「僕はもう大丈夫だけど、空咲君の方が顔色が悪く見えるよ。大丈夫?」
立ち上がり晴翔の隣に立つ。
頬に手を添えて親指をするりと滑らせた。その手で首筋に触れる。
「やけに体温が低いね。少し汗ばんでる。血圧、下がっていないか?」
手首の脈を確認しようとした理玖の手を晴翔が掴んだ。
その手は少し震えて、やはり汗ばんで感じる。
「体調が悪い? 無理しなくていいから、休んで構わないよ。隣の部屋のベッドは自由に使っていいから」
理玖を見上げる晴翔の顔が、驚いている。
驚いているし、戸惑って見える。
(前にも、こんなことあった。胸ポケットに入るくらいのリスのあみぐるみが欲しいと言われて、胸ポケットを覗き込んで)
あの時は無意識で、不用意に近づきすぎた自分を後悔した。
理玖は、晴翔を見詰めた。
晴翔が目を逸らして理玖の手を強く握った。
「先生は、こんな風に他人に触れるの、好きじゃないと思ってました」
俯いた晴翔の声が震えて聞こえる。
「誰にでもはしないよ。今は、空咲君の調子が