彼女はいま、寄付者という立場を利用して、自身の注目度を一気に頂点まで押し上げていた。たとえネット上で全アカウントを封じられていようとも、二百億円の寄付ともなれば、必ず政府機関が報道する。国家機関のメディアアカウントを凍結するなど、誰にできようか。星にまつわるいわゆる黒歴史など、国営メディアにとっては取るに足らぬゴシップにすぎない。二百億もの巨額寄付は大々的に宣伝されるべきことであり、国としても人々が慈善活動に励むことを強く奨励している。その象徴として、星はうってつけの存在だった。彼女には無名のまま善行を積むこともできた。だが名前を出して寄付をする以上、相応の責任を背負わねばならない。公開の場での寄付は極めて厳粛な行為だ。いったん「どれほど寄付する」と明言した以上、その金額は必ず拠出しなければならない。しかもその資金が法に則った正当なものである限り、誰ひとりとして、その金に手をつけることはできない。たとえ本人であっても――もしそうでなければ、それこそ法律違反だ。星は警官に視線を向けた。「警察の方々、私はいったい何の罪に問われているのでしょう?」警官は答えた。「あなたが営業秘密を漏洩し、競合相手と接触した疑いがあると通報がありました。相手側は接触の証拠を提出しており、金額が巨額に及ぶため、厳正に処理する必要があります。......どうか調査にご協力ください」星は問い返す。「つまり、それだけでは私が犯罪者だと断定はできない、ということですね?」警官はうなずいた。「そのとおりです、断定はできません。ただ、通報を受けた以上、調査を行うのが私たちの職務です。ご理解いただきたい」「もちろん協力いたします。ただその前に、少し説明させていただけますか?」警官は周囲の記者たちに目をやった。今や星は公人同然の存在であり、多額の寄付もしている。冤罪を着せて名誉を傷つけるわけにはいかない。「捜査は非公開ですが、世間に対して弁明することは可能です」「ありがとうございます」丁寧に礼を述べた星は、先ほど質問した記者へと視線を向ける。「警察はあくまで調査のために私に協力を求めただけで、犯罪者だと断定したわけではありません。それなのに、なぜあなたは私を犯罪者だと決めつ
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