彩香も、今回の星の失踪が仁志の仕業だなどとは微塵も思っていなかった。ただ、今の状況で仁志を連れて行けば、航平と仁志が確実にまたぶつかり合い、星を探すための貴重な時間が失われてしまうことは火を見るより明らかだった。仁志は黙って焦る三人を見つめ、それ以上は何も反論しなかった。航平は仁志を冷ややかに一瞥し、雅臣と彩香に言った。「雅臣、彩香さん、行こう」三人はすぐにその場から立ち去り、姿を消した。……時間を少し遡る。星が上の階へ上がって間もなく、廊下で雅臣と正面から鉢合わせた。雅臣が先に足を止めて声をかけた。「……星野さん」星は礼儀として小さく頭を下げただけで、それ以上話を続けるつもりはなかった。ここで彼と長話をして、また頭のおかしい清子に見られ、何か理由をつけて絡まれるのは絶対に避けたかったのだ。星が彩香から送られてきた部屋番号を探して廊下を歩いていると、ひとりの若い女性スタッフが近づいてきた。「お客様、何かお困りのことはございませんか?」高級ホテルの客室階には、客を案内するための専属スタッフが配置されていることが多い。「1103号室へは、どう行けばいいのかしら?」「1103号室は、この廊下の一番奥にございます。どうぞ、ご案内いたします」星は小さく頷いた。スタッフに連れられ、星は長い廊下の最奥にある扉の前までやって来た。そこには確かに、1103号室という表示が出ていた。スタッフが恭しく扉を開ける。「どうぞ、お入りくださいませ」星は入口に立ったまま、なぜかすぐには中へ入らなかった。明確な理由は分からないが、何かがおかしいという微かな違和感を覚えたのだ。星は念のためスマホを取り出し、彩香へ確認の電話をかけようとした。その瞬間――背後からドンッと強く背中を押され、星の体が無理やり部屋の中へ押し込まれた。ハッとして振り返った時には、すでに重い扉が外側からガチャリと施錠されていた。星は血の気が引くのを感じ、すぐに扉へ駆け寄って取っ手を回した。しかし、外から鍵をかけられた扉はびくとも動かない。密室となった部屋の空気には、どこか甘く重い、ねっとりとした香りが漂っていた。星は急いでスマホの画面をつけ、外部へ助けを呼ぼうとした。だがその時、画面には圏外と表示されており、電
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