Sグループ社長秘書である月子は、K市金融業界をよく知っていた。洵のゲームには将来性がある。しかし、一樹自ら出向くほどではないはずだ。一樹が来たということは、つまり、このプロジェクトは新領域キャピタルのプロジェクト担当が見つけたものではなく、一樹の指示で竜也がデューデリジェンスを実施しただけということだ。月子はもう静真とはっきりと線を引いた。だから、彼の親友である一樹とももちろん、距離を置くつもりなのだ。月子は洵と陽介にこの提携の話を断らせ、自分が投資するつもりだった。ところが、洵が先に口を開いた。「森部長、この提携はなかったことにしてくれ!」陽介は驚きを隠せない。「洵、お前……いいのか?」「荷物をまとめて出よう」洵の態度は強気で断固としていて、議論の余地は全くなかった。陽介は怒りで顔が真っ青になった。一樹は来る前に月子がいるとは思っていなかった。竜也から彼女の名前を聞いて、来ることにしたのだ。「そう慌てるなよ。提携をしなくても、お茶くらい飲めるじゃないか」一樹は穏やかに笑った。洵は一樹の色気づいた目線が気に入らなかった。初対面のときから、彼の月子を見る目線に何か企みがあったような気がしたのだ。うまく隠してはいるものの、男の勘として――一樹は表向きは自分に投資すると言いながら、本当は月子を狙っているのだと感じていた。洵からすれば、すでに静真という存在がいるだけでも十分気に入らなかった。類は友を呼ぶ、この一樹もまた静真と同じように、ろくなやつであるはずがない。「いや、お茶はやめとくよ!」竜也は洵の生意気な態度に驚いた。一樹は温厚だが、それでもK市では一目を置かれる存在だ。少しは敬意を払うべきではないか。一樹は洵を無視し、月子の方を向いた。「洵は俺と話をする気がないようだ。では、俺たちで話そうか?」それを聞いた洵は苛立ちが募ったように彼を遮った。「二人に話すことなんてあるのか?」一樹は答えた。「少なくとも、月子に俺がここにいる理由を説明する必要がある」洵は一樹を睨みつけた。そして、まるで怒りのはけ口が見当たらないように苛立っていた。このチャラ男は静真とは全く違うタイプで、手ごわいな。月子も理由を知りたかったので、外に出て話そうとした。しかし、一樹は動かず、竜也を一瞥した。竜也は
Baca selengkapnya