今まで何事もなく過ごせてきたのは、すべて隼人の方から歩み寄ってくれたおかげだ。相手が誰であろうと関係ない。他の秘書でも同じだっただろう。人と人との関係は、どうしても相性が悪ければ、無理に付き合うことはない。月子が隼人の秘書でいるのは、一生ではないのだから、この関係を維持する必要があるかどうかは、よく考えるべきだ。隼人の身分や地位を考えれば、多くの人が彼に取り入ろうとするのは当然だ。世間一般の考えでは、月子にはこの関係を維持する十分な理由がある。ましてや、隼人は彼女によくしてくれる。月子だけでは解決できないなら、誰かに相談してみよう。修也は秘書、賢は副社長。どちらも適任ではない。いろいろ考えた結果、忍の顔が浮かんだ。彼はよく隼人と衝突しているから、何かいい考えがあるかもしれない。月子は彼に電話をかけた。J市にいた忍は、とても驚いた。「月子さんか?一体どうしたんだ?俺に電話なんて。もしかして、寂しくなったのか?それなら、今から飛行機で会いに行くぞ」「そんな大袈裟な。ちょっと相談したいことがあって」月子がどれほど頭が良いかを知っている忍は、好奇心を抑えきれなかった。「俺に相談?一体何事だ?俺の頭じゃ、あなたにかなうわけないし、所詮一般人なわけだけど、まあ、何でも言ってみろ」そうは言うものの、忍も決して彼がいうような一般人ってわけでもないのだ。「……鷹司社長を怒らせてしまって。どうしたら機嫌を直してもらえるかしら」ただ好奇心で聞いていただけの忍は、途端に興奮を抑えきれなくなった。「どういうことだ?一体何があったんだ?詳しく聞かせてみろ!」修也から、隼人は月子に恋愛感情を持っていないと聞かされて以来、忍は自分の気持ちを抑えていた。本当に好きではないのなら、諦めるしかない。そうでなければ、相手に迷惑をかけてしまうだけだ。月子は、瞳の件を簡単に説明した。「あなたがしていたことと同じことをしたのに」「待てよ、俺のせいじゃないぞ。俺は、彼の女関係を噂するにしても、相手を選ぶぞ。例えば、あなたみたいに」「……良く選んだね」「別に難しいことじゃないだろう。理由は一つだ。俺なら彼をからかえるが、あなたは彼をからかうべきじゃない」「分かっている」彼女は秘書だ。忍のような幼馴染ではない。「分かっているつもりだろう」
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