中にないのかもしれない。 ──"ラルヴァは、丸腰の者は襲わない"。 シェイドも、そしてキリエも、セラフィナとラルヴァが対峙している間に、カイムの指示で密かに武器を外し丸腰になっていたのだから。 これで、二人が幽鬼に襲われる心配はない。裏を返せば二人の助力は期待薄。燃え盛る荷馬車を遮蔽物にして、マルコシアスが辛うじて助力出来るか出来ないか、といった状態だろうか。 身体は未だ本調子ではないが、やれるところまでやってみるしかない。セラフィナは心の中で覚悟を決める。 「────」 先に動いたのは、ラルヴァだった。
last updateLast Updated : 2025-07-03
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第三章 第73話 幽鬼討滅の筋道

夕刻── 近隣の街や村から応援としてやって来た何名かのドワーフやゴブリン、コボルトの男たちが、ラルヴァの犠牲となった自警団員や商人たちを次々と死体袋に入れ、荷馬車へと無造作に積み込んでゆく中、セラフィナは路傍に腰掛け、ぼんやりと空を眺めていた。 ラルヴァとの死闘で深手を負った右腕は、キリエの手によって治癒魔法が入念に施され、シェイドの素早い応急処置により三角巾でしっかりと固定されていた。 刃が骨に当たって止まったのが、不幸中の幸いだったろうか。何とか、右腕を喪失する事態だけは避けられたのである。 「…………」 彼女の視線の先では、不規則に輪郭を変える"崩壊の砂時計"が、黙々と時を刻み続けている。 その様子はまるで、今を精一杯生きている全ての生ある者たちを憐れみ、そして嘲笑っているかのようだった。 けれども、セラフィナの脳内の大半を占めていたのは砂時計のことなどではなく、全く別のことであった。 「……ラルヴァ」 "黒鉄の幽鬼"ラルヴァ。数刻前、刃を交えた黒き騎士の姿をした強大なる怪物。剣技と卓越した身体能力のみで、彼は正しく古今無双とも言える強さを見せつけた。 そんな彼と死闘を演じる中で、セラフィナは確かな手応えを感じていた。 ──ラルヴァの正体は恐らく、剣聖アレスその人。自分が行方を捜し続けていた、最愛の養父。認めたくないと言う思いもあったが、その身で感じた剣圧、そして目の当たりにした戦い方は間違いなく彼のものだ。 "獣の王"を称
last updateLast Updated : 2025-07-04
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第三章 第74話 エセルドレーダ

ハルモニアや聖教会勢力に限らず、歴史や伝統ある都市には必ずと言っても良いほど、"カタコンベ(地下墳墓)"と呼ばれる場所が存在する。 その多くは、聖教会の迫害から逃れた異端者などが、殉教者を弔いつつ自らの信仰を守った場所。大規模なものになると祭壇、礼拝堂、洗礼場などを備えた集会場としての機能を持つものもある。 異端者にとって、貴重な活動拠点となるカタコンベであるが、裏を返せば異端審問会にとっては絶好の狩場ともなり得る、正に諸刃の剣という言葉が適する場所であった。 そして、奇しくもセラフィナたちが"黒鉄の幽鬼"ラルヴァと会敵した日の夜、枢機卿クロウリー率いる異端審問官部隊による誅罰が、聖地カナンの地下に広がるカタコンベにて行われようとしていた。 煌々と燃え盛る松明の明かりが、整然と列を成している。列成す者たちは皆、黒の装束を身に纏い、黒い目出し帽と三角頭巾でその素顔を覆い隠していた。 手には聖典を携え、腰には十字架を模した長剣を帯び、呪詛の如くボソボソと、聖典の一節を口ずさんでいる。 彼らは"不死隊"──ただの異端審問官ではなく、枢機卿クロウリー直属の精鋭部隊である。普段は神父や修道女として日常生活の中に溶け込んでいるが、主たるクロウリーの召集が掛かると即座に専用の装束を身に纏い、彼の元へと馳せ参じる。 総指揮官は枢機卿クロウリー、副官は彼の右腕たる異端審問官メイザース。その強さは、聖教騎士団の最精鋭"カルディナル親衛隊"にも引けを取らぬと言う。 影の中より一頭の黒い大型犬を伴い、青鹿毛の軍馬に跨った初老の男が現れると、不死隊の面々は無言のまま一斉に敬礼する。 枢機卿クロウリー……往時の勢いを失った聖教会を牛耳る稀代の怪物。"最後の魔術師"の異名を欲しいままにする、シェイドの仇敵。
last updateLast Updated : 2025-07-05
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第三章 第75話 天陽に坐したるは傲慢の王

