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All Chapters of only/otherなキミとなら: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話《去年》秋①

 大学に来て半年も経った頃には、晴翔とはかなり打ち解けた。 きっと晴翔が誰とでも仲良くなれる社交性の高い人間だからだろうが。 時々には理玖の研究室で一緒に昼飯を食べるくらいの仲にはなれた。 「先生、届いたらすぐお弁当、持っていきますね!」   講義終わりの教室移動中、受付の前で晴翔に声を掛けられた。 咄嗟に反応できずに、理玖は首を傾げた。 (今日は一緒にお昼を食べる約束、していたっけ?)  いつもなら事前に声を掛けてくれる。 今がそうなのだろうか。あんまり大勢の前で話されるのは、理玖としては恥ずかしい。 反応がいまいちだと思ったのか、晴翔が駆け寄ってきた。 「今日はプライム開発の試供品のお弁当が届く日ですよ。まだ届いていないので、届いたらすぐお持ちします」  説明されて、思い出した。 プライム開発は医療介護系の食事開発をメインとした開発販売をしている会社だ。理研にいた頃からの付き合いで、今も開発補助で関わっている。 (WOとは直接関係がないけど、関わっておくと研究費とか何かと融通がきくからな)  難点があるとすれば、弁当を食べた後のアンケートの記入項目が多くて細かくて、うんざりする程度だろうか。 (論文一つ仕上げると思えば安いよね。プライムさんはお金持ちだから)  自分に言い聞かせて納得する。 忘れていただけに、今日の仕事が一つ増えた感じで、ちょっと残念だ。 「今日は届くの、遅いですね。先生のお昼休憩の時間は大丈夫ですか?」  晴翔がしきりに時計を気にしている。 事務所の他の職員は弁当を取り出したり財布を片手に移動を始めているから、もう昼の
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第12話《去年》秋②

 理玖の弁当は晴翔が伊藤に届けてくれた。 プライム開発の試作弁当を食べながら、理玖はアンケート用紙を埋めていた。 「嚥下困難な患者用のソフト食か。今回、重視したのは見た目と彩り……」  嚥下困難者用のソフト食は、誤飲防止のため粥やペーストが多い。副菜などは、元の食材や形がわからないものばかりだ。 それでは食欲もわかないという意見から、食べ物の形を再現したソフト食の開発をしている企業は、割と少なくない。 中でも真っ先に着手したのがプライム開発だ。 「幾つか見たことあるけど、やっぱりプライムさんはクオリティ高いな」  今日の試作弁当はうな重だ。 見た目は申し分なくウナギだし、香りも良い。舌で潰せる柔らかさで、嚥下時に突っかかりもない。 強いて言うなら、米がどうしても糊のように感じられてしまう点だろうか。以前に比べれば改良されているが、もう少し、米粒感が欲しい。 「米と……、丼もの以外のおかず系の開発が今後の課題かな」  アンケート用紙にびっしりと意見を書き込む。 息を吐きながら、一緒に入っていたパンフレットを数枚、流し見た。 「既に販売している分は売れ行き好調って話だったけど」  商品の紹介パンフの他に、会社紹介のパンフが入っていた。 「新しくなったのかな? へぇ、プライムさんてSky総研の傘下に入ったのか」  Sky総合研究所といえば、医療業界に特化したシンクタンクというイメージが強い。ここ数年で頭角を現し、めきめきと業績を伸ばしている。  何となく興味が湧いて、ネット検索を掛けてみた。 「あれ、慶愛大もSkyさんと協業してたんだ。医学部が大きいからかな」&
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第14話《去年》冬①

 あの一件をきっかけに、理玖は時々、事務の伊藤と弁当を交換するようになった。 その度に兎大福を付けてくれるので、理玖もお返しにお菓子を添えるようになった。 どういう訳か理玖の弁当は事務員の間で人気らしい。 お弁当を交換したいという人が増えて、時々には伊藤以外の事務員とも交換している。 そのお陰で、晴翔以外の事務員とも顔見知りになり、親しくなった。  そんな毎日を過ごすうち、気が付けば年が明けて二月になっていた。 「先生の負担になるからダメって、事務の皆に注意しておきますね」  いつもの通り、午後の二時になり、晴翔が雑用に来てくれた。 今日は溜まった要らない書類をシュレッダーにかけてくれている。 晴翔にしては珍しく不機嫌な顔をしているなと思う。 「お弁当を作るのは毎日だし、料理も息抜きだから、構わないよ」  交換しなくても結局は自分の分を作っている。 毎週月曜日だけは晴翔の分と合わせて二人分作る。 毎日でも良いと言ったら「負担になるから」と週一回を提案された。 (お弁当を作ると晴翔君がこの部屋で一緒にお昼ご飯を食べてくれるから、僕としては毎日でもいいんだけどな)  一緒にいられる大義名分が増える。 そういう理由でもないと、何と言って誘ったらいいか、わからない。 最近は晴翔の方から仕事終わりにご飯に誘ってくれたりするので、前より一緒にいる時間が増えたのだが。自分から誘う勇気はない。 「先生、料理上手すぎるんですよ。あの弁当でどれだけの胃袋を掴むつもりですか」  何故か晴翔が深い深い溜息を吐いている。 理玖としては好きなように作っているだけで、特別凝った弁当を作っているつもりはないのだが。 
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第16話《4/23㈬》芽吹きそうな想い①

