彼からそう遠くない後ろのサービスを提供する車では、鷹、狐、蜂が会場内部のロゴ入り作業服に着替え、「ドラゴン」が用意した完璧な身分証明書を頼りに、技術支援チームに混じって別の検査口にすんなりと入り、会場内部へと潜入することができた。目に見えない戦いが、静かに始まっていた。博人は無事に検査口を通過した。会場に入る前に、黒いスーツを着たスタッフが丁寧に彼を呼び止めた。「西嶋様、こちらはニックス様がご用意されたものです」スタッフは肉眼ではほとんど見えないほど精密な通信機を差し出してきた。博人は無表情でそれを受け取り、耳につけた。「私の舞台へようこそ、西嶋さん」ニックスの聞き心地よくも冷たい声がすぐにイヤホンから聞こえてきた。「どうでしょう……あなたのために用意したオープニングを気に入ってくれることを願っていますよ」博人は彼女を無視し、まっすぐに数千人を収容できる巨大な円形の会場へと歩いて行った。この時、会場は満席だった。各国の要人、人道活動支援組織の代表、そしてメディア関係者が会議の始まりを待ちわびている様子だった。ニックスの「指示」により、博人は会場中央の、視界が抜群の席に座らされた。会場の隅々に隠されたカメラが全て自分に向けられていることを、彼ははっきりと感じ取れたのだ。彼こそが、この残酷な舞台の唯一の主役であり……観客でもあるのだ。その間、鷹たちは会場内部に入ると、技術チームから素早く離脱し、幽霊のように複雑な内部者が使用する通路へと潜り込んだ。「蜂、会場の警備システムへの侵入をしろ!人質の位置を見つけるんだ!」「了解!やってるよ!相手のファイアウォールは手強いな……時間がかかりそうだ!」ちょうど午前十時、会議は時間通りに開始された。世界平和賞受賞者の経験もある名高い国際人道活動支援代表がステージに上がり、「戦場で生活する子供たちを救う」というテーマのスピーチを始めた。そのスピーチは情熱と説得力があり、会場全てから拍手をもらった。「なんて感動的なスピーチなんでしょう、西嶋さん」イヤホンから、ニックスの嘲笑気味の声が再び聞こえてきた。「命を救うことにすべてを尽くした天使のような人ですね……残念なことに、彼はすぐに、自分の命さえも救えなくなるでしょう」博人は心臓が一瞬止まったように感じた。「どういう意味
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