遥かなる天空──太陽を象った巨大な玉座に、人型の輪郭を有するその怪物は威風堂々たる威容を誇りつつ、どっかりと腰を下ろしていた。 玉座の左側に大天使ガブリエルを侍らせ、何処か気怠そうに頬杖を付きながら、眼前にて恭しく敬礼する天使長ミカエルを見下ろしている。 全身を光で覆い隠しているため、その者の姿を目視で確認することは叶わない。けれども、その者の本来の姿が途轍もなく醜悪で悍ましいであろうことは、玉座の傍らにて小さく震えているガブリエルの様子からも明らかであった。 「……面を上げよ、天使長ミカエル」 「御意──我が主よ、全知全能なる創造主よ」 ミカエルが顔を上げると、その者は嗄れた声で含み笑う。その様子はまるで、自分の創った作品の出来に満足する芸術家気取りの男のようである。 「其方自らが余に謁見を申し出るとは、実に珍しきこともあったものだ。天使長ミカエル」 「はっ──我が主に、お伝えせねばならぬことが幾つか生じました故」 ミカエルがこのようなことを言う時は、大抵悪いことが起こった時だ。光に覆われて見えぬその者の顔色をそれとなく窺いながらも、ガブリエルは不安そうに眉を顰める。 「一つ──アズラエルの後を継ぎ、死の天使の役割を担っておりました大天使サリエルが、忽然と天界より姿を消しました。恐らくは堕天したと見て、間違いはないかと」 「……何だと? サリエルが? 堕天?」 大天使サリエルの堕天──その報告を聞くや否や、その者の全身から激しい怒気が荒れ狂うエネルギーの奔流となりて溢れ出す。 大天使サリエル──"神の命令"を意味する名を与えられたその天使は慎ましい性格ではあったものの、ミカエルやガブリエルといった主だった天使たちとは深い交友関係にあった。
last updateLast Updated : 2025-07-06
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第三章 第76話 今はただ、霊鳥の坐す御許へ

"黒鉄の幽鬼"ラルヴァと会敵した翌日── "鳥の王"と謳われる霊鳥シームルグの坐す南方を目指し、セラフィナたちは馬を進めていた。 だが、ラルヴァとの激闘で深手を負ったセラフィナの傷の状態が予想以上に芳しくなく、この日はそれ以上の南下を止め、最寄りの街で宿を取り、暫し身体を休めることとなった。 「…………」 寝間着であるシルク製の白いワンピースに着替えたセラフィナはベッド上で仰向けになると、無表情のままじっと天井を見つめていた。 横になりながら考え事をしている時の癖なのか、ワンピースの裾からスラリと伸びた、フリルの付いたくるぶし丈の白い靴下を履いた細い両足をブラブラと所在なげに揺らしている。 「──セラフィナ様」 宿の関係者から借りてきたと思われるワゴンを押しながら、傍らにマルコシアスを、肩にカイムを侍らせたキリエが室内へと入ってくる。 「──うん? キリエ、どうかしたの?」 そう言ってベッドから身を起こすと、セラフィナは部屋に常備されているスリッパを履きながら優雅に立ち上がる。 「もう……駄目ですよ、ちゃんと横になっていないと。貴方様は今、圧倒的に血が足りていないんですから」 倒れても知りませんから──口ではそう言いつつも彼女は慣れた手付きでテキパキと、部屋の中央に設置されたテーブルの上にワゴンで運んできたものを配膳してゆく。 幾つかのチョコレートや茶菓子に、大きなカップに並々と注がれたほかほかのココア。そしてハルモニア国内で最大手の新聞が一部。 「ほら──頼まれたもの、貰ってきましたよ」
last updateLast Updated : 2025-07-07
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第三章 第77話 死と死が、干戈を交える時

同時刻、某所── 雷鳴轟く、暗雲の中──雨粒に全身を打たれながら、その両者は対峙していた。 ヴェールの如き薄衣を纏い、虹色に輝く二対の翼を生やした中性的な見た目の黒髪の天使。 華奢な体躯に見合わぬ、身の丈以上もある巨大な三日月鎌を手にし、固く両目を閉じている少女のような見た目の淡い金髪の天使。 前者は天空の神ソルに背き、"獣の王"の傘下に加わった元・死の天使アズラエル。後者はアズラエルが三日月の魔女アスタロトに敗れた後、彼の持っていた死の天使としての権能と役割を代わりとしてソルより与えられた、元・大天使サリエルである。 「──会いたかった。大天使サリエル。否……元・大天使サリエルと呼ぶべきかな? 今や君は、私と同じくソルに背いた叛逆者だからね」 変声期前の少年を思わせる声でアズラエルが声を掛けると、サリエルは彼を警戒しているのか無言のままわずかに身を強ばらせる。 ソルの差し向けた追っ手たちと何度も干戈を交え、そしてその度に退けてきたのだろう。サリエルの小さく華奢な身体の至るところに、まだ真新しく痛々しい傷が刻まれ、今も尚じわじわと血が滲み出している。 「……私に一体、何の用があるのです? 貴方の言う通り私は、主に背いた叛逆者。大天使でも何でもない、ただの煙なき炎の子」 やや舌足らずな幼さの残る声で、サリエルはアズラエルに問う。両目は固く閉じられていたが、顔はしっかりとアズラエルの方を向いていた。 「──単刀直入に言おう、サリエル。"獣の王"の傘下に加われ。君ほどの存在が、このまま消えてゆくのは実に勿体ない」 「…………」 「君も、私と同じなんだろう? ソルに忠節を尽くすのが馬鹿馬鹿しくなった。あんな暗愚な主君の下で、破滅へと通ずる道をただ只管に突き進むだなんて考えると、とて
last updateLast Updated : 2025-07-08
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第三章 第78話 手を差し伸べる者と、嘲笑する者

