正道が、腕を組んだまま口を開いた。「星が原株を売れず、こちらにも助けを求めに来ないとなると……考えられるのは一つだな。雅臣たちが、資金を出したか?」靖は、静かにうなずいた。「その可能性はある。それに――雅臣なら、やると決めたことは本当にやる男だ。もし本当に星のために資金を用意したのなら……忠と翔は、すぐに第二段階の計画を動かすはずだ」第二段階――それは、彼らの会社への攻撃だった。星のために流動資金を大量に回した企業を、星が小林グループの買収を終えたタイミングで、一斉に叩く。資金繰りが乱れれば、経営は一気に傾く。持ちこたえられなければ、その場で破綻。たとえ持ちこたえても、資金の穴を埋めるために株を売らざるを得ず、企業体力は大きく削られる。うまくいけば、その会社を乗っ取ることもできるし、株価を操作して空売りで儲けることだってできる。星は、情に厚い。自分を助けてくれた相手が窮地に陥るのを、黙って見ていられる性格ではない。だが――買収を終えたばかりの星に、その穴を埋められるほどの資金はない。そのとき、残される選択肢はただ一つ。――原株の売却。追い込まれた状態で交渉に出れば、主導権は完全に相手側に移る。一歩譲れば、二歩、三歩と譲ることになる。売却価格も、今より確実に下がる。今ならまだ、立場をある程度守りつつ、感情面での駆け引きも使える。靖は、深く息を吐いた。「どうか……星が愚かな選択をしないように」雲井家にとってベストな展開は、こうだ。星が小林家の買収を完了したタイミングを狙って、雅臣ら星を助けた企業を一斉に攻撃する。原株を手に入れてもいいし、神谷グループごと買収してもいい。星の後ろ盾を消せば、彼女を掌の上で転がすのは簡単だ。だが、星にとっては地獄でしかない。本物の絶望と痛みを味わわされることになる。星は新人で、しかも身内だ。一度潰してしまえば、二度と立ち上がれないかもしれない。だからこそ、靖としても、本音ではそこまでやりたくはなかった。――三つの利益を同時に狙える策。あとは、星がどの道を選ぶか。もし星が、助けてくれる人さえいれば、なんとかなると考えているなら――それは、若さゆえの甘さだ。正道が言った。「もし星が小林家の買収を諦めるなら――小林家の二十パーセント
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