 弁当の盗難については、大学に伝えただけで警察には通報しなかった。 部屋に入って盗まれた事実はあるものの、中身を食べたのは事務員の伊藤だし、弁当箱は戻ってきている。 何より、犯人は学生と思われる状況が大学側に二の足を踏ませた。 目下の問題は不法侵入ということで、理玖の研究室の鍵を交換して様子を見る対策が打たれた。 「これからは俺が先生の担当事務兼助手として常駐します」  大学側が打ったもう一つの対策が、事務員空咲晴翔を研究室に常駐させる手段だった。 講師という肩書でありながら、理玖の待遇は教授並みに上がった。 (出向した時から研究室も研究のための時間も貰っていたから、講師の待遇ではなかったけど)  ついに助手が付いた。しかも晴翔が仕事中、ずっと同じ部屋にいる。 理玖としては願ったりだが、晴翔の顔色は冴えない。 「警備強化するっていいながら、こういう事件を放置するのって、どうなんでしょうね」  晴翔の怒りは大学側の対応の方らしい。 そういえば、折笠准教授の助手で入った男が犯罪集団と繋がりがあるかもしれないotherで、警察が介入するらしい話を、二月くらいにしていた気がする。 (今は四月だから、警察が既に入っているかもしれないのか)  本当に警察が介入しているかはわからないが、四月から構内の警備を強化すると大学側から通達があった。日中の警備員が増員されたのだが、そこに覆面警官が紛れているらしいというのが、もっぱらの噂だ。 (only狩りは多発しているし、新年度に合わせて警備強化するのは理解できる。警察の介入があっても不思議ではないな)  only狩りの被害は高校生や大学生といった若い世代に集中している。性を目的にした犯罪だけに、年齢層が下がるのだろう。標的に
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第18話 扉の向こう①

 ベッドにぐったりと横たわった晴翔は、大きく息を吐いた。 (失敗した。初日だからって、気合入れ過ぎた)  これからは理玖と二人きりで一日中、同じ部屋で仕事をする。 理玖の強すぎるフェロモンに対抗すべく、阻害薬はギリギリの量を内服してきた。ピアスに仕込んである皮下注射の抑制剤も強めの処方を貰っている。 (軽くオーバードーズになってるんだ。しかも理玖さんに見破られた、多分)  講師とはいえ、理玖も医師なのだから、当然と言えば当然だが。 せめてSAフェロモン受容体阻害薬とPOEフェロモン抑制剤のオーバードーズだとバレていないことを祈るばかりだ。 (無理かな。きっと気が付くよな。記憶が曖昧なあの状況を不審に思わないわけない)  肩を抱き寄せただけで、理玖のフェロモンが強くなったのは、あの時、晴翔にもわかった。 自分のフェロモンに酔って蕩けた理玖の顔を見たら、抱き締めずにはいられなかった。晴翔のフェロモンに煽られて更に大量に理玖のフェロモンが放出されていた。そのせいで、理玖の記憶は曖昧なのだろう。  あの時の状況を冷静に振り返れば、理玖なら自分の記憶が曖昧な理由に辿り着く。今の晴翔の症状と結び付けて考えれば、答えは容易に導き出せる。 (俺がotherだって気が付いたら、理玖さんはきっと怖がる。傍にいられなくなる)  理玖の研究室への常駐を志願したのは晴翔自身だった。 犯罪者疑いのotherが学内にいるかもしれない状況で、理玖を狙って事件が起きた。たとえ軽微な犯罪だったとしても、後に大きな事件に繋がる可能性だってある。 今のうちに、打てる手は打っておきたかった。 (こんな危険な場所にいつまでも置いておくくらいなら、いっそウチに来てもらったら……) 
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第20話《4/24㈭》折笠准教授の助手

 結局、昨日の晴翔は一時間も休まずに起きて仕事をこなし帰宅した。 本日も、いつものように朝から出勤している。 「休んでも良かったのに。医療機関を受診しなくて良かったの?」  PC作業の傍らで声を掛ける。 同じようにPCに向かって作業しながら晴翔が返事した。 「只の寝不足なので、平気です。ご心配おかけしました」  仕事する横顔は昨日より血色が良さそうだ。 とりあえず、理玖は安堵した。 「保健室経由で処方を出してあげられるから、辛いときは僕に相談するんだよ」  何となく、大学内で他の医者に晴翔を診せるのも気分が悪い。 一緒にいる理玖が一番よくわかっている、と思いたい。 「はい、その時は、よろしくお願いします」  晴翔が振り返り、良い笑顔を向けた。 理玖が好きなイケメン王子様スマイルだ。その顔で素直な言葉を言われると、何も言えない。 (いつものキラキラが戻ってきてるし、大丈夫かな。冷汗もチアノーゼもなさそう)  遠巻きに見てわかる範囲の診察をして、理玖はまた自分の作業に戻った。  しばらく無言で仕事していると、研究室の扉がノックされた。 理玖は顔を顰めた。このノックの仕方は、折笠だ。 「はい、今開けます」  理玖の研究室は件以来、在室中も施錠している。 晴翔が扉を開けると、案の定、折笠の姿が見えた。 「やぁ、向井君。色々大変だったみたいだけど、元気そうだね」  部屋に入ってきた折笠が意味深な言い回しをする。 
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