悠良の頭は真っ白で、前に薬にやられた時よりも動揺していた。「じゃあ、どうすれば......?」そう言いながら、ふと思い出した人の名前を口にした。「......莉子を呼んでこようか?安心して、絶対に内緒にするし、彼女が寒河江さんを脅かすような真似もさせません。証人にもなりましょう、薬を盛ったのは彼女だって」忠誠心を示すために、悠良は誓うような仕草までしてみせた。浴室の明かりは昼間のように明るく、鋭く黒い瞳には読み取れない感情が宿っていた。彼が黙り込んだままの間、悠良の心臓はドクンドクンと音を立てて跳ねていた。どれほどの時間が過ぎたのか、ようやく彼が口を開いた。「俺のことゴミ処理場か何かだと思ってるのか?誰でも受け入れると?」彼の言っている意味が、一瞬で理解できなかった。「今、薬の効果をしのげるのが先でしょう?ただの生理現象ですから。目をつぶれば見えないですし」「......ふん、確かに一理ある。電気を消せば」伶は珍しく反論せず、悠良は単純に彼が納得したのだと勘違いした。「じゃあ、今から莉子を呼んできますね」そう言って立ち上がろうとした瞬間、彼に掴まれていた手首にまったく力が緩んでいないことに気づいた。伶は数秒間、じっと彼女を見つめたまま、無感情な声で言った。「どうせ電気を消したら見えないんだ、わざわざそんな面倒なことしなくていい」その言葉が終わると同時に、浴室の灯りが消え、室内は一気に暗闇に包まれた。悠良がまだ何も理解できていないうちに、後頭部が熱く湿った手に押さえつけられた。唇が重なった瞬間、悠良の神経は張り詰めた。最初はただの接触かと思ったが、次の瞬間には深いキスに変わっていた。唇の擦れ合いが激しくなり、彼の支配的な呼吸が彼女を包み込む。唇をこじ開けられ、彼は迷いなく彼女の中へと入り込んでくる。握られた指先に力が込められ、心臓のリズムも彼のペースに乱されていく。彼の強引な侵略に従って、シャンパンのような香りが口内に広がる。息が苦しく、酸素が足りなくなってきていた。本能的に顔を背けようとした瞬間、彼は顎を掴み、ざらついた指が彼女の滑らかな肌をなぞる。その感覚に、悠良の全身が震えた。彼女の呼吸が乱れているのに気づいたのか、伶のキスは少しだけ優しくなった。
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