目的地が近づくにつれ、天音の足は震え始め、頭の中は様々な考えでいっぱいになった。「もしかして、サンが急に来れなくなったり……それとも、これは全部嘘なんじゃないか?」サンに会えたとしても、うまく振る舞えるだろうか?そもそも、どうすればいいのかさえ分からなかった。天音が運転しているスポーツカーは、サンが昔乗っていた車と全く同じものだ。彼女にはそれだけ真剣にサンに憧れていたのだ。サンは、この車を見てどんな顔をするだろうか?想像もできない。そう思うと月子が来てくれてよかった。月子がいてくれたら、自分も少しは落ち着けるはず。天音は社交的な場を恐れたことは一度もなかったのに、憧れの人に会いに行くとなると、急に人見知りしてしまったのだ……くそっ。マップを見ると、あと1キロだ。もうすぐだ。心臓がバクバクして、手足がしびれてきた。バックミラーを見ると、桜はそれほど離れていない。天音は桜に電話をかけた。「どうしよう!緊張して手足が震えてる!こんなに緊張したことないよ!」天音は泣き叫んだ。「私も!」「ああ、もう無理!サンに会う準備なんて、全然できてない気がする!サンってどんな人かな?性格は?私のこと好きになってくれるかな?あああ、考えると余計怖くなってきた!」桜も天音と同じ気持ちだったが、落ち着かせようとこう言った。「大丈夫だよ。月子も来るんだから、知り合いがいれば心強いよ」「そうだ!月子がいてくれてよかった!」少し落ち着いた天音は、電話を切り、マップの距離表示を見つめた。500メートル、200メートル、着いた。別荘は緑豊かな郊外にあり、人通りも車も少ない。ここから少し離れた場所にサーキット場がある。天音がこの近くに別荘を建てたのは、いつでも気軽にレースができるからだ。しかも安全だから、両親にも心配させずに済むのだ。車を停めた天音は、外の様子を窺った。月子とサンはまだ来ていない。先に着いたことで、少し気持ちが楽になった。すくなくとも心の準備をする時間ができた。そう思っていると桜の車が、天音の車の隣に停まった。スマホを何度も見ていた天音のもとに、月子から電話がかかってきた。もうすぐ憧れの人に会えるというのに、どんな些細なことにも過剰に反応してしまう。「月子、着いた?」天音はスマホを握りしめた。「
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