ミカエラは今朝も赤いドレスを着て、神殿を目指す。(朝の空も、風も、爽やかなものだけれど。今日は特に爽やかに見える。庭はもちろん、神殿に続く道まで輝いて見えるわ) 護衛を従えたミカエラは、笑みを浮かべながら足取り軽くいつもの道を辿っていく。(世界が輝いてる、とまでは言わないけれど、やはりアイゼルさまの贈り物は嬉しいわ) 神殿へと続く長い階段が視界に入って、ミカエラは一瞬だけ立ち止まり、身を固くした。(アイゼルさまから贈り物をもらったという噂が回れば、わたくしはまた階段から突き落とされるような目に遭わされるのかしら?) あの日は危なかった。 ドレスを着ているミカエラは、軽やかに身をかわすといったことは出来ない。(無視されることに慣れ過ぎていたけれど。わたくしは、狙われる存在なのだわ。わが身を守る術なんて身に着けてはこなかった。わたくしは、どうすればいいのかしら?) 冷静に考えたら分かることだ。 王太子の婚約者という立場で冷遇され過ぎていてピンとこないが、ミカエラは王妃になる立場なのだ。(王妃は何かと狙われるものよね? だからといって女性が護身術を身に着けてもさして役立つとは思えない。今さら体を鍛えても、襲撃を跳ねのけられるような力は付かないでしょう。だとしたら、女性ならではの方法で味方を増やしておくべき?) 少しためらうように立ち止まったミカエラは、珍しい人物から声をかけられた。「ミカエラさま。おはようございます」「おはようございます、ミゼラルさま」 ミカエラは慌てて礼をとった。 ミゼラルは第二王子でアイゼルの弟だ。 弟といっても母親が側室なので、アイゼルとは扱いが全く違う。 騎士団に所属する21歳の逞しい体をしたミゼラルは、よく鍛えた体は日に焼けた健康的な肌色をしていた。 黒い髪を短く切って後ろに撫でつけ、額をしっかり出しているので特徴的な赤い瞳がよく見える。 「神殿へ行かれるのですか?」「はい」 良く響く低い声で言う第二王子に、ミカエラは頷きながら返事をした。(アイゼルさまとは違った魅力のある男性だから、ミゼラルさまも女性から人気があるのよね) 第二王子とはいえ王子は王子だ。 ミゼラルとは違った男臭い王子は、令嬢たちから熱視線を向けられていた。 現在は婚約者のいない第二王子であるミゼラル相手であればあるい
Huling Na-update : 2025-07-11 Magbasa pa