サリエルが意識を取り戻すとそこは、見知らぬ場所だった。森の中だろうか。人の気配は、全く感じられない。けれども不思議と心が休まるような……世界にこんな場所があったのかと、感動すら覚えた。 鳥は歌い、木々はざわめき、川のせせらぎが旋律に彩りを添えて、そよ風がそれらの音楽を乗せ、穏やかに吹き過ぎてゆく。柔らかく、暖かな木漏れ日が顔に当たる。何だか、ひどく心地好い。 「──気が付いたようね。ふふっ、安心したわ」 物腰の柔らかそうな若い女性の声が、頭上から聞こえてくる。そこで初めて、サリエルは自分が誰かの膝の上で横になっていることに気付いた。 「…………!」 後頭部に伝わる柔らかな感触は、恐らく声の主の太ももであろう。漂う雰囲気からして恐らく、死の天使アズラエルとの戦いに割って入り、自分を庇うように彼の前に立ち塞がった存在。 「ふふっ……思い出したようね? サリエル」 そうだ。思い出した。自分は── 「──きゃっ!?」 突然、ガバッと身を起こすサリエル。相手は急な動きに吃驚したのか、何とも可愛らしい悲鳴を上げる。 「……教えて下さい。此処は何処で、貴方は一体何者なのですか。私の敵なのですか、それとも味方なのですか?」 一体、何の目的があって、自分を助けたのか。何故、サリエルという名を知っているのか。そもそも何故、自分がサリエルであることを知っているのか。 何故、何故、何故──何処か怯えた様子で、サリエルは矢継ぎ早に相手に問い掛ける。少し前まで、自分を取り巻く全てが敵となっていたのだ。それもまた、無理からぬことである。 疑心暗鬼に駆られた様子のサリエルを憐れむかのように、相手が憂いを帯びた溜め息を一つ吐くのが聞こえた。 「……サリエル。全てが敵に見えてしまっているのね? 無理もないわ、あんな酷い目に遭えば。可哀想に、ね……」 両手を大きく広げ、相手はサリエルを抱きしめようとする。それに対し、サリエルはいやいやをするように首を横に振りながら、腰を抜かしたような姿勢のまま後退る。 「こ、来ないで……」 「大丈夫……怖がらないで?」 背後に大木でも生えていたか、背中全体を何か固いものに強かに打ち付ける。アズラエルとの死闘で傷付いた左翼や脇腹はまだ癒えてはいないようで、ぶつかると同時にズキッという痛みが折れた左翼や
last updateLast Updated : 2025-07-10
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第三章 第79話 蝿の王

数日後の夕刻── セラフィナたちは、"鳥の王"と謳われる南方の守護者シームルグの坐す神殿都市ミケーネ……そこに辿り着くまであと一日、というところまで馬を進めていた。 遙か遠方にて、蜃気楼の如く揺らめく"崩壊の砂時計"を何処か感情が凪いだような目で見つめながら、セラフィナは先行するシェイドたちを呼び戻すべく、馬上より高らかに指笛を鳴らした。 流石と言うべきか──指笛の音を聞き付けたシェイドは、手慣れた手綱捌きで馬の向きを変えて引き返してくる。自らの手前にキリエを乗せた二人乗りの状態にも関わらず、その手際たるや実に鮮やかなものであった。 「……どうした、セラフィナ?」 「──馬も君も疲れているでしょう? 今夜は、ここで休息を取ろうかなと思ってね。近くに、森や小川もあるみたいだし」 「……そうか。そう、だな。じゃあ、俺は森へ行って焚き火用の枝でも拾ってくるよ。キリエは、川へ行って水を汲んできてくれないか?」 「は、はい」 「……助かるよ。じゃあ──」 ひらりと馬の背から軽やかに飛び降り、馬に乗り慣れていないキリエが降りるのを手伝うと、シェイドは武器を帯びたまま、近くの森の中へと姿を消した。 「……シェイドさん。元気、なさそうですね」 「……そうだね。無理もないけれど」 沈痛な面持ちで、胸にそっと手を当てながらそう呟くキリエ。そんな彼女に同調するように小さく頷きながら、セラフィナは栗毛の馬の背より軽やかに飛び降りる。 「でも……慰めの言葉は却って、彼の神経を逆撫でするだけだから。私たちには、どうしようもな
last updateLast Updated : 2025-07-11
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