理玖が寝息を立て始めたのを確認して、晴翔は部屋を出た。 仕事部屋の方に戻り、自分のデスクの椅子に腰を下ろす。 「すぅぅ、……はぁぁぁ」 大きく息を吸って、長く吐いた。 (なんだ、あの可愛い生き物は。ギャップ萌えって理玖さんのための言葉かな。理性飛ばなかった俺、偉すぎるだろ) 椅子の背もたれに首を預けて、晴翔は呻った。 今日は理玖のフェロモンがいつもより弱かった。というより緩やかだった。だから耐えられたが、ピアスは連打した。 (薬はめちゃめちゃ使ったけど、理玖さんのフェロモン、前と感じ方が変わった気がする。今日は放出が少なかったのかな) 穏やかに増えてくれたお陰で、少しは側に居られたし、触れられた。 とはいえ、あれが限界だ。 (好きな人にベッドの上で喰っていいとか言われたら、otherじゃなくても耐えられないと思う) どさくさに紛れて額にキスして唇に触れてしまった。 ぷっくりした柔らかな唇のせいで、危うく理性が飛ぶところだった。 思い返すだけでも、もだえる。 冷静になろうと、もう一度深呼吸した。 晴翔は佐藤に怯えていた理玖を思い返した。 (あの怯えようは、普通じゃない。耳元で何か囁かれていたようだったけど。知り合いか? それとも、脅すような言葉を?) 理玖がrulerだという噂につられて、犯罪集団のotherが接触を図ってきたのだろうか。 佐藤が犯罪集団の一員なら、折笠も関係者なのだろう。 (折笠准教授のあの顔、理玖さんの反応を確認しているような、楽しんでいるような表情だった。佐藤を助手で呼んだのは折笠だし、無関係じゃないんだろうな)
Last Updated : 2025-06-14 Read more