部屋に入ると同時に、星は前置きもなく、自分の考えている作戦を一気に話して聞かせた。雅臣は、最後まで口を挟まずに耳を傾ける。だが、星が「忠の会社をわざと罠にはめて、底値で買い叩く」と言ったところで、その瞳がわずかに揺れた。「その案……影斗が出したのか?」星みたいなビジネス初心者が、自力でここまで組み上げられる策じゃない。いくら勉強のセンスが良くても、実戦の修羅場を踏んだ経験がないと、こういう泥くさい発想は出てこない。アドバイスした相手は、かなりのやり手だ。奏ではない。彼もまだ駆け出しだ。航平でもない。それだけ先を読む頭があるなら、そもそも怜央の罠に正面から突っ込んだりしない。残る候補は――影斗。……だが、どうにも腑に落ちない。影斗に知恵がないわけじゃない。むしろ頭は切れる。けれど、あいつは根が真っ直ぐだ。必要とあれば多少の裏技は使うタイプだが、今回の底値買い叩きは、きれいごとだけじゃ済まない。必ず、陰の部分も絡む。星はきっぱりと首を振った。「影斗じゃないわ」それ以上言う気はなさそうで、そこから先は口をつぐむ。雅臣も、それ以上は追わなかった。……葛西先生あたりか?それとも川澄くんが父親に頼んだ?そんな推測を心の中で転がしながら、言葉を続けた。「星。始める前に、一つだけはっきりさせておく。もし本気で忠を罠に引きずり込むつもりなら、お前自身も、それなりの代償を払う覚悟が要る」彼は、この計画の肝を一瞬で見抜いていた。「つまり、忠に星は本気でやらかしたって信じ込ませない限り、あいつの次の一手は引き出せない。言い方を変えれば――まず最初に、忠にお前を狙わせる状況を、わざと作らないといけないってことだ」星は、小さくうなずいた。「それくらいは、覚悟してる」雅臣は、そこで言葉を切らずに続けた。「この手の計画を動かすなら、まずお前自身がある程度負けてみせる必要がある。少し損を出して、相手を安心させるんだ。でも今のお前の会社は、どう見ても右肩上がりだ。ここでわざと赤字を出せば、評判に傷がつくのは避けられない。もちろん、うまく底値買いに持ち込めれば、その傷は一時的なもので済む。だが──しくじったら、ただの大損だ」かなり分の悪い賭けだった。後ろで全てを肩代わりしてくれる親
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